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高い技術によって描き出されるのは現実か、それとも白昼夢なのか

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人は誰しも別れを経験する。避けられない別れかもしれないし、避けることができた別れかもしれない。

別れの直後には楽しかった思い出や、したかった希望がしばらくは頭の中で渦を巻く。それが恋しい人であればなおさらだ。

僕は幼馴染の遥とずっとつかず離れずの関係を保っている。もちろん関係を変えたいと思っているのだがなかなか行動に移すことができない。今の関係を失いたくはないが先にすすみたい、と僕は葛藤する。切り詰めた短い文を繋げていくことで、僕のめまぐるしく変わる思いがカットバックをみるように伝わってくる。さすがの表現力だ。

そんな甘やかで切ない日々はある日突然切断される。

僕は部屋に閉じこもってしまう。

考えてみてほしい。15年ほども幼馴染をして親しく行き来していたのだ。僕の部屋には遥の思い出がたくさん残っているだろう。もらったプレゼント、そこここに見える遥の残像。僕の後悔と悲しみは癒えることがない。


12月21日「草野マサムネ誕生会」の日、うとうとしていた僕は、遥の声で目覚める。

いったい僕はどの世界にいるのか。

作者は何も書かない。心憎い配慮である。このラストで読者も僕も救われるのである。


ところで、作者さまの高い技術力を味わってほしいので、すごい蛇足感満載ではあるが、一応説明しておく。

僕の心中思惟が続く前半から中盤はレビュー中にも書いたように、非常に短い無駄のない文を積み重ねていくことで千々に乱れる葛藤が表現され、事故後友人からの電話を受けるあたりからは小説風に余韻余情ある文体が使われている。

そしてラストは明るいややライトな口語表現である。

二度、三度読み直してみてほしい。

しのき美緒@BEKKO BOOKS

登録:2021/12/22 18:27

更新:2021/12/22 18:25

こちらはしのき美緒@BEKKO BOOKSさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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しのき美緒@BEKKO BOOKS