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作:キッド

怪奇珍道中 タクシー運転手のヨシダさん

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最終更新:2021/6/6

作品紹介

 僕の友達にヨシダさんという人が居ます  歳は四十代半ばで長身痩躯。酒豪。ちなみに中々の二枚目でもある  職業タクシー運転手。2006年の或る日、僕が新宿駅西口でたまたま停めたタクシーの運転手さんがヨシダさんでした  目的地で降りるまでの間、ぽつぽつと話をしました。すると若い頃に僕と同じ街に住んでいた事がわかりました。会話をする中で妙にウマが合ったので連絡先を交換し、それ以来の付き合いになります  ヨシダさんと僕の共通点は同じ街で過ごしたという事と、同じ自動車が好きだという事  そして話を進めていく中で明らかになったのが二人とも今まで数多くの不可思議な現象に遭遇し、様々な恐怖を経験した事でした。ことヨシダさんの経験してきた心霊体験や怪奇現象に修羅場の数々は驚きの連続で、彼から沢山の怪談を聞きました  そしていつの間にか、その場に僕も連れて行かれるようになりました。初めは数か月に一度、多い時はひと月に二度三度、僕は彼といっしょに日本のあちこちにある曰くつきの廃墟の数々に足を踏み入れました  行けば高確率で死ぬほどの恐怖を味わい、行かないと言えば小馬鹿にされる──  僕は悔しくて意地になってヨシダさんにくっついていきました。ヨシダさんと一緒でなければ、あんな真似は出来なかったでしょう    暗く恐ろしい場所に踏み込むとき、僕がこれまで経験したこともないような恐怖に呑み込まれてしまったとき  いつも助けてくれたのもヨシダさんでした  そして最後にはその恐怖に呑まれ、引きずられていったのも  いま僕は何年もヨシダさんに会えないでいます  最後に会った時、彼はあの世とこの世の狭間に居ました。そして僕だけがこの世に帰ってきてしまいました  僕はずっとヨシダさんからの連絡を待っています  ある日思い立って、かつてヨシダさんから聞いた話や彼と共に過ごした日々の思い出を書き出してみました。現実に起こり得るはずのない、信じられないような事が沢山ありました  出会った当初からは想像もつかないような物語に、いつの間にか僕は放り込まれてしまいました  これは僕が謎多き親友、ヨシダさんと共に主に恐怖を味わい、時に過去を振り返りながら束の間を共に過ごした記憶の中から幾つかをピックアップしたものです  この世の片隅で確かに起こっていた男たちのちっぽけな物語を、どうか読んでやってください

R15残酷な描写ありホラー怪談サイコホラー

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