モグラの穴
最終更新:2020/8/3
作品紹介
佐伯紘一は14歳の秋、それまで暮らしたフランスから帰国し、日本の公立中学校へ編入した。 その学校生活は彼が予想していたものとは全く違っていた。見えない壁、いじめという祖国からの洗礼。だんだん自分を失っていく毎日の中で、あるとき彼は「ぬいぐるみのクマ」のような男と出会う。二人の時間にようやく救いを見つけ出し、初めての恋を知る紘一。しかしそれはつかの間の楽園だった──
評価・レビュー
4.5
wakagi
帰国子女のリアル
全ての帰国子女がこうだというわけではありませんが、思春期を迎えた彼らの多くが本帰国後に直面する壁、そして葛藤がまざまざと描かれています。もちろんそれだけではありませんが、同じ立場の子を持つ親として、心に響くものがありました。海外での生活が長い子ほど、帰国子女の受け入れ態勢が十分な学校に入学させるべきだと私も痛感したので。 確かに海外滞在経験の無い多くの日本人にとっては、彼らの悩み(の本質)を理解することは難しいのかもしれません。実際、親である私も甘く見ていたところがありました。だからこそ、「帰国子女には彼らなりの悩みがある」ということを知ってほしいからこそ、多くの方に読んでいただきたいと思う作品です。
4.0
叶良辰