風来の清十郎 ~あやかし百景見聞録~
最終更新:2022/11/30
作品紹介
※カクヨムWeb小説短編賞2022中間選考通過作品。 風流をこよなく愛する武芸者、榊清十郎は、自由に諸国を巡る風来坊である。 ある時夕立に降られ、雨宿りした桜の古木の下で、気配の読めぬ不思議な女と出合う。 「今からここで荒事が起こる」との女の邪気のない言葉を信じ、古木の上へ避難する清十郎。 果たして、古木に向かって追われ走り来る若い娘と、それを追い回す博徒共が現れる。 助けに入ろうとする清十郎に、女は静観するよう引き留めた。 言われるままにすると、若い娘と博徒達の押し問答が始まる。 その後、清十郎が見た光景とは…… 業と雅が交錯するあやかし物語、いざ開幕なり。
評価・レビュー
あっ
桜の下に何かがある系だけど、他とは一味違う!
桜が登場する作品は比較的多く読んできたし、投稿サイトにも数多くあると思う。 特に桜の下に何かがあるような話は。 これもそのうちの一つなのだが、他とは一味違うのが読みどころだ。 主人公、清十郎は風来坊で、旅をしている中、ある桜の木を見つける。 葉が茂る古い桜である。花ではなく、葉が茂っているのだ。清十郎はその桜を悠々と見上げ、桜の下で休憩を取ることにする。 その休憩中に何が起こったのかは、実際に読んでみてほしい。桜の下に何があるのかも読めば分かる。 時代劇を思わせるような語りもまた素晴らしいものである。その語りが描写するのは、清十郎のかっこよさ(かっこいいというよりは、粋という方がいいかもしれない)や、この作品の妖しさなどを伝えてくれる。 短編ではあるが、読みごたえのある作品だ。 和風が好き、時代劇っぽいのが好き、妖しいものが好き、粋な主人公が好きという方には、この作品をおすすめしたい。
月瀬沙耀