クラフトマスター建国記

　発展した科学が作り出したのは、『第二の世界』だった。 　人間の脳と電脳世界を繋ぐ技術の確立により、フルダイブ型のVRゲームが盛り上がりを見せるなか、【WORLD CREATOR】という作品が誕生した。 《この世界では五感の全てを感じる事が出来る》 《世界の可能性は無限大であり、世界法則以外は原則自由である》 　単純かつ魅力的な謳い文句は瞬く間に世界中へと広がり、サービス開始から五年余りで、総プレイ人口が十億人を突破。【WORLD CREATOR】は、名実ともに『第二の世界』となった。 　高度な文明から古代文明まで様々な文明が『領域』として存在し、プレイヤーは『生まれ持ったスキル』と共に自由に世界を楽しむことが出来る。　 　知恵と技術で様々な物を作り出して、自分だけの『世界創造』を成し遂げる事が可能な世界──それが【WORLD CREATOR】だ。 　そんな【WORLD CREATOR】の世界には、創造・剣・魔法・召喚・悪魔を司る、五つの最上位クラスが用意されている。 　その中で、創造を司る【クラフトマスター】の冠位を取得し、個人では世界序列三位、建国した国はゲーム内国家序列一位にまで導いた『八乙女 愁』という少年がいた。 　大企業の御曹司である愁は、幼い頃に脳以外の身体機能が衰えていく不治の病に冒され、延命のために全ての時間を電脳世界で過ごすことを余儀なくされた過去を持つ。 　愁にとっての現実である【WORLD CREATOR】の中で、仲間たちと共に数々の偉業を成し遂げ、約七年間充実した日々を送っていたが、延命処置にも限界が訪れる。 　大切な人たちに看取られながら愁は死を迎えたが、再び目を開けると、そこには見知らぬ世界が広がっていて、そこで愁は亜人族の少女リアと出会う。 　亜人族に対する種族差別が横行する見知らぬ世界で、『虐げられる亜人達を救いたい』との思いから、かつて最強の国を建国したクラフトマスターが立ち上がる。 　この歪んだ異世界に、新たな国、新たな秩序、新たな世界をクラフトするために。