本作品は人間はいつからでもやり直せるというメッセージが込められた、短いけれど心に訴えかけてくるヒューマンドラマだ。
高校生のとき、人生に無関心で享楽的な生活を送って補導されてばかりいた沙紀が、エクステに使われている原料の調達先と、その提供者について知ったときの衝撃。
あのけばけばしい色のエクステがまさか人の髪だったとは。
しかし提供者は教育を受けられるということで満足しているのだ。
沙紀は、中流に生まれ不自由がないのに自堕落な生活を続けている自分に気づき、やり直しを決意する。
ところで恥ずかしながらエクステに使われる髪はナイロンなどの化学繊維だとばかり思っていた。もちろんつけたいと思ったことはないのだが、つけている人たちはおそらくこの事実と提供者の事実を知らないだろう。
そして美容師三年目となった沙紀のお客様はよく手入れされた髪をドネーションのために切るという。
貧困のなかで髪をうって教育を得ようとする女の子。
中流のなかで自堕落に生きている女の子。
裕福な暮らしで、自分の髪を与える女性。
この三つが美容室の鏡の中で交差するのが見えたような気がした。
もちろん髪を売ることができなくなれば、女の子たちは教科書を買えなくなるし、髪を寄付する行為によって治療のつらさの一端が軽減されるのだから、軽々に何が悪い、これが悪い、金持ちは奢っているという単純な話ではない。
しかし一度、今、あたりまえに享受している生活と幸福について思いを巡らせてみることは必要だ。
登録:2021/12/25 01:54
更新:2021/12/25 01:52