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ザ・やりたい放題

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 ノベルパワーで成績を競い合う特殊な学園を舞台に、野心に燃える少年・藤原くんが突然恋に落ちてしまい葛藤したり青春したりする物語。

 現代ファンタジー、それもタグによると「努力・友情・勝利」がテーマの王道ジュブナイルのようですが、同時に王道のラブコメでもあります。ヒロインがかわいい。というかそのヒロインに対する主人公の想いのピュアっぷりがかわいい。ちなみに両者ともに男性ですので必然的にBLに該当すると思うのですけれど、でもそんなことはもはや些細な問題というか、とにかくやりたい放題なお話です。とんでもねえもん見ちまっただ……。

 なにしろ登場人物は全員実在の人物、しかも設定までもが現実のそれをモデルとしたものだったりして、つまりはメタ構造——というか身も蓋もなく言うならいわゆる〝内輪ネタ〟としての側面があります。事情をある程度知る身としては楽しく笑いながら読ませてもらったのですが、でも前提となる知識のない状態で読んだなら一体どのように見えるか、まったく想像もつかないというか相当に混沌とするんじゃないかと思います。設定部分はまだしも、まず主人公の名前からしてもう……なんですの「藤原埼玉敬称略」って(※敬称略までが名前)。

 というわけで、いろいろぶっ飛んだ不条理な世界観ではあるのですが、それでも普通に面白そうな舞台設定だったりするところがなかなか侮れません。風変わりな学園に独特な成績評価システム、熱いバトルを予感させる「ノベル」周りの設定。実のところ詳細は不明というか、結構ふんわりした設定のはずなんですが、それでも〝わかる〟のがまあすごい。めちゃめちゃそれっぽいし普通に見たい。この「それっぽさ」がいわゆるただのテンプレートではなくて、しっかり面白そうなのが見事っていうかいやむしろ「なんで!?」ってなるんですよね。いいの?! なんかもったいなくない?

 設定からしてそんな状態ですから、もうキャラクターに至っては言うに及ばず。作品自体が短い以上、登場できる尺だって限られているはずなのに、でもしっかりキャラが立っている。バトルものもラブコメもどっちも行けそうな主人公に、惚れられる役に違和感のないヒロイン、そして明らかに一癖ある感じのライバルキャラなどなど。こちらもある種の「それっぽさ」を感じる造形でありながら、でも彼らの言動にはちゃんと厚みがあって、それは物語の組み立て方が非常に丁寧というか、勘どころを押さえた書き方をされているのだと思います。つまり普通に面白いから困ります。だって絶対「元ネタ知ってるからこそ」の面白みもあるのに(ていうかほとんどがそのはず)、単純にうまいおかげで切り分けられない……。

 個人的な趣味の話をしますと、ライバルキャラがとても好きです。いかにも悪い男って感じの関西弁が色っぽくてもうダメでした。この人がよってたかってめちゃめちゃにされて必死に抵抗しながらも結局悲鳴を上げて堕ちていくスピンオフ(R18)みたいなのを今から勝手に想像して優勝してこようと思います。ウオオーーーごちそうさまでしたァーッ!

和田島イサキ

登録:2021/12/13 19:52

更新:2021/12/13 19:52

こちらは和田島イサキさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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610 light-years Love

来世における巡り合いのお話(※語弊のある表現)

 約九十年の人生の締めくくり、間抜けな人生だと自嘲しながらも、でも満ち足りて往生するひとりの男性のお話。  しっとりと落ち着いた描写が胸に沁みる、切なくも優しい手触りの人間ドラマ、のようなSFです。ドSF。どうやってもネタバレになるというか、いやそもそもタグの時点で明かされてるも同然な部分なので〝そこ〟についてはもう気にせず触れてしまうのですが(困る人はいますぐ本編へ!)、シミュレーション仮説をモチーフにしたお話です。その辺りを端的かつ印象深く象徴しているのが、本作のキャッチである『あなたの愛する人は本当に実在するのでしょうか?』の一文。これ好きです。本編の内容を読み終えてからだと、より強く意味合いが強調されるような感覚(後述します)。  導入であるところの「九十年の人生」、それはすべて仮想現実だった、というところから始まる物語。宇宙船での星間航行中、どうしても持て余すことになる長い時間を潰すための、娯楽としての人生のシミュレーション。要は長い夢から覚めたようなもので、さっきまでの人生はすべて作り物でしかなかった、というのがこのお話の肝というか前提になるわけですけれど。  ここで面白いのがこの主人公、というか作中の人類全般のことなのですけれど、寿命が半永久的に続くんです。現生人類の人生一回分の時間くらいは、ほとんどあっという間の出来事。さすがに未来(千年後)の世界だけあって全然違うと、それ自体は特段なんてことはないのですけれど。  宇宙船のコンピュータによってシミュレートされた方の人生、それが千年前(作品外における現代)の世界であるということと、そして『シミュレーション仮説』というタグ。これらの意味するところというかなんというか、まあ要するにメタ的に見ることで作品の主軸とはまた別の妙味を上乗せしてくるという、この構造とそのさりげなさにニヤリとしました。あくまでも副次的に書かれている、そのお洒落というか上品な感じ。  さて、その上でその主軸、物語のメインとなるドラマなのですが。まんまとやられたというか綺麗に決まったというか、きっちり組まれた構造の綺麗さにうっとりします。単純にロマンティックないい話でもあるのですけれど、これ構造だけ見てちょっと見方を変えるなら、ある意味転生ものみたいなところもあるんですよね。いわゆる前世からの生まれ変わり、離れ離れになった運命の相手に再び巡り合うお話のような。王道であり古典でもあるその類型を、でもただSF的な設定の上に持ってきただけでなく、まったく違う手触りに変えてみせる。物語を自分の(作者自身の)ものにする、というのは、たぶんこういうことなのかなと思いました。  あと大好きなところ、というか絶対触れずにはいられないのは、やっぱり結びのあの一文。このサゲの爽快感がもう最高に好きです。伏線等も綺麗に回収しつつ、すべてがこの瞬間のために描かれた物語。とても綺麗で、しっかり壮大なSFでありながらも、その向こうから人の生を伝えてくれる素敵な作品でした。

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和田島イサキ