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@オノログ

まるでレトロな恋愛映画を見ているかのような作品です

5.0
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舞台はシチリア島パレルモ、クアットロ・カンティ。

そこは運命の交差する十字路。


ディーナは晴れ渡ったクリアブルーの空を、その色に似つかわしくない憂鬱な瞳で見上げ、急逝した母を追想する。


「まさに、映画のような恋をしたのよ!」


それは女優であった母が主演を務める映画の雨の中のワンシーン。

常に眩い光のもとに立つ晴れ女の彼女が十字路に立ち、ヒロインを演じた瞬間に、晴れ渡っていた空に雲がかかり、突然の雨が降り出す。

彼女曰く、それは「奇跡」


敬愛する母を想い、母の遺した旅程表に視線を落とすと、頬を伝い、ぽつりと一雫。そしてザァッと通り雨。


舞台は一転、銀幕の中へ。


モノクロームに染まるクアットロ・カンティ。

突然の雨に忙しなく駆ける人々の中、ディーナは一人立ち尽くす。

雨に濡れ、母に文句を一つ呟く彼女に、プルシャンブルーの傘が差し出される。

それはまるで、あの映画の脚本をなぞるように……



一つ一つの言葉の選び、表現の細部に至るまで心を配られた、色彩と情感にあふれる筆致で描かれていて、本当にパレルモの街角、クアットロ・カンティに立ってそのワンシーンを見ているような感覚を抱く素晴らしい作品です。

藤屋順一

登録:2021/7/13 21:01

更新:2021/7/23 17:15

こちらは藤屋順一さんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。