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書道とは死ぬことと見つけたり(仮)

「葉隠」論考

本作のお題目としても掲げられている「葉隠」の引用について少し。 『武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり』 この言葉を残したのは佐賀鍋島藩士・山本常朝なる人物で、祐筆であったとされることからも本作との数奇な縁を感じずにはいられない。 彼が「葉隠」を執筆したのは(実際には山本の口述を、同藩士・田代陣基が書き記した)江戸時代中期の頃。世は太平の時代となり、徳川幕藩体制も八代吉宗の政権へと移り変わり、武士の生活も目まぐるしく変わっていった頃である。 戦争がなくなり武士のアイデンティティは大きく失われ、士農工商の身分制度で最上位にありながら生活には困窮し、町人(商人)に金を借りてやっと暮らしていたような当時の世相に、憤りを感じていた山本常朝が、武士が華やかだった時代を再び取り戻さんとしてつづった心得がかの「葉隠」である。 しかしこの山本常朝という人は、元来、身体が弱く、武の人ではなかった。 また当時の佐賀鍋島藩は、全国でも先進的な改革として「切腹禁止令」を発布。 武士が命をかけて主君に仕える時代はすでに終わっていたのだ。 このことが山本常朝という人に「武人として死すこと」の強烈な憧れを抱かせてしまった要因であると言われてる。 これに呼応してしまったのがかの三島由紀夫である。 先の大戦で、桜の如く、見事散ろうと心に決めていた三島だったが、身体が弱いため軍隊には入れず結局生き残ってしまったという「殉死」へのコンプレックスがあったのだ。 このふたりと本作の花川毅山はどこか似ている。 「死」への妄執と、己が掲げる理想像に世間を巻き込んでしまうところだ。 「葉隠」はときに馬鹿にされ、ときに利用されてきた思想である。 花川毅山には、どういった運命が待ち受けているというのだろうか――。

5.0
0
へべれけ/真野てん

アリス・イン・ザ・金閣炎上

ウィットにとんだ文章で、思春期のリアルに引きずり込まれる

一人称の台詞回しが、文学的、且つ、エッジィなウィットに富んでいて、暴力的なまでに文章に引きずり込まれてしまいます。 語彙ひとつ、引用ひとつとっても、尖ったおかしさに溢れていて、それが矢継ぎ早にどんどん出てくるので、のめり込む以外に選択肢がありません。 ごく個人的な感覚ですが、ナウシカの引用はすごかったです……。 その、書き手の方の知識の広さ故のユーモアには、どんどん、どんどん「少女」と「女性あるいは男性」の途上にある語り手の内包する生々しいリアルが滲み出してきて、そこにある凄味に圧倒されます。 特に、序盤で何気なく語られた上京する以前のことが回収される場面では、強烈に感じ入るものがありました。 思春期の少女たちの世界は、生々しく、耽美的な危うさに充ちています。 そしてその中に縛り付けられるような閉塞感が、読み手側にまで感じられるくらいに身に迫る文章で描かれて、まったく自分とは違う語り手の焦燥が、けれど肌に感じられました。 そして、終盤の「炎上」のシーン。 笑いがこみあげてくると共に、そこには気持ちのいい解放感、カタルシスが溢れていて、まさに物語の終幕にふさわしいなと思えます。 突飛な行動にも関わらず、それを気持ちよく、楽しく、そしてリアルに感じてしまうのは、そこまでで語り手の内面にのめり込んでしまったが故でしょう。 ラストの一文まで気も利いています。 たいへん面白く、楽しく、同時に皮膚にジリジリとしたものを感じられて、読んで良かったと思える作品でした。

5.0
1
ぞーいー

適当女は性悪姫を笑わせたい

上辺を整えることばかりの高校生活の中、唯一、素の自分でいられた相手

周囲にあまり興味を抱かない語り手。 けれど、高校生の頃、一人の女子生徒に関心を持ち、自ら声をかけるようになります。 彼女は、ある理由によって周りから避けられていました。 語り手の言葉には、この感覚分かる、と思える箇所が非常に多く、この年頃の女子の感性、周りとの関係性がとても良く表現されていたように思います。 興味が無い、けれど多少は興味があるように振舞っておかないといけない。 多かれ少なかれ集団生活の中で感じ得る倦怠感と打算的な人との関わり方がリアルで、だからこそ、そういう張り詰め方から解放される「黒姫」との間にある気楽さがよく分かります。 個人的な感想ですが、私自身がそういう「面倒くささ」を常に感じてしまう質なので、語り手の感じ方には非常に共感しました。 二人の間の、ベタベタしてはいないのに唯一無二である繋がり。 そこへ、面倒くさい周りの人間の面倒くさい目が注がれてしまう面倒くさい展開。 語り手の嫌気がよく伝わってきました。 見どころは、やはり最終話でしょう。 シンプルなメッセージには、けれど飾り立てられた言葉どれよりも真摯な思いが込められていて、語り手の心へまっすぐ届いたことが分かります。 届いたそれを打ち返すような返事も、また、ずっと言いたくて言いたくて仕方がなかった思いだったのだろうなと感じられます。 衒ったところのない、外連もない、言葉のやり取りは、上辺だけでの付き合いが溢れている環境の中で、とても気持ち良く響きました。 作品を読んでから改めてタイトルを見ると、なんというか、本当に笑わせたいんだな、と思えて、それもまた味わい深いものでした。

5.0
0
ぞーいー

壷天窖穹

井の中の蛙大海を知らず......果たして本当に蛙は海を知りたいのか?

 眠れない夜、ふとスマホに映った新作情報を見て読みはじめましたが、短いながらも共感させられる傑作でした。  外の世界を知らない雛、その世界は壺の端から端までという小さなものでした。そのような矮小な世界しか知らない雛を恥に思う人もいるかも知れません。しかし、私は雛の持つ外への恐怖、環境の変化することへの耐え難い不安感に強く共感してしまいました。  壺の外から差し込む光を、まるで天啓のように受け止めて外へ羽ばたくことを夢に見る雛も世の中にはいるのかも知れません。  ですが、その光が差し込む隙間が宇宙船の皹のように見え、そこから今までの世界が裂け、真っ暗闇の宇宙へと吸い込まれてしまうような恐怖を抱く雛もいるのです。  深夜2時ごろ、不安で眠れぬという更なる不安を抱きながら布団に横たわっていた私は、まさしく壺の外を怯える雛でした。  勢いに任せて書いたものなので、誤字脱字、理解しきれていないところがあったならば申し訳ございません。それでも自分と重ね合わせてしまわずにはいられない傑作でした。  ありがとうございます。

4.5
1
鯨ヶ岬勇士

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