桜花を摘み取るなつのあめ
1年遅れでの青春を謳歌するつもりだったが、 追っていた事件は逃がしてくれない。 賢い主人公・冬馬白雪が小さな事件に首を突っ込むほど、 ひと回り大きな事件が舞い込んできます。 整ったレベルデザインは読み心地の根拠になります。 とても長いので尻込みしそうですが、 だからこそ深く入れ込んでしまう。 最後の決着をつけるシーンは、 それまでに溜めていたすべてが繋がって情緒の大爆発まちがいなし。 強い黒幕は往々にして周囲を傷だらけにするものですが、 作品外にいるはずの私もその1人です。 たぶん死ぬまで引きずるくらいに強い。 泣きながら唸りました。 成長期に味わったような、心地よい苦しみです。
- 作品更新日:2021/6/6
- 投稿日:2021/7/9
海のシンバル
インタビューを皮切りに思い出される、 フロントマンと常連客の秘密のやりとり。 メモ帳の字から奥に込もるものを読み取る、 その過程を丹念に描写しています。 目次でわかる通り、津波が関わります。 避けるべき人がいる一方で、 そうでない人はきっと、 主人公と一緒に手紙から読むでしょう。
- 作品更新日:2023/9/28
- 投稿日:2021/7/10
The Gazer 《 ゲイザー》
平凡な少年がひょんなことから剣を持つ、 王道ど真ん中の作品です。 それ故に内容がいかに整っているかよくわかる。 舞台や人物の描写はもちろん、 章始めの怪物図鑑では今回の注目先をあらかじめ教えてくれます。 師となるウルカおねえさんがすき。 振る舞いから戦いの流儀までかっこよい。
- 作品更新日:2024/5/12
- 投稿日:2021/7/9
万年筆と宝石
登場人物が追加されるたびに、 どんな人なのかじっくり教えてくれる。 仕草による情報は記憶に残りやすいので、 読者の中にいつのまにか席が用意されます。 次の目的もはっきり教えてくれる。 場所と関連した情報は記憶に残りやすいので、 鮮明な風景がよく見えます。 現代日本では味わえず、 しかし個々人の選択次第では十分に起こりうる状況なので、 誰もが身近な自分事として読んでいけます。 こんな結果に持ち込んではいけませんよ。 主人公が必要になってしまうからね。
- 作品更新日:2021/7/17
- 投稿日:2021/7/14
月龍伝説〜想望は時を越えて〜
秘密はすでにタイトルで見えていて、 そこに至るまで関わる人々の内面を深く深く掘り下げています。 各話ごとに情緒の上限が拡がり、 いよいよ来るクライマックスを目一杯に味わわせてくれる。 総じて上品に整った作風です。 見習います。
- 作品更新日:2021/5/4
- 投稿日:2021/7/27