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カクヨムファンタジー連載:49話完結

記憶をめぐる、彼と少女の物語

 山岳民族の住む山奥にある『遺却の湖』。その水に触れた者は、記憶が溶けてしまい、別人のようになってしまうという——。  その溶けた記憶が凝ってできた「追憶の石」を拾い集めて日々の糧に変えていたヴァールは、その湖で一人の少女に出会う。  硬質で美しい湖と静かなヴァールの心情の描写から、少女ビルカが意識を取り戻した後の圧倒的に無邪気でヴァールを振り回すギャップが凄まじく、思わずニヤニヤしてしまいました。  彼女に絆されるでもなく内心でぼやきながらも、ついつい世話を焼いてしまうヴァールと全力でそこに甘えていくビルカのほのぼのしたお話になるのかと思いきや、やがて語られるヴァールの暗い過去。  全ての記憶を失いたいと思うのがどんなことなのか、ビルカがその特異な能力を使っている時に、ヴァールだけがその悲しみや苦痛に気づき、気づいてもらえたことで、半ば無意識に涙を流したビルカのシーンで胸がぎゅううっとなりました。  やがて、ビルカの過去が明らかになり「変わりたくない」と言っていた彼が駆け出す背中はもう最高に格好いいのです……!  彼らを見守る山岳民族の守り神やその使いの青年、そして彼を気遣う少女カムラや村人たちがなんだかんだみんないい人たちなのもほっこりポイントでした。  ぼやきがちだけど優しい元軍人と破天荒に無邪気な少女の運命の物語、本当におすすめです!

5.0
  • 作品更新日:2020/12/1
  • 投稿日:2021/7/12
カクヨムSF連載:43話完結

Dearest.最愛の君よ、星屑の向こうで待つ

 戦争で顔の半分と記憶を失った元軍人のイヴァン。瓦礫の山で日々鉄くずを拾っていたスノウは、たまたま見つけたイヴァンの義眼を綺麗な石だと思い、指輪に仕立てていた。貧しいけれど純粋で可憐に見えたスノウには、しかしそれだけでなくもっと苛酷な秘密が……。  失われた過去に苦悩しつつもスノウを守ろうとするイヴァン、そんな彼に惹かれ、ひたむきに想いを向けてもなかなか受け入れてくれようとはしない彼に複雑な想いを抱きながらも、献身的に尽くすスノウの姿はあまりに健気で、見守っているこちらの胸が痛むほど……。  戦争、特に「戦後」という重いテーマを扱い、仄暗い予感にどきどきしながらもこの物語はどこへ行くのだろうと読む手が止まりませんでした。  多くの困難と謎を乗り越えて、二人がたどり着いた運命の果て、ぜひたくさんの方に見届けていただきたい物語です。

5.0
  • 作品更新日:2021/1/12
  • 投稿日:2021/7/13
カクヨムファンタジー連載:33話完結

マリオネットインテグレーター2

 国を守ってきたはずの水晶木にその運命に翻弄される人々の様子を、どこか淡々とした筆致で描かれていた「マリオネットインテグレーター」の続編。  今作は前作で明らかにされなかったカートの秘密や、ピアの過去が明らかになるとともに、彼らが負う苛酷な運命との対峙が描かれていきます。新たに登場したフィーネ、成長したアーノルドなどが、さらにカートやピアと深く関わることで、前作よりももっと人と人とが関わることで生まれる心の軋み、切なさがとても鮮やかに胸に迫ります。  何と言っても、銀縁眼鏡白衣——! もとい、ダグラスが抱える野望と、何とも複雑な想い。彼の行為は決して許されるものではありませんが、それでも彼もまた世間の「常識」や固定観念にある意味縛られてしまっていたが故に、あんな運命に落ち込んでしまったのかなあとも思えました。  人が本当の意味で自由に生きるとはどういうことなのか、多様性とは、そんなことを考える良いきっかけともなります。  そして何より、辛いことを乗り越えた彼らの最後は大団円のハッピーエンドでした!

