良い作品には、共通してとある特徴が存在しています。
この作品を読み始めてすぐ感じたのは、それらが複数揃っているというものでした。
主人公にして、ぼっち天文部員の澪。
澪の親友にして、大地に思いを寄せている陽菜。
彼女らの友人にして、理科部部長の少年、大地。
そして、天文部の顧問にして、澪が思いを寄せている相手、羽合。
しかし、羽合の元恋人は、白血病で亡くなった澪の姉、綾だったのです。姉の面影が、二人の間に横たわる障害となって、たびたび澪を苦しめます。
姉の亡霊を断ち切るためか、姉の意志を継ぐためか。卒業式に気球を打ち上げることを澪は決意するのですが――?
・早々に整う舞台。
・序盤で提示される物語の着地点(気球の打ち上げ)
このように、「良い作品に存在している特徴」をふたつ(いえ、それ以上?)持っている本作は、期待に違わぬ完成度でした。
複雑に絡み合い、すれ違う恋愛模様も魅力のひとつですが、本当の見せ場は中盤以降にやってくるどんでん返しでしょうか。伏線の全てが繋がって、ひとつの真実へと収束していく様と、周到なミスリードにやられて思わず驚嘆してしまいました。
六年前。同校の卒業生であった姉は、何を思い気球を打ち上げたのか。真実を知った澪は駆け出します。
目指す先は、宇宙の渚。
空と宇宙が交じり合うその場所に気球が到達したとき、どんな光景が見えるのでしょう?
みんなの優しさが詰まった感動のフィナーレは、ぜひあなたの目で確かめてください。
「宇宙の渚で、待ってるよ」
登録:2022/1/6 23:28
更新:2022/1/6 23:28