ボクが奴隷でキミが王様で

始まった時には全てを取り上げられていた。 今あるのは残った奪いつくされたその身と自我、始まったその瞬間から傍らにいてくれた１人の少女。 そして、奪われた先で生まれた願望――。 残滓である彼は残りの全てを彼女の為に捧げることを誓った。 彼女の為ならどんな辛いことでも笑って受け入れられる。 （だって、もう彼女しかいないから……） 　 全てを取り上げられたその先で初めて得た願望の為に、少年は少女と共にこの世界で生きていく。 ◎ 　産声を上げた先は奴隷市場だった―― 　幸せの絶頂から真っ逆さま。不幸のどん底へと突き落とされた少年の人生は、追い打ちをかけるように幼馴染である恋人の死を目撃すると言う最悪の形で終わりを迎えた。 　しかし、どこぞの神の気紛れか、死んだと嘆き苦しんでいた彼を待っていたものは、新たな命を授かり別の世界で息吹を上げた。 　……この姿、赤ん坊？　奴隷市場？　なっ、ライオン男っ！？　……ま、魔法っ！？　僕、魔法使えるのっ！？ 　過去の自分に後悔を残しながらも、薄暗い闇の世界で共に奴隷として育った少女ルイと２人、育ての親である老人に魔法を教わりながらまだ見ぬご主人様に買われるその時を待つ。 　かくして少年は奴隷として生まれ、第二の人生を歩むことになった。