山中の海
最終更新:2012/4/22
作品紹介
舞台は北海道の最南端。歴史の深い街、函館。 巳扇(みおうぎ)は幼い頃に目の前で母を亡くし、心のどこかでそれを信じられずに生きてきた。床に伏せていた父も亡くなり、失意の中で虚無感と孤独感に苛まれる。 そんな彼に幼馴染の峰時まり子がいう――「あたしが、いるじゃない」 巳扇に芽生える恋心と、彼らを取り巻く怪異の影。そして幽かに記憶に残る、母の面影。目まぐるしく廻る世界の喧騒の中から彼らはそっと離れていく。 ――僕はあの日気付くべきだった。君を理解しようとして、君から目を背けてしまった。解ってしまうのが怖かったんだ、誰よりも君のことを愛しているのに。 青年の葛藤と、仄暗い怪異。四章から成る青春の物語。
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