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小説家になろうファンタジー連載:16話完結

死霊術士の殺人鬼

駆け出しの死霊術士であるミチカが蘇らせたのは、正しく「災厄」だった。 きわめて残酷で、悪辣。子どものように無邪気でいながら、本質は万年氷よりなお冷ややか。 愛知らぬ彼の名は、リパー・エンド。 死して数百年経過しようと人々から恐れられる、伝説の殺人鬼である。 彼を蘇らせたことで、ミチカのみならず、多くの人生が狂い出します。 リパー・エンドは一言でいうと「人でなし」。 殺人をこよなく愛し、どうにかリパー・エンドを死霊解放しようと奮闘するミチカの努力を鼻で笑い、その努力が実らず終わったときの絶望を愉しみに待つような男です。 『史実ではこんな風に語られるが、実は……』といったようなことは一切ありません。頭の先からつま先に至るまで、彼は最凶最悪の殺人鬼であり、彼の罪は彼だけのものです。 少し歩けば息をするように血の海を生むリパー・エンドは、当然のように恨みも多く買っています。 こんな非日常の証明のような男を前に、ミチカは振り回されながら、どうにか彼を打ち倒さんと旅に出ることになるのです。 けれど……。 平気で人を殺せるリパー・エンドと、真っ当な感覚を持つ少女・ミチカ。 ふたりの育む関係性は、ただのバディとは少し違います。 蘇らせた人間と、蘇った死者。 平凡な学生と、歴史に名を残す人殺し。 本来交わるはずのないふたりの道が、運命のいたずらで交差するのが本作です。 分かり合えないし交わらない。迎合しない。けれど彼らの間にしかない絆が確かにあり、つながりがあり、ここにしか生まれ得ない感情があります。 果たして、恋とは甘やかな感傷のみを呼ぶのでしょうか。 それに当てはめると、因果で結ばれた彼らの関係は恋ではないでしょう。 けれど、個人的には恋愛ジャンルで最も記憶に残っている作品は何かと聞かれたら、この作品を迷わず挙げます。 物語と読者が一期一会であるように、物語の登場人物と読者だって一期一会です。彼らの関係性も。 設定の秀逸さ、文章の読みやすさ、物語としての面白さは言うまでもありませんが、「契約」「互いに命を狙うもの同士」「他にない独自性」「キャラクターの成長譚」「名前のつけられない感情」これらのうちで一つでもピンときたら、ぜひ読んでみてください。 ここにしかない出会いが、きっとあなたを待っています。

5.0
  • 作品更新日:2013/12/11
  • 投稿日:2021/7/13
小説家になろう恋愛連載:25話完結

書簡

どんなちいさな命も尊び、愛することのできる少女・イリスと、ひょんなことから彼女と手紙のやり取りをすることになった騎士・フェリクスの物語です。 イリスは心優しく聡明で、茶会のみんなが嫌がるシャクトリムシだってへっちゃら。どころかそっと逃してやるのです。 物語の構成の隙のなさ、情景が浮かぶようなうつくしい文章、イリス視点のどこまでも優しい世界への眼差し、フェリクスの愛情深さ。その全てが水のように溶け合い、ふくらみ、まるでお伽話を読んでいるような心地になります。 どうして彼らが惹かれ合うのかを、不用意に愛や恋といった単語を用いず、嵐のような愛憎を挟むこともせず、おだやかな海のような物語全体で説得力を持たせている手腕は、実に見事です。 それでいて、間違いなくこのお話はふたりの「恋物語」なのです。せつなくなるほど。 きっと物語の結末にたどり着いたとき、登場人物たちとの別れが寂しくなるし、彼らみんなの幸せを願うほど、いとおしくなると思います。 フェリクスの過去は本作ではあまり書かれませんが、番外編もありますので、気になった方はどうぞ。

5.0
  • 作品更新日:2016/11/25
  • 投稿日:2021/7/11
小説家になろう恋愛連載:12話完結

貞節とは何ぞや

多種多様な指輪が人々の指を彩るこの世界。 貞節、契約、隷従……。指輪にはあらゆる祈りや願いが込められています。 特に貴族は人脈を誇示する意味合いで、指輪の数は多ければ多いほど良いとされる中、ここに風変わりな少女がひとり。 ごてごてとたくさんの指輪をつけた母を見ながら育った彼女は、ある指輪に焦がれているのです。 まっさらな指を飾る、愛するひとから贈られるたったひとつの「貞節」の指輪を──。 病弱で、少々おっとりした彼女と出会うのは、敏腕ながら凶相を持つ辺境伯。 彼は彼で、恐ろしい顔のお陰で何人もの女性に逃げられてきた過去を持ちます。 まっさらな指の持ち主どうしが、運命の夜に出会うことから、物語が始まります。 作者様の作品はほとんど読んでいますが、このお話も例に漏れずキャラクターの名前は出てきません。 それでも「推進力のある文章」というのでしょうか。ぐいぐい読ませる力のある文体に引き込まれます。 世間知らずゆえの主人公の感性も、実のところ策略家の辺境伯も、すっきりした文体ながら必要な背景が書かれているために、置いてけぼり感はないでしょう。 主人公たち以外の視点のお話も、こんな裏事情があったのかと物語の世界が広がります。 人間味のある魅力的なキャラクターたちが登場しますので、注目していただければ。 さいごに。 物語の主人公は実にしあわせそうに貞節の指輪を眺めますが、世界観は大変シビアです。というのもこの貞節の指輪、誓いをやぶれば砕けてしまいます。 果たして主人公の指に嵌るのは、たったひとつきりのよどみない愛の結晶か、それともあらゆる懇願の成れの果てか。それ以外か。 なんであれ、指輪はひととひとをつなぐ鎖に相違なく。 鎖に導かれた彼らの行く末を、ぜひ見届けてください。

