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作:五水井ラグ

珈琲店アナログアンブレラ。

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最終更新:2021/1/29

作品紹介

 大企業の社長を父親に持ち、国立学園に首席で入学、誰が見ても恵まれた少女はその日飛び降りるためのビルを探していた。  導かれるように偶然見つけたのは、悩みを抱えた人々がふらりと集まってくる不思議な珈琲店。  ――魔法を使うのがあたりまえになった世界で、「あえて魔法を使わない」レトロな珈琲店の、詩みたいなファンタジーです。        ◆ ※本作は自殺や自傷行為を推奨するものではありません。 【参考文献】 ・田口護、旦部幸博『コーヒーおいしさの方程式』NHK出版 ・丸山健太郎『珈琲完全バイブル』ナツメ社 ・山田栄『知る・味わう・楽しむ紅茶バイブル』ナツメ社

ファンタジー自殺喫茶店詩的幻想的ファンタジーだけど純文学的

評価・レビュー

進めず終われず迷うその日々に

なるほど祈りたくなってしまう作品だと思った。 私の役割は何だろう。以前五水井さんの別作品に感想を書いて喜んでいただいて、薦めていただいた作品だから、また自分のありったけを尽くしてああいうものを書くべきだろうか。世界観がいいと言葉遣いに魅了されると、この作品の素晴らしいところを連ねて、まだ見ぬ読者に是非この作品を読むよう宣伝する、そんな――。 書きたくない。 なんだか、線を重ねれば重ねるほど目の前のものから遠ざかって行く気がするので。この作品に近からんと打鍵すればするほど決定的に距離を感じそうなので。 だから、通りすがりの一人の読者が何を思ったかということを、とりとめもなく書き連ねるのだけど。 知り過ぎたと思った。私が五水井さんと知り合ったのは先月のことで、やり取りの回数も容易に数えられるし、私が五水井さんについて知っていることは限りなくゼロに等しく、けれどこの小説を単にストーリーとして読むには知り過ぎたと思った。 「あの」現実を、「その」現実を、この人はこうやって小説にするのだと、そう思いながらずっと読んだ。文字の向こうでこの小説を書く人のことをずっと考えていた。何も知りはしないくせに。 この小説が「分かり」ますと、他の人とはできない話をあなたとできますと、言えればよかったのだろうか。そう言いたかったけれども。 ”ほんとうの絶望を知らないくせに” ――そうですね。才能は求められましたが、あまり殴られずに育ちました。 きっと私たちはほんとうには分かりあえないし、私のことばは「本質的には届かない」のだ。「それでも」。 祈りたくなってしまう作品だ。ムーウが書く小説の登場人物のことを、ムーウのことを、五水井さんのことを。でも、いつか救われる日が来ることを祈っていますなんて書きたくはない。 救われる日なんて心の底からは信じられないし、進めず終われず迷う日々の中にも胸を突かれるほど美しいものはあって、その中をどうしようもなく生きているのだから。 だから、ただ見ている。どうなるのか。 最後に、死にたさもかなしみもあるけれど、淀まない、雨が降ったばかりの透明な水たまりのような文章が素敵ですと、それだけ書く。

5.0

辰井圭斗