経験値タンカーの挑戦録

　冒険者の少年アキは、経験値を吐き出すエネルギータンクである。 　本人は一向にレベルが上がらないが、ユニークスキル『経験値貯蔵』に経験値を溜め込んでおり、Sランクパーティーの仲間は彼を殴ると経験値を獲得出来ることから、いろいろと重宝していた。 　ある日の事。 　殴って得られる経験値に限界を感じた仲間達は万年レベル１で戦闘では役に立たないアキを追放してしまう。 　しかし、夢を諦め切れないアキは、逸る気持ちから身の丈に合わないAランクダンジョンにソロで挑戦する。 　非力で魔力も無いが、持ち前の弱点を突く剣術で順調に攻略していくアキの前に、不幸にも千年に一度突然変異で顕現する『竜王』が立ちはだかる。 　万事休す。 　あらゆる攻撃手段が通用せず――そう思われたその瞬間。今までクソの役にも立たなかった『経験値貯蔵』が迷宮を半壊させるほどの大爆発を起こし竜王を巻き込んだ。 　崩落して辿り着いた迷宮の底にて、辛うじて生き残ったアキは異変に気付く。『経験値武装』という謎スキルに『経験値貯蔵』が変化しているという事と、『経験値』が『魔力』の代わりになる事に。 「やれる。これなら――彼女の隣に立てる」 　 　これは、『憧れの人』の隣に立つため泥臭く足掻きまくった少年が、とうとう掴んだ力を手に、飛ぶ鳥を落とす勢いで成り上がっていく物語である。 ざまぁ回には『✳︎』マークが付いてます。 他サイトにも投稿しております。