5.0
  • 作品更新日:2013/9/22
  • 投稿日:2021/7/14
小説家になろう恋愛連載:60話

どうやら私はバッドエンドに辿りつくようです。

舞台は女神信仰の根強い、とある国。主人公は高慢だと人々から陰口を叩かれる妾腹の生まれの王女・カルディア。 彼女は自分に自信がなく、とがった言葉で己を鎧い、婚約者に冷たく当たります。そのくせ、哀しくなるほど、誰より「純粋」なのです。 ここには神も、宗教も、階級も、魔術も、異能もあります。 富める者は豊かで狂乱の暮らしを謳歌し、貧しい者は薬にしがみつき、スラム街で明日もないように生きています。 そんな重厚な世界観で繰り広げられる、数々の悪辣で魅力的な男性陣とカルディアによる掛け合いは必見です。 カルディアの婚約者である優美な貴族・ギスランのほかに、幼馴染軍人・リスト、痺れるような甘い感情をカルディアに教えた貧民・ハル、この世で最も美しい半分血の繋がった兄・サガル、危険な香りのする商人・蘭王、元婚約者の辺境伯・ノア、カルディアの初恋の人・トヴァイス…。人間以外にも(!?)、まだまだ素敵な男性キャラクターが登場しますので、ぜひお気に入りを見つけてください。 本作は主人公・カルディア姫の目を通し、読者に問いかけてきます。 私たちがこれまでの人生で培ってきた「善」は、本当に「善」なのか。 「悪」は本当に「悪」でしかないのか。 「正しさ」とは結局のところ、その人間の独善的なものさしに過ぎず、たやすく揺らぐものです。 「正しさ」という、時代によってうつろう価値観が崩壊したときこそ、この物語の真の始まりとなります。 ある事情から表舞台から遠ざけられ、ひっそりと生きてきたカルディアは、学園でハルと出会ったことから徐々に変わり始めます。 本当にカルディアは人々に噂される通りの「狂人」なのか、ギスランをこき使う「高慢」な女でしかないのか。 たとえ冒頭のカルディアの描写に面食らっても、一人の人間の内面に飛び込んでいくつもりで読み進めていってください。きっと後悔することはないはずです。 男性陣との掛け合いもさることながら、この物語の一番の肝は、彼女の成長譚にこそあるのです。 ※ムーンライトノベルズさんにて現在も連載中です(2021.7月現在)

5.0
  • 作品更新日:2018/4/2
  • 投稿日:2021/7/11
小説家になろうミステリー連載:26話完結

囁くヴァニタス

ヴァニタス──寓意画。それは人生の虚しさや、世の儚さをキャンバスに落とし込んだ、静物画のジャンルの一種を言います。 物語の舞台は学問と芸術の都・ヴェレス。 裏通りでひっそりと文具店を営む主人公・ライルのもとを、生真面目な少年・ルドルフが客として訪ねてきます。 曰く、「贋作屋」としてのライルに仕事を依頼したいと。 実直なルドルフに対し、人気サロン「火曜会」嫌いを豪語するライルは少々ひねくれ者。さらにある大きな秘密を抱えています。 そんなライルに度々振り回されるルドルフですが、絵画への熱量が並々ならぬものであるのは彼も認めるところ。 読者はライルの解説を通じ、芸術にまつわる見識や理解を深め、ルドルフの目を通じて、ライルという謎深き人物と、「火曜会」という豪奢なヴェールに隠されたほの暗い真実を知ることになります。 作者様は複数の書籍化作品をお持ちですが、この作品はいつまでも忘れられません。 文章の巧みさもさることながら、魅力的な登場人物たちの軽妙な掛け合い、芸術にまつわるシーンの説得力、キャラクターがほんとうに「生きている」と思わせる力が素晴らしい。そんな中にヤンデレもひょっこりいたりする。 何より、最初から計算され尽くした物語の構成が素晴らしいの一言。最後の最後までたどり着いたとき、「ここに繋がるか!」と膝を打ちました。 幕引きも見事で、あまりに鮮やかな結末の描きっぷりに、私たち読者も物語という一つのうつくしい「絵画」を鑑賞していたかのような、そんな錯覚に陥ります。 無駄な描写は一切ありません。最初から最後まで物語が語りかけてくる囁きを聞きこぼさず、見落とさず、見逃さず、ぜひライルとルドルフのたどり着く結末をご覧ください。

5.0
  • 作品更新日:2016/3/26
  • 投稿日:2021/7/12