【物語は】
ブラック企業の社畜だった主人公が、異世界に転生するところから始まる。しかも猫として。よっぽど人間としての人生が辛かったのか、彼はあっさりとそのことを受け入れ、しかも人間に戻ることを拒否するのであった。
現世に別れを告げ(実際は告げてはいないが)ネコライフを満喫しようした矢先、主人公はまたしても悪夢と遭遇。悪夢とうより悪魔のほうが適切な表現かも知れないが。さて、主人公はどうやってこの危機を乗り越えるのだろうか。
【物語の魅力】
主人公がネコであることに意味を感じる物語。
まず転生×悪役令嬢という設定が充分に活きていると感じた。異世界転生ものでは主人公が、理不尽に亡くなるケースが一般的。それが王道なのだろう。王道でありながら主人公が転生することで、以前の小憎たらしい上司に仕返しするチャンスが訪れる。ここがポイントなのではないだろうか。
世の中に尊敬できる上司は沢山いるだろうが、自己中心的な上司という役割は想像しやすく、主人公に感情移入しやすい設定だと思われる。
物語においての”復讐劇”は、”そうだ、やっちまえ”という、主人公に感情移入できる状態でないと応援したいと思えないものだ。念のために言うが、なにも復讐を推奨しているわけではない。
次に、主人公の現実世界に妹がいるという理由。これはもちろん世界観にかかってくるのだが。主人公が日常で行っていたことが、転生先で役立つという流れは自然であり、納得しやすい。”何故?”を納得させていくのが、物語におけるリアリティ。そういう意味でもこの物語は、世界観に対してのリアリティを持たせていると感じる。
【登場人物の魅力】
ブラック企業の社畜であることから、解放された主人公。この物語にはコメディ要素が含まれている。どれだけ解放感を味わっているのか、とても分かりやすく、かといって始終コメディ調というわけではない。喜怒哀楽がしっかりとしており、シリアスな部分はシリアス。読者の感情を充分に動かすことのできる物語だ。全体的に想像のしやすい物語であり、感情移入もし易い。
その後出てくる元上司や、転生先の物語(ゲーム)自体の主人公。彼らの性格も分かりやすく、主人公が元上司を嫌いなことがよくわかる。
一緒に腹が立ったり、助けてくれた女の子に協力したいという気持ちが芽生えたりと、作品に対しての愛着が持ちやすいと感じた。
この作品はとても凝っており、主人公の妹が遊んでいたゲームがどんなものなのか、イラストも添えて分かりやすく説明されている。攻略できる男性の容姿や攻略方法など。とてもイメージが持ちやすいところも魅力の一つ。
【物語の見どころ】
方向性がしっかりしている為、とても分かりやすく読みやすい物語である。設定と世界観が活かされており、そこに納得のいく展開がプラスされているという印象だ。悪役令嬢ものの王道が、どのようなものか分からないが、恐らくラストは爽快感があるのではないかと予想する。
さらに面白くなるのは、あらすじ部分を超えた先。ユーモアたっぷりの展開が待っている。
果たして、主人公は無事ステラを聖女にすることが出来るのだろうか?主人公の妹がプレイしていた乙女ゲームには、複数のラストが設定されている。その中で、ステラはどんなエンディングを選ぶのだろうか。
あなたも、お手に取られてみませんか?
主人公のネコ生をかけた戦いの結末を、是非その目で確かめてくださいね。
おすすめです。
登録:2021/8/1 19:10
更新:2021/8/1 19:10