ねむるきみとねむる
最終更新:2017/8/19
作品紹介
「僕らが生きている世界は終わりに向かっているんだ」 花畑の中心で彼女は首を傾げる。橙色の花飾りが小さく揺れた。 「比喩とかじゃない。そのままの意味さ」 彼女は口を動かした。声は聞こえないけど理由を尋ねていることは分かる。 「この廃ビルから一歩外に出れば嫌でも分かることだ。君にそれが可能なのか、僕には分からないけど」 花畑の中心で彼女は再び首を傾げる。 「その理由?」 彼女は首を横に振る。じゃあなんだろう。 「なんでこんな話をするのか?」 首肯。 「確かに、どうしてだろう。外のことなんか思い出したくもないのに」 少し考えるとすぐに答えは出た。当然だ。自分のことなのだから。 「多分だけど、僕はこう聞きたかったんだと思う」 なんとも情けない質問だと我ながら思うけど、 「『もし僕がこの廃ビルで死んだなら、この世界にずっといられるだろうか』」
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