剣士と赤竜
最終更新:2020/7/2
作品紹介
ジェラベルド・バルナランドは、赤竜との戦いで負傷したのを機に二十年間務めた赤竜討伐団を引退する。 娘のラウラを養うため天才魔道士トート少年に弟子入りしたものの、慣れない魔法の勉学に悪戦苦闘する日々が始まった。 ラウラの出生の秘密、トートが抱える孤独、そして相棒シノとの絆……。 ままならぬ人生を愚直に生き抜く男の姿を描いた、剣と魔法と人間のハイファンタジー。 総字数:約112,000字 同人誌版:2019/11/24完売 ※注意 作中に伝染病による病死の描写があります。
評価・レビュー
aruhi
優しすぎる剣士の叶わぬ恋と、複雑に絡まった優しい絆の行方は。
赤竜に襲われる都で、その討伐団の主力として団長と共に皆を率いていたジェラベルド。 その竜との戦いで深傷を負ったことで引退を決意し、別の道を歩もうと考え始めたところから物語は始まります。 美しく鮮やかな世界の描写と、登場する人々の心の動きが本当に細やかに描かれていて、どちらかといえば剣と魔法の冒険ファンタジーかな、と思って読み始めたのですが、あまりに心揺さぶられる人間ドラマの物語でした。 ジェラベルドが相手を想うあまりに自分の想いを封じ込め、さらには初めは自分を蔑んでいた別の相手とやがて心を交わすようになるその過程が丁寧に丁寧に語られます。 亡き妻の最後の告白の本当の意味を知った時、久しぶりに物語を読んでいて不覚にも泣いてしまいました。最後は爽やかに、それでもやっぱり少し私には切なく思えました。 あまりにも優しすぎる元剣士と彼が大切にする人たちとの物語。 おすすめです!
橘 紀里