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きっちりヒーローしてくれる天才少年

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 謎の怪盗『怪人二万面相』の巻き起こす事件に、探偵として立ち向かう天才少年のお話。

 ミステリでありSFです。児童文学というか児童向け推理小説のような、なんだったら少年漫画のような趣すら感じる、明快かつ王道の冒険活劇でした。

 作品全体の雰囲気というか単一パッケージとしての在り方というか、狙ったところにきっちり収める徹底した仕事ぶりのようなものを感じます。主軸のミステリ部分は難しすぎないながらもしっかり推理パートを設け、SF要素に関しても分かりやすくワクワク感の高い未来ギアがどんどこ登場し、なにより話の真ん中で活躍するのはみな少年少女、大人たちはしっかり脇役然としているかちゃんと敵としての役割を果たすという、このガチっぷりというか仕事の行き届きぶり。昨今、どうにも一手捻った使われ方をされがちな「ヒーロー」的な存在を、でもここまでまっすぐしっかり書き通したお話というのは、それだけで本当に気持ちがいいです。

 またミステリとSFというだけでもそうなのですけれど、結構いろんな要素を作中に取り込んでいるわりには、内容がすっきりしているのもすごいです。これだけいろいろあったら勝手にぶつかり合って渋滞しそうなものですが、ピシッと綺麗な一本道になっている。といって決して平坦なわけでなく、例えば推理パートでの立場の逆転のような一捻りもあったりして(ここ好きです)、非常に贅沢というか読後の満足感がすごいです。

 一話完結の読み切り少年漫画のようなまとまりの良さ。でもそのまま連載作品にもできそうな、しっかり作られた安定感のある設定たち。細やかな仕事ぶりを感じる、爽やかでワクワク感のある作品でした。

和田島イサキ

登録:2021/11/4 18:04

更新:2021/11/4 18:04

こちらは和田島イサキさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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610 light-years Love

来世における巡り合いのお話(※語弊のある表現)

 約九十年の人生の締めくくり、間抜けな人生だと自嘲しながらも、でも満ち足りて往生するひとりの男性のお話。  しっとりと落ち着いた描写が胸に沁みる、切なくも優しい手触りの人間ドラマ、のようなSFです。ドSF。どうやってもネタバレになるというか、いやそもそもタグの時点で明かされてるも同然な部分なので〝そこ〟についてはもう気にせず触れてしまうのですが(困る人はいますぐ本編へ!)、シミュレーション仮説をモチーフにしたお話です。その辺りを端的かつ印象深く象徴しているのが、本作のキャッチである『あなたの愛する人は本当に実在するのでしょうか?』の一文。これ好きです。本編の内容を読み終えてからだと、より強く意味合いが強調されるような感覚(後述します)。  導入であるところの「九十年の人生」、それはすべて仮想現実だった、というところから始まる物語。宇宙船での星間航行中、どうしても持て余すことになる長い時間を潰すための、娯楽としての人生のシミュレーション。要は長い夢から覚めたようなもので、さっきまでの人生はすべて作り物でしかなかった、というのがこのお話の肝というか前提になるわけですけれど。  ここで面白いのがこの主人公、というか作中の人類全般のことなのですけれど、寿命が半永久的に続くんです。現生人類の人生一回分の時間くらいは、ほとんどあっという間の出来事。さすがに未来(千年後)の世界だけあって全然違うと、それ自体は特段なんてことはないのですけれど。  宇宙船のコンピュータによってシミュレートされた方の人生、それが千年前(作品外における現代)の世界であるということと、そして『シミュレーション仮説』というタグ。これらの意味するところというかなんというか、まあ要するにメタ的に見ることで作品の主軸とはまた別の妙味を上乗せしてくるという、この構造とそのさりげなさにニヤリとしました。あくまでも副次的に書かれている、そのお洒落というか上品な感じ。  さて、その上でその主軸、物語のメインとなるドラマなのですが。まんまとやられたというか綺麗に決まったというか、きっちり組まれた構造の綺麗さにうっとりします。単純にロマンティックないい話でもあるのですけれど、これ構造だけ見てちょっと見方を変えるなら、ある意味転生ものみたいなところもあるんですよね。いわゆる前世からの生まれ変わり、離れ離れになった運命の相手に再び巡り合うお話のような。王道であり古典でもあるその類型を、でもただSF的な設定の上に持ってきただけでなく、まったく違う手触りに変えてみせる。物語を自分の(作者自身の)ものにする、というのは、たぶんこういうことなのかなと思いました。  あと大好きなところ、というか絶対触れずにはいられないのは、やっぱり結びのあの一文。このサゲの爽快感がもう最高に好きです。伏線等も綺麗に回収しつつ、すべてがこの瞬間のために描かれた物語。とても綺麗で、しっかり壮大なSFでありながらも、その向こうから人の生を伝えてくれる素敵な作品でした。

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和田島イサキ