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静と動のコントラストによる衝撃波で体が真っ二つにされた

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 同級生の女子、神田ベリーのことが気になる男子生徒のお話。

 ジャンルはSFとありますが、ごりっごりのハードSF的なものではなく、どちらかというとある種の不条理コメディのような柔らかな口当たりの掌編です。むしろ学校生活とか思春期とかの要素の方が強いような印象。

 前編後編の二部構成になっているのですが、いざ読んでみればなるほど納得。内容が全然違うというか、なんかもうものすごい落差で吹き飛ばされたような感覚です。前半の掛け合い劇、男子生徒二名のコントにも似たゆるいやりとりから、後半は一転して怒涛の急展開へ。そのまま一気に駆け抜ける強烈なドライブ感に、なんだか酩酊したような気分にさせられました。

 最後まで読んで呆然として、あまりの風速に「結局何だったんだ今の大嵐は」みたいな感覚に陥るのですけど、しかしとどのつまりというかこの物語は結局のところ、主人公が最序盤に放ったひとことに要約されるのだと思います。「その可能性はある」。読後に振り返った時のこのひとことの、最初はあまり気づかなかった(でも実はしっかり効いていた=学校生活のイメージが強いのは絶対これのせい)この厚み。あの子が気になる、という小さな感情が、実は物語世界の土台そのものを規定しまえるほどに強いという事実。

 絵的なイメージの明瞭さというか、文章から想起される光景がくっきりしているところが好きです。気になる女の子に、その秘密。そして世界の命運を左右するレベルの冒険。ちょろっと出るだけの友人なんかも含めて(竹田くん好きです)、絵面がまさに『思春期の男の子の夢そのもの』なところがもう最高に気持ちのいい作品でした。

和田島イサキ

登録:2021/11/4 17:43

更新:2021/11/4 17:43

こちらは和田島イサキさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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610 light-years Love

来世における巡り合いのお話(※語弊のある表現)

 約九十年の人生の締めくくり、間抜けな人生だと自嘲しながらも、でも満ち足りて往生するひとりの男性のお話。  しっとりと落ち着いた描写が胸に沁みる、切なくも優しい手触りの人間ドラマ、のようなSFです。ドSF。どうやってもネタバレになるというか、いやそもそもタグの時点で明かされてるも同然な部分なので〝そこ〟についてはもう気にせず触れてしまうのですが(困る人はいますぐ本編へ!)、シミュレーション仮説をモチーフにしたお話です。その辺りを端的かつ印象深く象徴しているのが、本作のキャッチである『あなたの愛する人は本当に実在するのでしょうか?』の一文。これ好きです。本編の内容を読み終えてからだと、より強く意味合いが強調されるような感覚(後述します)。  導入であるところの「九十年の人生」、それはすべて仮想現実だった、というところから始まる物語。宇宙船での星間航行中、どうしても持て余すことになる長い時間を潰すための、娯楽としての人生のシミュレーション。要は長い夢から覚めたようなもので、さっきまでの人生はすべて作り物でしかなかった、というのがこのお話の肝というか前提になるわけですけれど。  ここで面白いのがこの主人公、というか作中の人類全般のことなのですけれど、寿命が半永久的に続くんです。現生人類の人生一回分の時間くらいは、ほとんどあっという間の出来事。さすがに未来(千年後)の世界だけあって全然違うと、それ自体は特段なんてことはないのですけれど。  宇宙船のコンピュータによってシミュレートされた方の人生、それが千年前(作品外における現代)の世界であるということと、そして『シミュレーション仮説』というタグ。これらの意味するところというかなんというか、まあ要するにメタ的に見ることで作品の主軸とはまた別の妙味を上乗せしてくるという、この構造とそのさりげなさにニヤリとしました。あくまでも副次的に書かれている、そのお洒落というか上品な感じ。  さて、その上でその主軸、物語のメインとなるドラマなのですが。まんまとやられたというか綺麗に決まったというか、きっちり組まれた構造の綺麗さにうっとりします。単純にロマンティックないい話でもあるのですけれど、これ構造だけ見てちょっと見方を変えるなら、ある意味転生ものみたいなところもあるんですよね。いわゆる前世からの生まれ変わり、離れ離れになった運命の相手に再び巡り合うお話のような。王道であり古典でもあるその類型を、でもただSF的な設定の上に持ってきただけでなく、まったく違う手触りに変えてみせる。物語を自分の(作者自身の)ものにする、というのは、たぶんこういうことなのかなと思いました。  あと大好きなところ、というか絶対触れずにはいられないのは、やっぱり結びのあの一文。このサゲの爽快感がもう最高に好きです。伏線等も綺麗に回収しつつ、すべてがこの瞬間のために描かれた物語。とても綺麗で、しっかり壮大なSFでありながらも、その向こうから人の生を伝えてくれる素敵な作品でした。

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和田島イサキ