ユーザー登録・ログイン

新規登録

ログイン

作品

レビュー

登録/ログイン

その他

オノログについてFAQ利用規約プライバシーポリシー問い合わせユーザー管理者Twitter
レビューを投稿
書籍化
コミカライズ原作
ジャンル別
サイト別
サイト関連
運営している人

@オノログ

作:海野しぃる

生命の輝き

星4つ

0%(0)

星3つ

0%(0)

星2つ

0%(0)

星1つ

0%(0)

未評価

0%(0)

最終更新:2020/8/25

作品紹介

◯対象概要 “生命の輝き”(以下、管理対象)は内閣府諮問機関である博覧会の管理下にあるイラストです。 管理対象は眼球のついた赤い玉である対象Aと眼球の存在しない赤い玉である対象Bに分かれます。 この対象Aと対象Bが結合し、円環を形成したものが人間の視界に入った場合、人間はそのイラストを生物として捉え、不快感を覚えるという症状が報告されています。 【CELLたちは、文字や数字を描きだし、キャラクターとしてコミュニケーションする。自由に。有機的に。発展的に。】 ※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

ハッピーエンド現代ファンタジークトゥルフ神話クトゥルー神話関西万博認識汚染

評価・レビュー

ともすれば忘れがちな生命というものの無常さ

 とある研究施設における、曰く名状し難い謎の知的生命体に関する実験記録。  ジャンルは現代ファンタジーですが、SFやホラーのような手触りもあったりする作品です。なんならハートウォーミングな学園ラブコメっぽい要素も——いや、「ある」というのはさすがに言い過ぎですけど、「なくはない」なら嘘にはならないと思います(※個人の感想です)。  こう書くとなんだかよくわからん感じに見えるかもしれませんが、でも恐ろしくまとまりが良く完成度の高い、掌編のお手本みたいな作品でした。展開や設定に無駄弾が一発もなく、すべてが綺麗に繋がってひとつの物語を構成している感じ。  こういったところで作品外の要素について触れるのはあまり趣味ではないのですけれど、しかしこの作品に関してはどうしても避けては通れないというか、だってわずか数時間で書き上げられているんですよ? 元ネタ、というよりは実質「きっかけ」とか「お題」くらいのものだと思うのですけれど(本作の著作性はさほど元ネタには依っていないように思えます)、タグにもある〝万博のそれ〟が公表されたのが確か午後三時か四時くらいのこと。この作品の公開がだいたい夜の十時前で、つまり長くても六、七時間しか執筆時間がない。もっとも、ただ書くだけなら筆の早い人には不可能ではないかもしれませんが、しかしそんな〝だけ〟とはどう見ても程遠い出来栄えというか、なんなんでしょうこのすんごい完成度。設定を練るだけで結構かかりそうなものを、でもあんな一瞬でどうやって……まさか魔法……?  いや本当にただの時事ネタ、速さが勝負の一発ネタ的なものならよかったというか、正直そういうものだと勝手に思い込んで読み始めたのですけど。でも読み始めてすぐ「ごめんなさい完全に侮ってました」と土下座したというか、普通に面白いのが本当に腑に落ちません。この速さでこの内容。そこはトレードオフじゃないとおかしいっていうか、なんか世の理とかに反してしまうのでは……魔法……?  設定の見事さやそれを活かした構成、なにより演出のうまさはもう言うまでもないのでこのさい割愛するとして。触れたいのはやっぱりお話の筋そのもの、というか登場人物の抱えたドラマがとても好きです。特に主人公の人物造形、バイオ系研究者の事情の妙な生々しさに加えて、彼がなんらかの大きな病を患っていること。生命の輝きを主題とする作品の、その主人公が生命工学系の研究者であり、なにより生命についてとても逼迫した立場に置かれているという事実。  単純に「生命の輝き」という言葉だけではどうしても綺麗事めいたお題目みたいに響いてしまうのが、しかし生死の際にある人にとってはまた別の響きを伴って聞こえるのかもしれない、と、そんな当たり前の事実にいまさら気づかされたような気分です。ショックというかなんというか、それは自分が普段どれだけ生命というものに対して適当に向き合ってきたかということの証左で、でもそれってある意味とても幸せな身分なんだろうなあと、反省することしきりでした。普段、死を忘れて生きていけるのはある種の特権ですね。  あとはもう、こう、全部です。本当に好きなところがいっぱいというか、無駄弾がないから好きなところしかない。物語的に主人公の行き着いた先とか、書き出しと締めの憎い演出とか、あとなんだかとっても可愛いヒロインとか。いや可愛いというかなんというか、とてもキラキラしていてそばにいるだけで眩しくて、だからこそ納得のハッピーエンドでした。面白かったです。ヒカリちゃん大好き!

5.0

和田島イサキ