偽称の虚言者 ―嘘を吐く正直者―
最終更新:2021/4/17
作品紹介
『異能力事件専門捜査室』という秘匿機関の新米捜査官・泉小路小夜(いずみこうじさよ)は、ここ二年間で起きている不可解な事件に頭を悩ませていた。 事件の始まりは二年前からで、発見されたのは二人の能力者の死体。明らかに誰かに殺された、というような有様だった。しかし不気味なことに、肝心の犯人に繋がる痕跡だけが一切見つからないのだ。足跡も、毛髪の一本も、指紋すらも。何者かと「いた」はずなのに、その「情報」が何一つ、無い。 小夜の仕事は能力者収容施設にいる『情報屋』に会い、捜査協力をしてもらうこと。すぐに終わると思っていた矢先、目の前で堂々と脱走しようとする男に遭遇する。小夜は放っておく訳にもいかず、ひとまずその男の用事に同行することに。 京谷要(きょうや かなめ)と名乗った男は、なんでも自他ともに認める「ひどい嘘つき」らしく、「自分の持つ能力は『嘘を信じ込ませること』だ」という。そして、「二人の能力者を“賭け”で殺したのは、この、嘘つきの自分だ」と口にする。 疑う小夜は「証拠を出せ」というものの、要の言葉が嘘か本当なのかは、小夜には分からない。 果たして要は本当にこの事件の犯人なのだろうか。「自分は嘘つきだ」という彼は、その通りの嘘つきなのか。それともその言葉は嘘で、最初から真実を語る正直者なのか――。