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一万字の中に長編一冊分の満足感

5.0
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両親を亡くし親戚の家に引き取られしんどい日々を送る少女と、いつもその傍にいる犬のお話。

個人的にはもう王道も王道、ライトノベル的な異世界ファンタジーとしては、まさにど真ん中といった風格の作品です。

この〝王道〟というのは主として話の筋のことなのですが、でもそれをここまで殊更に強調してしまうのは、その王道を最初から最後まで、長編一冊分をフルセットでやり切っているからです。それも、たった一万字の分量で。なにこれすごい。どうなってるの。

お話自体は間違いなく一万文字、つまりは短編の長さなのに、欲しい要素が全部ある。舞台設定に人物造形、ストーリーとお話の構造。きっとどれかは犠牲にしなきゃいけないはずのものが、でも何ひとつ欠けていない。その上で、駆け足感や無理に展開を急いだような感じもない。何がなんだかわかりません。

全然わからないのでもう個人的な趣味に走ったアホの感想を書きますと、キャラクターが好きです。犬と白の魔法使い。特に魔法使いさんが本気の殺意を丸出しにしているのと、そのおかげでこのふたりがバチバチやり合うところ。よかったです。なにも考えずただアホの顔で「いい」ってなった場面でした。好きです。

和田島イサキ

登録:2021/10/5 23:10

更新:2021/10/5 23:09

こちらは和田島イサキさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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610 light-years Love

来世における巡り合いのお話(※語弊のある表現)

 約九十年の人生の締めくくり、間抜けな人生だと自嘲しながらも、でも満ち足りて往生するひとりの男性のお話。  しっとりと落ち着いた描写が胸に沁みる、切なくも優しい手触りの人間ドラマ、のようなSFです。ドSF。どうやってもネタバレになるというか、いやそもそもタグの時点で明かされてるも同然な部分なので〝そこ〟についてはもう気にせず触れてしまうのですが(困る人はいますぐ本編へ!)、シミュレーション仮説をモチーフにしたお話です。その辺りを端的かつ印象深く象徴しているのが、本作のキャッチである『あなたの愛する人は本当に実在するのでしょうか?』の一文。これ好きです。本編の内容を読み終えてからだと、より強く意味合いが強調されるような感覚(後述します)。  導入であるところの「九十年の人生」、それはすべて仮想現実だった、というところから始まる物語。宇宙船での星間航行中、どうしても持て余すことになる長い時間を潰すための、娯楽としての人生のシミュレーション。要は長い夢から覚めたようなもので、さっきまでの人生はすべて作り物でしかなかった、というのがこのお話の肝というか前提になるわけですけれど。  ここで面白いのがこの主人公、というか作中の人類全般のことなのですけれど、寿命が半永久的に続くんです。現生人類の人生一回分の時間くらいは、ほとんどあっという間の出来事。さすがに未来(千年後)の世界だけあって全然違うと、それ自体は特段なんてことはないのですけれど。  宇宙船のコンピュータによってシミュレートされた方の人生、それが千年前(作品外における現代)の世界であるということと、そして『シミュレーション仮説』というタグ。これらの意味するところというかなんというか、まあ要するにメタ的に見ることで作品の主軸とはまた別の妙味を上乗せしてくるという、この構造とそのさりげなさにニヤリとしました。あくまでも副次的に書かれている、そのお洒落というか上品な感じ。  さて、その上でその主軸、物語のメインとなるドラマなのですが。まんまとやられたというか綺麗に決まったというか、きっちり組まれた構造の綺麗さにうっとりします。単純にロマンティックないい話でもあるのですけれど、これ構造だけ見てちょっと見方を変えるなら、ある意味転生ものみたいなところもあるんですよね。いわゆる前世からの生まれ変わり、離れ離れになった運命の相手に再び巡り合うお話のような。王道であり古典でもあるその類型を、でもただSF的な設定の上に持ってきただけでなく、まったく違う手触りに変えてみせる。物語を自分の(作者自身の)ものにする、というのは、たぶんこういうことなのかなと思いました。  あと大好きなところ、というか絶対触れずにはいられないのは、やっぱり結びのあの一文。このサゲの爽快感がもう最高に好きです。伏線等も綺麗に回収しつつ、すべてがこの瞬間のために描かれた物語。とても綺麗で、しっかり壮大なSFでありながらも、その向こうから人の生を伝えてくれる素敵な作品でした。

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和田島イサキ