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@オノログ
海の物語。海の中の星と、星間をゆく潜水艦と、海底の映画館と、姉と人魚のお話。
眩暈がしそうになるほどの壮大な幻想。フラクタル図形のように繰り返す海中の光景は、ただただ圧倒的というより他にありません。
とにかく、果てしない。底が知れない。無限の広がりを思わせるような、有無を言わせぬ迫力がありました。
星詠みや時孕みといった造語と、映画館や潜水艦などのそうでない名詞の、そのバランスと選択が好きです。うまく言葉に表せない、鮮烈な個性の美しさが光る作品でした。
登録:2021/10/5 23:39
更新:2021/10/5 23:39
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こちらは和田島イサキさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。
三百余年の月日を生きてきた不老不死の少女と、彼女と共に暮らす大人の女性の物語。 あるいは、そのふたりがごはんを作る(食べる)お話。そしてその後の、お散歩のお話。 茜と紀栄子、それぞれの抱える苦悩のようなものが、徹底して〝直接書かれない〟ところが好きです。最低限の、それも曖昧な供述だけ。具体的にはわからないはずのそれが、でもなんとなく感じ取れてしまう。ふたりの結びつきとして見えてくる。 生きてきた年月も、日々の生活も、性格も、背丈も。重なるところのないふたりの、でも互いに互いを補い合うような関係性。それを端的な言葉にはっきり翻訳してしまうことなく、でもしっかり読み取らせてくれるところが好きです。 寂しく、どこか閉塞的な夜の闇。そんな光景を想起させるのに、でもふたりの間だけが少し暖かい。暗闇の中の小さな灯火のような、優しい雰囲気の物語でした。
約九十年の人生の締めくくり、間抜けな人生だと自嘲しながらも、でも満ち足りて往生するひとりの男性のお話。 しっとりと落ち着いた描写が胸に沁みる、切なくも優しい手触りの人間ドラマ、のようなSFです。ドSF。どうやってもネタバレになるというか、いやそもそもタグの時点で明かされてるも同然な部分なので〝そこ〟についてはもう気にせず触れてしまうのですが(困る人はいますぐ本編へ!)、シミュレーション仮説をモチーフにしたお話です。その辺りを端的かつ印象深く象徴しているのが、本作のキャッチである『あなたの愛する人は本当に実在するのでしょうか?』の一文。これ好きです。本編の内容を読み終えてからだと、より強く意味合いが強調されるような感覚(後述します)。 導入であるところの「九十年の人生」、それはすべて仮想現実だった、というところから始まる物語。宇宙船での星間航行中、どうしても持て余すことになる長い時間を潰すための、娯楽としての人生のシミュレーション。要は長い夢から覚めたようなもので、さっきまでの人生はすべて作り物でしかなかった、というのがこのお話の肝というか前提になるわけですけれど。 ここで面白いのがこの主人公、というか作中の人類全般のことなのですけれど、寿命が半永久的に続くんです。現生人類の人生一回分の時間くらいは、ほとんどあっという間の出来事。さすがに未来(千年後)の世界だけあって全然違うと、それ自体は特段なんてことはないのですけれど。 宇宙船のコンピュータによってシミュレートされた方の人生、それが千年前(作品外における現代)の世界であるということと、そして『シミュレーション仮説』というタグ。これらの意味するところというかなんというか、まあ要するにメタ的に見ることで作品の主軸とはまた別の妙味を上乗せしてくるという、この構造とそのさりげなさにニヤリとしました。あくまでも副次的に書かれている、そのお洒落というか上品な感じ。 さて、その上でその主軸、物語のメインとなるドラマなのですが。まんまとやられたというか綺麗に決まったというか、きっちり組まれた構造の綺麗さにうっとりします。単純にロマンティックないい話でもあるのですけれど、これ構造だけ見てちょっと見方を変えるなら、ある意味転生ものみたいなところもあるんですよね。いわゆる前世からの生まれ変わり、離れ離れになった運命の相手に再び巡り合うお話のような。王道であり古典でもあるその類型を、でもただSF的な設定の上に持ってきただけでなく、まったく違う手触りに変えてみせる。物語を自分の(作者自身の)ものにする、というのは、たぶんこういうことなのかなと思いました。 あと大好きなところ、というか絶対触れずにはいられないのは、やっぱり結びのあの一文。このサゲの爽快感がもう最高に好きです。伏線等も綺麗に回収しつつ、すべてがこの瞬間のために描かれた物語。とても綺麗で、しっかり壮大なSFでありながらも、その向こうから人の生を伝えてくれる素敵な作品でした。