素直な王女と天才奴隷の恋物語〜政略結婚が決まった大国の王女は、異世界から来た奴隷に溺れる〜
最終更新:2021/8/26
作品紹介
大国ラドガ辺境国で生まれた王女マリーナ、十八歳。彼女は執政官である最高権力者ヘルモーズ卿のひとり娘だった。 首都から離れた郊外の城で、家庭教師や使用人たちとともに暮らし、大切に育てられたマリーナは世間を知らない。自分で買い物もしたこともなかった。外部との繋がりといえば友人のグルヴィアひとり。美しく世間知らずの深層の令嬢である。 十八歳の誕生日が近づき成人としてお披露目舞踏会が、父の本城で開催されることになった。王女ははじめて田舎の城を出て都会に向かった。 首都に到着してすぐ大通りで自分の名前を呼ぶ美しい声を聞く。 それはリュートを片手に歌う「アヴェ・マリア」の曲。はじめて聞く、その曲と歌声に彼女は心惹かれた。 歌っていたのは、奴隷に落ちた異世界からきた男ユーセイ。日本の音大で将来を嘱望されたエリートだった彼は、意図せずこの世界に転移してしまった。二酸化炭素が多い異世界の空気に、彼は意識を失い、気づいたときには奴隷として売られていたという。 一方、マリーナは父親が開いた舞踏会で多くの求婚者と出会う。 その一人、北の大陸にある小国フレーヴァング王国の王子との結婚を父は望んでいた。 フレーヴァング王国は長い間、シオノン山の降灰に悩まされ作物が枯れ、国民は飢えていた。しかし、一年前に、この国に救世主「炎の巫女」が現れ、ドラゴンとともにシオノン山の怒りを鎮めた。ドラゴンの力を持つ、かの国は列強の興味の対象に躍り出た。 王女であるマリーナの結婚は政略であり、北の大陸に足がかりの港湾を持ちたい父と、隣国のシルフィン帝国の脅威に、豊かな国ラドガ辺境国の力と資金を得たいという王子、両国の思惑が合致する結婚である。 世間知らずの王女は、そんな状況にも関わらず奴隷であるユーセイに恋してしまった。 友人グルヴィアや、母親代わりの使用人の助けを経て、マリーナはユーセイを奴隷から解放する。 ふたりはラドガ辺境国から逃げ、フレーヴァング王国の山にある一軒家に愛の巣を作る。それから、半年、異世界から来たユーセイとの愛に溺れる王女。 しかし、異世界とこの世界は空気が違う。ユーセイの身体は徐々に……。