迷宮雑感〜或る作家によるダンジョン探訪の記
もしも戦前の帝都東京に巨大な地下迷宮(ダンジョン)が出現したら? そんな世界でその迷宮について記録を残したのが、作家の飯田逢山先生である。 冒険者一行の後に付いていき、迷宮とそこを探索する人々の姿が生き生きと書き記されている。 モンスター、アイテム、ダンジョン内部……。そんな世界を作家先生がどう見たのか。 そんな初心者探索者の手記は臨場感と生々しさ、そして迷宮を知らぬ初々しさに満ちている。 彼とともに、かつてあった『地下迷宮』を味わえる一作である。
- 作品更新日:2017/9/2
- 投稿日:2021/7/12
オタク・短歌
ここに集められた歌は、時事ネタやオタクネタ、 その他教室の隅でボソボソとつぶやいたような言葉の集まりである。 だけどだからこそ、これらの歌しか持ち得ない鋭さ、美しさ、みずみずしさに 心を惹かれてしまうことだろう。 時にその言葉は、宇宙を超えるし、美しい幻想を魅せるし、 ある種の人の心の柔らかいところで潜り込んで突き刺してくる。 そういった言葉が凝縮され、ここに集まっている。
- 作品更新日:2022/12/15
- 投稿日:2021/7/13
夏休みにクラスメートがようやく付き合い始めたと思ったけどまだ付き合ってないらしい
明らかに、付き合っていると思われる男女が、付き合っていないと言う。 隠しているわけではない、彼らは本当に、そう思っているのだ。 それを見守るとき、人はどのような感情と感想を持つだろうか。 それを味わおう。
- 作品更新日:2021/8/26
- 投稿日:2021/8/27
あの夏、サイトウは花火になった。
死者が打ち上げ花火となるどこか奇妙な世界のお話。 それ故に生じる倫理観のズレと、変わらない死に対する畏怖や人との距離感、 そしてそれらを象徴するような花火の綺麗さが印象的な作品。 親しい人、知らない人、知っている程度の人……。 死が『花火』というあまりにも美しいものとなっているからこそ描かれる、 情緒と死への向き合いかたが心に残るものになっている。
- 作品更新日:2021/7/16
- 投稿日:2021/7/18
オカルトウィッチ魔女ビーム
退屈な日常に突然現れた、物体を喋らせることのできる光線銃。 それは確かに、彼女の想像すらも超えて、彼女の日常を変えてしまうものだった。 奇妙なオカルト存在の駆除を行う魔女としての役目。 その中での出会いと、意外な人物との再会。 そして世界の危機。 そのどれもが確かな青春の1ページであり、 彼女の手に入れたその日々は、まさにかけがえのないものだ。 そんな彼女の変わった日常を彩る、物体を喋らせることのできる銃の思いがけない使い方も、 この作品の面白さ、見どころの一つ。 これは、そんな少女たちの戦いと日々を駆け抜ける物語。
- 作品更新日:2019/11/14
- 投稿日:2021/7/20
扇風機と宇宙人
扇風機の前で定番の『ワレワレハウチュウジンダ』と話す少女。 扇風機は扇風機なので、それを真実であると認識する。 でも、扇風機はいつでも彼女を見ていた。 見ることしか出来なくても、ずっと彼女を見てきたのだ。 彼女が宇宙人でもそうでなくても、扇風機の見つめる彼女は変わらない。
- 作品更新日:2021/8/2
- 投稿日:2021/8/3
不知夜(いざよい)の子
魔術師の父と魔術を使えない息子。 そんな二人のいつもの『仕事』が、ある日突然崩れ落ちる。 恐るべき敵、明かされる秘密、剥がされる信じていたもの。 そうなった時に、逆舟勢馬がそれでも信じるものはなにか。 なにが家族を、絆を作るのか。 これは、なにかを『信じる』話。
- 作品更新日:2021/7/25
- 投稿日:2021/8/16
魔法の杖の作り方
この物語はとにかく、主人公である少年ラストの見る世界の形である。 細工師の夢を絶たれた中で見る魔法の隆盛しつつある世界。 魔女と出会い、そこで見た杖。 杖作りの先生となった魔女アイーダとの生活の中で見る森の暮らし。 そしてたまに降りる街の変化。 そんな中で杖を作り完成させ、ラストのできることも増えていく。 その一方で、彼にはもう一つの変化が訪れる。 そしてそれは、先生であるアイーダの隠していた秘密にもつながり……。 牧歌的で、暖かで、そこで少年の見る世界がどう変わっていくのか……。 これはまさに、それを見届ける物語なのである。
- 作品更新日:2018/1/7
- 投稿日:2021/7/20
ボドゲ仲間と妹のバレンタインを眺めている
付き合いそうで付き合ってない、 なんなら互いと自分の好意さえ気付いていない男子と女子。 それら両名とそれぞれに友人やら妹やらといった関係にあるならば、 そりゃ彼と彼女の関係は間違いなく自分の人生において 面倒の種にしかならないわけで……。 なるようにしかならないけれど、 それを好奇心で楽しむ方向に持っていくのがゲーマーの対処と抵抗。 そんな一人の兄の日常の物語。 いいからおまえらとっとと付き合えよ。
- 作品更新日:2022/2/13
- 投稿日:2022/2/15
北阿古霜帝國民族誌《エッタ・イグニブラ・ユト・ザデュイラル・ゼネプブイサリィ》
この物語の舞台は、同族から贄を選び食べる生態を持つ食人鬼たちの国。 それを通して描かれるのは、人が人を喰らう社会への一つの視線である。 その社会を訪れた、主人公の文化人類学者の卵・イオが見るのは、 そうしないと生きられない種族の社会、文化、そして価値観だった。 人を、同族を喰らわねば生きていけない。 彼らはそれにどう折り合いをつけているのか。 そんな世界で、親友が贄に選ばれた少年『カズスムク』の葛藤を知り、 イオはその異文化を見て、想い、そこから自分たちのことを振り返る。 深く練り上げられた設定と描写から、そんな『異なった文化』の世界を垣間見るという フィクションの醍醐味そのものをこの作品では存分に味わえるのだ。 それは苦くもあり、美味でもある。
- 作品更新日:2020/8/16
- 投稿日:2021/7/20