【物語は】
ある魔女と言われる人物についての噂話から始まる。
彼女は美人で、夏だというのにハイネックで黒のワンピースを着ていた。そんな彼女に対し、何事にも無関心だった主人公が興味を持つ。しかしそれは、夏だというのに暑そうなカッコをしているからではなく、何故魔女だと噂されているのか興味を持ったからである。そして大学の研究に協力している理由を知りたいと感じたからでもある。
それは好奇心であった。主人公は少ない情報を頼りに、彼女が館長を務める私営博物館を探し当てるのであった。
【物語の魅力】
主人公は探し当てた私営博物館で、アルバイトを始める。アルバイトをしているうちに、彼女の別な一面に触れる。それは大学で見た時とはかけ離れている姿であった。楽なバイトではあるものの、あまりにもやることが少なく、退屈な為、主人公はもっと仕事をくれと彼女に要望をもらす。
それが彼女の能力を知るきっかけだったのだろうか。その日彼女の依頼人から、彼は不思議な話を耳にすることになるのだ。
と、同時に主人公が知ったのは、私営博物館の展示品のことについて。
ゆっくりと明かされていく秘密。
その後、ある品がこの私営博物館に持ち込まれ、彼女の仕事を手伝っているうちに、彼女の魔術の実態を間近で見る機会が訪れるのだった。
【登場人物の魅力と世界観】
何事にも無関心で、人と群れることのない主人公。初めて好奇心を刺激された相手は、ある学芸員でありミステリアスな女性。彼女の元でアルバイトを始めたものの、恐らく直ぐにはその好奇心が満たされることはなかった。
だが、魔女と呼ばれる理由の一つである魔術に触れる機会が訪れる。
彼女の魔術は、鑑定に関係している。
その魔術は、あらすじにもあるように”時を遡る”もの。無関心だった主人公は、段々とこの学芸員の女性のペースにハマっていくようだ。彼女は、詳しく説明をするタイプではなく、主人公は察するタイプ。とても良いコンビだと感じた。
彼女は自ら、主人公を誘って時を遡っている。魔術には”魔術具である時計”が必要なことは分かるが、謎の男に狙われていることから、他の人間にも扱うことが出来るのだろうか?魔術については、主人公にバレても問題はなかったのだろうか?序盤では謎に感じる部分がある。
鑑定がただの鑑定ではなく、人と想いが繋がっているという世界観設定はとても素敵だなと感じる。そして、話が進むとこの小説のタグ”ヒューマンドラマ”の理由に気づき、考えさせられる部分もある。
この物語では、元の持ち主について調べ、現在の持ち主に渡った理由を”時を渡り、本人から話を聞いて知る”のだ。中には、その時代では認められていなかったような多様性についても扱われている。
(ネタバレになる為、詳しく記載することは出来ないが)
【物語のみどころ】
この物語は主人公に、ある小さな変化が起きるところから始まるのだと思う。それまで何事にも無関心だった彼は、自分が興味を持った相手と関わることにより、少しづつ変わっていく。彼の一番の武器は”空気を読む”ことだと感じた。彼女の要望に、臨機応変に応えようとしている。それは、演じることだったり、考えることだったり。一人が好きだったはずの彼は、学芸員の女性に関わったことにより、確実に日常に変化が起きており、少なくとも嫌がっているようには見えない。
あらすじから想像するに、この先苦難と危険が待ち受けているに違いない。
彼らは一体それを、どうやって乗り切っていくのだろうか?
鑑定品により紡がれていく物語。そこには人の想いが詰まっている。
あなたもお手に取られてみませんか?
ほのぼのだけではなく、あらすじの”魔術具である時計を狙う謎の男に襲われる”ということから、スリリングな部分もあると想像します。
二人は無事に魔術道具を守り切れるか、その目で確かめてみませんか?
おすすめです。
登録:2021/8/8 13:46
更新:2021/8/8 13:46