5.0
  • 作品更新日:2021/7/2
  • 投稿日:2021/10/11
カクヨムファンタジー連載:44話完結

マリオネットインテグレーター3

 水晶木の精霊の庇護を離れ、自らの国を治めることで前を向き始めたラザフォード。その国で、騎士として成長していたカートには、前作で負ったとある運命が容赦無く彼を絡め取ろうと襲いかかります。  いくつもの絡まる運命の糸。  大切に思うからこそ、その運命の前にもがき、混乱してカートを傷つけてしまったピア。どうしようもなく彼の前から逃げ出したカートを救ったのは、何とあの男で——。  前作で一応の解決を見たかに思えたカートの瞳の秘密と、隣国ドアナとの抗争を大きな軸として物語は進みます。  悩み苦しみながらも成長し、やがて色々な想いを抱え、答えを見出していく彼らの姿に、思わず涙が溢れてしまいました。  シリーズ最終作とのことで、全ての因果と因縁をひとつの未来へと織り上げていく見事なエピローグ。  彼らと会えなくなってしまうのが本当に寂しいと感じてしまう、素晴らしい物語でした。

5.0
  • 作品更新日:2021/10/3
  • 投稿日:2021/10/11
カクヨムファンタジー連載:58話完結

Bad luck + Jump off

 どんな相手と組んでもなぜか不運に見舞われる冒険者ジャスレイと、空から降ってきた謎の若者(ツッコミ属性)のロードムービーを思わせる冒険ファンタジー。  沈着冷静かつ用意周到で実は有能なのに、でも隙があって完璧からは程遠い、けど優しくて面倒見の良いお人好し——そんな愛すべきおっさん(失礼)と、何を見ても感動しつつ、ジャスレイのすっとぼけた行動にしっかりツッコミを入れてくれる青年トールのかけあいが軽妙で楽しいです。  かと思いきや、巨人族風かつ時に冷酷、という従来ではなかなか見ないエルフの設定から、とある秘密の武器を巡る冒険につながっていくなど物語のバックグラウンドもしっかり練りこまれています。  そして、時折見せるトールの暗い陰の描写、それでもそれをひょいっと大きな器で受け止めてしまうジャスレイの優しさに思わず震えてしまいました。  メインの二人だけでなく、エルフに仕える秘密の多そうな女の子や、敵対する怪しげな人々など、それでもどこか憎めないキャラクターたちが脇を彩り、戦闘シーンもジャス本人は「姑息」などと評しますが、有限の能力を創意工夫で補うその様が実に楽しいです。  Web小説らしくない、ぎゅうぎゅうに詰まった、世界が目の前に浮かび上がるような描写も魅力。王道ファンタジー好きな方にイチオシの一作です!

5.0
  • 作品更新日:2020/12/19
  • 投稿日:2021/7/12
カクヨムミステリー連載:2話完結

あなたを死なせるための手紙

 誰よりも憧れて大切だった双子の姉の千鶴への手紙。そこに綴られていたのは、千鶴と「私」との大切な思い出と、それがどうしようもなく壊れていく様で。  けれど、最後まで読んだ時、この物語のタイトルの意味に気づいて思わずうわああっと声が出てしまいました。  一度ならず感情を大きく揺さぶられること間違いなし。「封筒の表書き」にあった通り、とにかく最後まで読んでいただきたい一作です。

5.0
  • 作品更新日:2021/8/29
  • 投稿日:2022/3/29
カクヨムファンタジー連載:121話完結

旅をする──ドラゴンの少女と巡る異世界

 主人公が理由もわからず異世界に来てしまう——古今東西、特に最近はそんな物語が溢れていますが、この物語のひとつの大きな特徴は、主人公ユーヤが最初に出会ったドラゴンの少女シル以外とは言葉が通じない、ということです。  ドラゴンなら強大な力を持っていて、誰とでも話せる、だから大丈夫——そう思いました? 残念! なんとシルは自分のことさえよくわからず、世界のことも言葉も何もわかりません。ある意味ユーヤ以上に世界の迷子です。  そんな二人が「何か」を探して旅する物語。  まず心惹かれるのが、何だかよくわからないのにとっても美味しそうな食べ物たち! とろける何か、蜂蜜のようなものがかかった甘そうなお菓子。それを満面の笑顔で食べているシル。訳のわからない世界にいながらも、なんとも美味しそうで、苦労は多いのにどこかほのぼのして温かい気持ちになってしまいます。  そして、世界の描写だけでなく、主人公ユーヤが現地の人々と身振り手振りやそれまで学んだカタコトの言葉を使って、少しずつ言葉の意味を理解していく過程がとても興味深いのです。  二章で何度も登場する「アメティ」という言葉、現地の人々と交流していくうちにその意味がわかったとき、わあ! と本当に異国を旅している気分でとても楽しくなってしまいました。  新しい言葉が出てくるたびに、この言葉はどんな意味なんだろう、この人たちは一体どんな人々なんだろう、そんな風に世界を深く楽しめる素晴らしい作品です。  こんなご時世だからこそ、この物語で、まだ見ぬ世界を新鮮な気持ちで旅してみませんか?

5.0
  • 作品更新日:2022/3/26
  • 投稿日:2021/7/13