自由が羨ましい
最終更新:2020/7/28
作品紹介
貴族に生まれた子供に自由は存在しない。平民のような伸び伸びとした環境は存在しない。交流関係も、結婚も全て親の意のまま。 貴族が羨ましいと思う人間は金と地位しか見ていないのだろう。蓋を開ければそれは牢獄だ。自由行動などなく、そこに自分の意思も存在していない。 家よりも学園の方が窮屈で制限がつく。学園は小さな社交場だ。一息することなど出来ない。学びの館と謳っては居るがそもそもそんな必要は無いのだ。どこの家も家庭教師が存在する。この学園で学べることは全てここに来る前に学び終えているのだ。 自分を守るために誰かを犠牲にする。社交界がスキャンダルに飢えているのは自分以外の人間を蹴り落とし、自分を守りたいからだ。 関心を誘導している。そうすれば社交界で自分が守れるのだから。そうでないと自分を守れない 貴族が通う学園は今、面白いイベントが催されていた。とある男爵令嬢が高位貴族を狙っているというスキャンダルだらけのイベント。 そして──王子は落ちた。 その事実に私は身震いした。どう考えてももう遅いのかもしれない。この時点で私の運命はもう──。 現実は甘くはない。保見のための行動は全て裏目に出てしまった。まるで私が婚約者を愛しているかのように写ったのだろう。 そして卒業パーティーの直前、婚約者はついにその言葉を言い放ったのだ。 存在価値が下がった娘に親は一体どれだけの情けをくれるのだろうか。 卒業パーティーが終わって、親に呼び出されぶん殴られた。 怒声を浴びられ、ボロ雑巾のように蹴られる。 勘当され、ついに平民となった。 何もかも失った。でも、今はとても自由だ。自由なんだ。そう認識すればとても心が軽くなった。 もしも、もしも、来世なんてものが存在するのであれば──貴族ではなく、平民に。
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