ドラマティクスとは無縁な恋の話
最終更新:2021/6/10
作品紹介
「おとーさんとおかーさんは、どうして結婚したの?」 娘・愛里紗からの問いかけに、父・和義は目をぱちくりさせる。もうそんなことが気になるような年頃なのかあ、と娘の成長になんとも言えない顔をしながら、そうだねえ、と言う。 「好きだから、結婚したんだよ」「ふーん?」 すこぶる興味のなさそうな娘。興味がない、というよりはあれだ。もっとドラマティックな理由があると思っていた、と言うのが近いかもしれない。最近、娘は少女漫画にどっぷりハマっているものだから。 「ねえ、結婚するまで、どのくらいかかったの?」「そうだなあ、一年くらいかなあ」「そうなんだ。ねえねえ、いっぱい大変なことあったの?」 少女漫画にあるようなことを期待している娘に苦笑しながら、和義はそんなことないよ、と言う。えー!と文句をいう娘を落ち着かせながら、そうだね、と和義は切り出す。 「結婚するまで、毎月何があったか教えてあげよう」「わあ!気になる!」「そうだねえ……まずは付き合うところからだね」 出会いは大事だもんね。そう和義が笑うと、そうだよ!と娘はしっかりと同意した。 山も谷もドラマティックも、全部フィクションに任せればいい──和義の妻・葉月がいうように、二人の恋路にドラマティックなものはない。そう、これは、少女漫画のようなドラマティックな話はなく、恋愛ドラマのような大逆転劇もない、どこにでもいるありふれた大学生だった二人が織り成した恋愛の思い出なのだ。 毎日16時半更新予定です。
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