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正統派・王道・ド直球の怪獣映画

5.0
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ある日突然怪獣が出てきて、現代の東京をめちゃくちゃに破壊・蹂躙するお話。

怪獣映画です。怪獣映画としか表現しようがないくらいにはどっぷり怪獣映画しているお話。

とんでもないこだわりぶりというかなんというか、きっちり小説として完成された作品を通じて、その読んだ感覚の向こうに怪獣映画の面白みを再現してしまう。この技巧というか工夫というかは、まず並大抵のものではないと思います。

赤堀亨という主人公。ごく普通の、いわば〝逃げ惑う群衆〟のひとりでしかない存在を視点保持者に据えて、彼の目を通じて書かれる物語。作品自体は完全に小説そのもの、当然小説として楽しく読んでいるのに、でも同時に怪獣映画に感じる興奮をも伝えてくれる。

この恐るべき娯楽性の分解能、そしてその後の再構築の精度に、ただひたすら感嘆させられました。

冒頭の文章が最高に好きです。「怪獣が当たり前に存在していること」が前提の世界観、それを一切の説明なくわからせてしまう手際。他、内容に関わる部分としては、〝子供〟の使われ方が非常に印象的でした。演出が巧みというか、物事の見せ方や切り取りかたが非常に手慣れていると感じる作品でした。

和田島イサキ

登録:2021/10/5 23:15

更新:2021/10/5 23:15

こちらは和田島イサキさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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610 light-years Love

来世における巡り合いのお話(※語弊のある表現)

 約九十年の人生の締めくくり、間抜けな人生だと自嘲しながらも、でも満ち足りて往生するひとりの男性のお話。  しっとりと落ち着いた描写が胸に沁みる、切なくも優しい手触りの人間ドラマ、のようなSFです。ドSF。どうやってもネタバレになるというか、いやそもそもタグの時点で明かされてるも同然な部分なので〝そこ〟についてはもう気にせず触れてしまうのですが(困る人はいますぐ本編へ!)、シミュレーション仮説をモチーフにしたお話です。その辺りを端的かつ印象深く象徴しているのが、本作のキャッチである『あなたの愛する人は本当に実在するのでしょうか?』の一文。これ好きです。本編の内容を読み終えてからだと、より強く意味合いが強調されるような感覚(後述します)。  導入であるところの「九十年の人生」、それはすべて仮想現実だった、というところから始まる物語。宇宙船での星間航行中、どうしても持て余すことになる長い時間を潰すための、娯楽としての人生のシミュレーション。要は長い夢から覚めたようなもので、さっきまでの人生はすべて作り物でしかなかった、というのがこのお話の肝というか前提になるわけですけれど。  ここで面白いのがこの主人公、というか作中の人類全般のことなのですけれど、寿命が半永久的に続くんです。現生人類の人生一回分の時間くらいは、ほとんどあっという間の出来事。さすがに未来(千年後)の世界だけあって全然違うと、それ自体は特段なんてことはないのですけれど。  宇宙船のコンピュータによってシミュレートされた方の人生、それが千年前(作品外における現代)の世界であるということと、そして『シミュレーション仮説』というタグ。これらの意味するところというかなんというか、まあ要するにメタ的に見ることで作品の主軸とはまた別の妙味を上乗せしてくるという、この構造とそのさりげなさにニヤリとしました。あくまでも副次的に書かれている、そのお洒落というか上品な感じ。  さて、その上でその主軸、物語のメインとなるドラマなのですが。まんまとやられたというか綺麗に決まったというか、きっちり組まれた構造の綺麗さにうっとりします。単純にロマンティックないい話でもあるのですけれど、これ構造だけ見てちょっと見方を変えるなら、ある意味転生ものみたいなところもあるんですよね。いわゆる前世からの生まれ変わり、離れ離れになった運命の相手に再び巡り合うお話のような。王道であり古典でもあるその類型を、でもただSF的な設定の上に持ってきただけでなく、まったく違う手触りに変えてみせる。物語を自分の(作者自身の)ものにする、というのは、たぶんこういうことなのかなと思いました。  あと大好きなところ、というか絶対触れずにはいられないのは、やっぱり結びのあの一文。このサゲの爽快感がもう最高に好きです。伏線等も綺麗に回収しつつ、すべてがこの瞬間のために描かれた物語。とても綺麗で、しっかり壮大なSFでありながらも、その向こうから人の生を伝えてくれる素敵な作品でした。

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和田島イサキ