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作:ワタベミキヤ

在りし日のかけら

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未評価

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最終更新:2021/12/10

作品紹介

しのき美緒さん企画「アドベントカレンダー2021」出展作品 東京の青山にある表参道のイルミネーションが、夜空に光る星屑のようにキラキラと輝き出した。 沙紀は青山にある美容室『Red Clip』のヘアスタイリストとして勤めていた。 そして、12月10日に30代の女性と女の子が美容室にやってきた。 「ヘアドネーションをお願いできますか?」 沙紀が束の1つを持ってハサミで切ろうとした時、待ち合いのソファで絵を描いていた女の子が急に走って来た。 女の子はつぶらな瞳で母親の長い髪を見つめ、ほとんど聴き取れないくらいの小さな声で呟いた。 「ママの長い髪の毛を、切っちゃうの?」 寂しそうな目で見つめている女の子を見ながら、沙紀は自分の遠い記憶を思い出していた…。

短編青春・ヒューマンドラマヒューマンドラマ

評価・レビュー

髪を切るという行為に三つの人生が交差する

本作品は人間はいつからでもやり直せるというメッセージが込められた、短いけれど心に訴えかけてくるヒューマンドラマだ。  高校生のとき、人生に無関心で享楽的な生活を送って補導されてばかりいた沙紀が、エクステに使われている原料の調達先と、その提供者について知ったときの衝撃。 あのけばけばしい色のエクステがまさか人の髪だったとは。 しかし提供者は教育を受けられるということで満足しているのだ。 沙紀は、中流に生まれ不自由がないのに自堕落な生活を続けている自分に気づき、やり直しを決意する。  ところで恥ずかしながらエクステに使われる髪はナイロンなどの化学繊維だとばかり思っていた。もちろんつけたいと思ったことはないのだが、つけている人たちはおそらくこの事実と提供者の事実を知らないだろう。 そして美容師三年目となった沙紀のお客様はよく手入れされた髪をドネーションのために切るという。 貧困のなかで髪をうって教育を得ようとする女の子。 中流のなかで自堕落に生きている女の子。 裕福な暮らしで、自分の髪を与える女性。 この三つが美容室の鏡の中で交差するのが見えたような気がした。  もちろん髪を売ることができなくなれば、女の子たちは教科書を買えなくなるし、髪を寄付する行為によって治療のつらさの一端が軽減されるのだから、軽々に何が悪い、これが悪い、金持ちは奢っているという単純な話ではない。  しかし一度、今、あたりまえに享受している生活と幸福について思いを巡らせてみることは必要だ。

5.0

しのき美緒@BEKKO BOOKS