人間とは社会的な動物だといわれている。
他者との関係のなかでわたしたちは生きている。
なのに主人公木月は世間との関係性を断ち切って暮らしているという。
いったいどんな心持ちなのだろうかと想像してみる。
孤独であることは間違いない。薄れていくはずの記憶は反芻され、あより明確にコントラスト高く保存されていくのではないだろうか。
そんな暮らしを続けている木月のバイト中にひとつの小包が流れてくる。
作品紹介にいただいたメッセージ中に
「……復帰するというのはどういうことかということを考えて作りました」
とある。
ひとつの小さな小包が、木月と切れていた世間とをつなぎなおす。
復帰する、とはひとつひとつの関係を結びなおすということだ、と作者は考えたに違いない。
最後の劇場のエピソードはすべての創作者への力強い応援だ。
ひとつの小包がどんどん人と人をつないでいく美しい構成と、無駄のない文章をぜひ味わってほしい。
登録:2021/12/23 01:06
更新:2021/12/23 01:04