魔王の右腕

　ダーヴィフェルト王国の辺境、魔族の住む魔王領との境界近くにあるマンセル村。危険な場所であるにもかかわらず、村人たちは平和な暮らしを享受していた。それは村を守護する優しき白竜ルクスのおかげ。村人たちは彼の竜を尊敬し、竜は誠実な村人たちを深く愛していた。 　しかし、そんな平和を壊す者がいた。『勇者』である。王命によって辺境の視察を行っていた彼らは偶然察知した白竜を守り神とは知らずに討ってしまう。さらに様々な要因が重なって、マンセル村は地図上からその名を消されてしまうのだった。 　だが、村人が全滅したわけではない。村の生き残りにして生まれながらに竜の言葉がわかる少年、ザイン・リュアスは復讐を誓った。十年の雌伏を経て力をつけて成長した彼は亜人や魔族、さらには王女や魔王の力までも借りて動き出す。すべては憎き『勇者』をこの手で殺すために。 　これが後に魔王の世界征服という覇業を支えたザイン・ルクス・リュアスの始まりの物語である。