宇宙クジラや幽霊船の例え、闇の種族とか、銀河の創造主といった、ファンタジー的(あまりがっつりでなく、あくまでも雰囲気的)ガジェットを含ませてるSF。そういうの好きな人にオススメな作品。
ただSF的な物語というだけでなく、SF小説らしい表現も多いように思う。だから、正統派というか、伝統的というような印象もあります。
とりあえず序盤の流れだが、主人公たちである地球人の少年少女6人は、転送装置の予期せぬ動作で、本来なら関われるはずのなかった、地球から遠い銀河領域の異星人たちと出会う。この辺りテンポよく進み、スケールの飛躍があり、読者のワクワクをうまく誘ってくれると思う。いわばSF的異世界転生。
また、コンタクトする宇宙人を、かなり宇宙「人」として描いている。ここには拘りすら感じます。人間ばかり。ただ見た目がそうだというだけでなく、社会とか、持ち合わせている概念とかもかなり共通しているような。
とにかく、脳のシナプスネットワークを利用した情報装置。銃火器。宗教。図書室、プラネタリウム、トレーニングジム。ギャンブルのカードゲーム。
地球人ではない異星人、しかしあくまで我々と近しい存在と感じさせる描写が多い(というか、人間と表現されているそのまま、まさしく人間と思わせる描写が多い)。
そして、今のSFとしては逆に珍しいくらいかもしれない、そこまでの異星「人」感が演出ガジェットになっている世界観だからこそ、「あなた達を最初に見た時に、この惑星にかつて生きていたラムウ人とどこか似ている気が……とても精神性の高い種族でした」、「宇宙人がトカゲだとかタコとかエイリアンって、ただの人間の妄想だったんだな」などのセリフは、凄く興味深い。
そこもやはりSFらしく、物理現象や、そのようなものを利用したテクノロジーに関しても、なかなか考えさせてくれそうな描写が多い
例えば量子力学的な、あるいは別次元時空を利用しているような、転送技術の利用の際、気分が悪くなるとか。
「無限を感じる一瞬、身体は粒子状に崩壊し、精神は宇宙空間へと放出される。自己認識が打ち消されそうな膨張を目の当たりに……」
人によっては、哲学的な関心も結構高められると思います
登録:2021/7/23 15:36
更新:2021/7/23 17:15