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カクヨムファンタジー連載:5話完結

なみだの暗渠

生まれつき極端に涙もろい主人公・みうが、<海の神>からの手紙を受け取って涙腺の修理をするために出かけます。 ひとはどれだけの涙を、内なる「海」に抱えているのでしょう。 彼女のように涙がよく出る(しかも一緒に目から魚も飛び出る)のは、確かに少し不便かもしれません。 でも、たくさん泣くことは、ほんとうに「欠陥」でしょうか。 まるで落語のようなユーモアをそこかしこにちりばめながら、最後は胸がじんとする、ちいさな宝物のようなお話です。 色とりどりの花々と、すきとおった涙のしずくのイメージが、いつまでも心に残りました。

5.0
  • 作品更新日:2019/12/17
  • 投稿日:2021/7/18
カクヨムファンタジー連載:40話完結

狼の子と猫の子のアルフライラ

躍動感あふれる第1夜第1話から目を奪われました。 カクヨム界隈では(たぶん)珍しい、西洋風ではないアラビアンハイファンタジー。 皇帝に援軍を要請するため帝都を目指す二人の少年、ギョクハンとファルザード。 ギョクハンの武勇とファルザードの知性が両輪となって困難に打ち勝っていくさま、そして旅を続けるにしたがって彼らの視野が開けていくさまは、実に爽快です。 また主人公二人のみならず、美しき女将軍ザイナブ、おしゃべりな絨毯商人(???)ジーライル、そして謎の男アズィーズなどなど、脇役のひとりひとりまで活写されて鮮烈な印象を残します。 私のようにアラビアンな世界観になじみの薄い人にこそおすすめしたいです。 ぜひギョクハンやファルザードと一緒に、広がる世界を体感してください。

5.0
  • 作品更新日:2019/1/3
  • 投稿日:2021/7/18
カクヨム歴史・時代短編完結

結局あのこはうまくやるのよ。

蛮族の侵攻を受けた王国。王は講和のために双子の姫どちらかを嫁がせることに決めた……というお話です。 しっかりした文章にはきびきびしたリズム感があって、 双子の姫や王様、結婚相手となる「蛮族」の青年それぞれが生き生きとして感じられました。キャラを立てるというと、ついそのキャラ自体の描写に凝ることばかり考えてしまうけれど、いい文章からは自然とキャラクターが立ち上がってくるんだなあ。 姫たちの置かれた状況は深刻なのに、どこかコミカルささえ感じられて、最後にはタイトルにうーんと唸らされました。

5.0
  • 作品更新日:2017/2/13
  • 投稿日:2021/7/18
カクヨム歴史・時代連載:14話完結

無声映画を聴きながら

昭和初期、炭鉱街で暮らす少年ふたりのひと夏の交流を、繊細で透明度の高い筆致で描いた作品です。 スクリーンの中の女優「マリア」を、「あれは僕なんだよ」と言う葛城。 それを純粋に信じた岸沼は、マリアと葛城と、どちらに惹かれたのでしょう。 葛城の家庭環境は詳しく語られませんが、おそらく(岸沼とは違って)貧しいのだろうとさりげない描写から察することができます。 彼にとって弁士のいない無声映画は、ほかの誰かになれる特別な時間だったに違いありません。 けれどもその「特別な時間」は、子どもだけに与えられるはかない奇跡です。 時間は子どもを大人にし、時代は過去を暴力的に押し流していく。 その波間に一瞬かがやいた、花火のような物語でした。

5.0
  • 作品更新日:2017/8/23
  • 投稿日:2021/7/18
カクヨム恋愛連載:13話完結

猫を飼う

私が仕事で雑司が谷に行ったとき抱いた印象は「あわいの街」でした。 たとえるなら、赤と白の水彩絵の具を溶かした水が混ざり合うとき、真ん中にできるメヨメヨっとした部分、みたいな街。 路面電車(都電荒川線)が走り、しっぽりした喫茶店や古本屋があって、まるで都心とは思えないのどかさですが、池袋に近いので北の空を見上げるとドカーンとサンシャイン60が建っていますし、東京メトロ副都心線の雑司が谷駅はとてもキレイで都会的です。 猥雑な繁華街と閑静な住宅地、彼岸と此岸、生と死、それらが混じり合う境目に、雑司ヶ谷という街があるように思ったのです。 そうそう、無数の死者が眠る雑司ヶ谷霊園は、それだけで彼岸に近いように感じます。そういえばサンシャイン60だって、巣鴨プリズンの跡地なのでした。雑司ヶ谷霊園に眠る東条英機らが処刑された場所でもあります。 そして「猫を飼う」は、雑司が谷というあわいの街に実にぴったりくるお話だなあと思いました。 (ちなみに同行していた先輩が「雑司ヶ谷霊園には猫が多い」と教えてくれました。 木陰が多く墓石も冷たいので気持ちがいいのだろう、とのこと。私は会えませんでしたが!) はたして生と死には、境目があるものでしょうか。 ハルオは死について、「死ぬのってそんな感じなんだろうか。急に、まちがった曲がり角をまがってしまって、落とし穴に吸いこまれてしまうような」と言っています。彼はある瞬間にくっきり生と死が分かれるものだと思っていたようです。 かく言う私も先ほど「境目」という言葉を使った通り、生と死の間には境界線がないことを忘れていました。境界線があってほしかったのかもしれません。死ぬのは怖いですし、普段の人生の中にそっと紛れ込んでいてほしくはないものです。 けれども「猫を飼う」では、犯人さがしのパートと不思議な体験をするパートが徐々に混ざり合い、生と死も渾然一体となっていきます。というよりも、生と死とは本来そういうものなのでしょう。先ほどの水彩絵の具の喩えを使い回すなら、私たちの「生」は真っ赤ではなく、「死」の白が混ざったピンク色なのだということに気づかされるのです。 その感覚は少なからず恐ろしいのですが、それゆえに生を実感させてくれるものの美しさやぬくもりが、際立って輝くようなラストがすばらしい作品でした。 ちなみに、先ほどのハルオの問いにはある人物が答えてくれるのですが、その言葉がとても素敵だなと思ったので、ぜひ本編でお確かめください。

5.0
  • 作品更新日:2017/4/30
  • 投稿日:2021/7/18
カクヨムその他連載:16話

うまいメシさえあればいい

「うまいメシさえあればいい」 「先輩後輩、男ふたり暮らしのごはんといろいろ」 「それ以上でもそれ以下でもない」 と、非常に端的な謳い文句に嘘偽りなし。 官能的(※食欲)なごはん描写に、思わず腹の虫が騒いでしまいました。 でも、決してごはん描写だけの作品ではありません。 男ふたり――松橋と沢村は先輩後輩の仲。ふたりがルームシェアをするわけは、おいしいごはんをいっぱい食べるため。仲良くごはんを分け合うふたりの姿は、読んでいてとてもしあわせな気持ちになります。 令和を迎えたとはいえ、日本ではまだまだ成人男性ふたりの同居はめずらしいもの。 男ふたりで同居なんて、男が料理なんて――ひと昔前の価値観を持つ人間の目には訝しく映ることもあるけれど、そういう相手さえストーリー上「男ふたり」の劣位に置くのではなく、適切な距離感を保ちつつも思慮深いまなざしを向けているのが、「うまいメシ」を「うまいメシ」たらしめている真の隠し味です。 読み終わったとき、「うまいメシさえあればいい」という言葉は、彼らも、彼ら以外のあり方も、すべてひっくるめて肯定してくれる素敵なパワーワードになっているでしょう。

5.0
  • 作品更新日:2022/7/30
  • 投稿日:2022/8/20