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感情の鉄砲水一発で吹き飛ぶあまりにも脆く頼りない理性

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 人間と同様の感情や記憶を処理するだけの知能を備えたアンドロイドの、お仕事中の考え事もしくは雇い主との対話のお話。

 濃かったです。こういうのはピタッとハマると本当に効くというか、作者の手のひらでころんろころん転がされたような感じが最高でした。いや誤読も多分に含まれてるかもわかりませんが、でも自分が楽しんだので気にしません。こういうお話はガッツリ胃もたれ起こすくらいが一番好みです。

 ジクジクこちらの内側を溶かしてくるかのような、毒みたいな絶妙な邪悪さが本当に意地悪で大好き。主人公の強引な断定っぷりや言い訳くさいところにいちいち共感してしまって、いやこれは因果が逆というか〝共感してしまったからこそそれがそのように見える〟というもの、つまりは完全に自分の映し鏡として読んでいるわけで、とどのつまりは踏み絵です。だいたい同族嫌悪みたいなもの、自分の嫌なところを勝手に他人に重ねる行為。彼女に対して覚えた引っかかる点が、そのまま減衰ゼロで百%自分のところに返ってきて、つまりノーガードの殴り合いをしているつもりがただ鏡に向かってパンチを繰り出していた、この踊らされてる感(勝手に踊ってる感)の気持ちよさといったら。

 そんな自分本位な読書をやめられない自分と、主人公の袂が分かたれた第一話終盤。客観的な状況としても事件性の高い展開。よかった自分ならさすがにここまではしないもんね、と、そう思えたらどんなに楽だったか。むしろ逆で、結局何ひとつ行動に移せない口先ばかりの自分を浮き彫りにされたみたいな、そんな寂しさと悔しさがとてもたまらん感じの作品でした。濃かった!

和田島イサキ

登録:2021/11/4 18:10

更新:2021/11/4 18:10

こちらは和田島イサキさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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610 light-years Love

来世における巡り合いのお話(※語弊のある表現)

 約九十年の人生の締めくくり、間抜けな人生だと自嘲しながらも、でも満ち足りて往生するひとりの男性のお話。  しっとりと落ち着いた描写が胸に沁みる、切なくも優しい手触りの人間ドラマ、のようなSFです。ドSF。どうやってもネタバレになるというか、いやそもそもタグの時点で明かされてるも同然な部分なので〝そこ〟についてはもう気にせず触れてしまうのですが(困る人はいますぐ本編へ!)、シミュレーション仮説をモチーフにしたお話です。その辺りを端的かつ印象深く象徴しているのが、本作のキャッチである『あなたの愛する人は本当に実在するのでしょうか?』の一文。これ好きです。本編の内容を読み終えてからだと、より強く意味合いが強調されるような感覚(後述します)。  導入であるところの「九十年の人生」、それはすべて仮想現実だった、というところから始まる物語。宇宙船での星間航行中、どうしても持て余すことになる長い時間を潰すための、娯楽としての人生のシミュレーション。要は長い夢から覚めたようなもので、さっきまでの人生はすべて作り物でしかなかった、というのがこのお話の肝というか前提になるわけですけれど。  ここで面白いのがこの主人公、というか作中の人類全般のことなのですけれど、寿命が半永久的に続くんです。現生人類の人生一回分の時間くらいは、ほとんどあっという間の出来事。さすがに未来(千年後)の世界だけあって全然違うと、それ自体は特段なんてことはないのですけれど。  宇宙船のコンピュータによってシミュレートされた方の人生、それが千年前(作品外における現代)の世界であるということと、そして『シミュレーション仮説』というタグ。これらの意味するところというかなんというか、まあ要するにメタ的に見ることで作品の主軸とはまた別の妙味を上乗せしてくるという、この構造とそのさりげなさにニヤリとしました。あくまでも副次的に書かれている、そのお洒落というか上品な感じ。  さて、その上でその主軸、物語のメインとなるドラマなのですが。まんまとやられたというか綺麗に決まったというか、きっちり組まれた構造の綺麗さにうっとりします。単純にロマンティックないい話でもあるのですけれど、これ構造だけ見てちょっと見方を変えるなら、ある意味転生ものみたいなところもあるんですよね。いわゆる前世からの生まれ変わり、離れ離れになった運命の相手に再び巡り合うお話のような。王道であり古典でもあるその類型を、でもただSF的な設定の上に持ってきただけでなく、まったく違う手触りに変えてみせる。物語を自分の(作者自身の)ものにする、というのは、たぶんこういうことなのかなと思いました。  あと大好きなところ、というか絶対触れずにはいられないのは、やっぱり結びのあの一文。このサゲの爽快感がもう最高に好きです。伏線等も綺麗に回収しつつ、すべてがこの瞬間のために描かれた物語。とても綺麗で、しっかり壮大なSFでありながらも、その向こうから人の生を伝えてくれる素敵な作品でした。

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和田島イサキ