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Episode27

Page415

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氷上のシヴァ

音と、人と、氷上の執念を書ききった物語

私は、この物語の最初から、最後まで、芝浦刀麻に関わる登場人物から語られる彼自身を追っていた、はずだった。 物語の終盤、まるで最初からいなかったかのように、彼は氷上のシヴァという世界から姿を消す。いや、確かにいたのだ。私も、この世界の住人も、彼の放つ金色の光を追っていたのだから。 楽しかった。その一言に尽きる。作者は空間を描くのがうまいと思った。空間の描写は、演目の曲だったり、スケートのブレードが描く軌道だったり、ジャンプという肉体の躍動が複雑に絡み合って表現されている。 そして、偶像めいた描写というか、確かに芝浦刀麻という存在はいたはずなのに、読み終えたあとに、その影を探してしまう、世界と切り離された読後感が素晴らしかった。 作中で語られる「俺は生まれ変わらなきゃいけないんだ。旧い世界なんか足下で叩き割って新しい世界を創る」という言葉が特に印象的でした。 インド神話の神、シヴァの破壊と創造がうまく組み込まれており、作中の登場人物の多くが、破壊(喪失)と、創造(成長だったり進歩)を経験し、青春ものの作品として、読み応えのある内容でした。 芝浦刀麻という存在を、多様な切り口で見せ、繊細な人間関係を描写してくれた作品。大変、満足です。 最後に、私が生きてこなかった人生を見せてくださりありがとうございました。

5.0
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鷹仁(たかひとし)@カクヨム

ケタオチ

この町は、落ちこぼれに優しい

 人は光り輝くものをありがたがり、道端に落ちている石ころには目もくれない。  キャリアやブランドをありがたがり、それに群がる人間たち同士が馴れ合い、媚び合い、輝かしい将来のため、上へと登っていく。  資本主義において、上に立つ人間が放つ正論はあまりにも辛辣だ。何故なら、綺羅びやかで人が集まり賛美するものが正義であるから。正論は、弱者を簡単に切り捨てる。  一方で、そういった世界では人が目を背け、侮蔑の対象とする落ちこぼれたちに居場所はない。  出世街道から外れた主人公がこの町で多くの今を生きる人たちに会い、関わりの中で、人情に浸っていく。この空気感が僕は好きだ。  最後の、広中が西成を認めている描写で救われた。広岡は悪いやつではないのだろう。そもそも、悪いやつなんていないのだろう。ただ、皆立場があり、それぞれの生き方があるだけだ。僕も、欲望を叶えることが悪いことだとは思わない。  それでもやはり、上へ上へと背伸びをする社会は少し辛い。  向上を求められる世界の中で、停滞を許してくれるこの町の優しさは、今の時代、あまりにも尊い。 人は光り輝くものをありがたがり、道端に落ちている石ころには目もくれない。  キャリアやブランドをありがたがり、それに群がる人間たち同士が馴れ合い、媚び合い、輝かしい将来のため、上へと登っていく。  資本主義において、上に立つ人間が放つ正論はあまりにも辛辣だ。何故なら、綺羅びやかで人が集まり賛美するものが正義であるから。正論は、弱者を簡単に切り捨てる。  一方で、そういった世界では人が目を背け、侮蔑の対象とする落ちこぼれたちに居場所はない。  出世街道から外れた主人公がこの町で多くの今を生きる人たちに会い、関わりの中で、人情に浸っていく。この空気感が僕は好きだ。  最後の、広中が西成を認めている描写で救われた。広岡は悪いやつではないのだろう。そもそも、悪いやつなんていないのだろう。ただ、皆立場があり、それぞれの生き方があるだけだ。僕も、欲望を叶えることが悪いことだとは思わない。  それでもやはり、上へ上へと背伸びをする社会は少し辛い。  向上を求められる世界の中で、停滞を許してくれるこの町の優しさは、今の時代、あまりにも尊い。

5.0
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鷹仁(たかひとし)@カクヨム

半笑いの情熱

これは今まで語られることが無かった、ある親友への述懐である。

 この話は、光蟲冬茂という光が池原悦弥という影を浮き彫りにする作品である。主人公池原悦弥が小学生時代に受けたいじめは、光蟲という存在がいなければこれまでも、これからも決して語られることはなかったのだと思う。  話の構成としては最初に大学時代の池原の日常を描いている。人付き合いに無関心で自信の興味の範疇で生を満喫しようとする彼は、囲碁と茶道の二つ(あと光蟲)には興味を持っており、それらを軸に話が進む。  池原は過去の栄光に囚われるタイプの人間である。また、自分は優秀だ(った)という自負がある。第八話で高校時代は優秀な生徒だったという描写がある。“勉強は”という但し書きがついてはいるが、大学も上位私立に入り、社会人になった後も大きく道を外さないかぎりは、彼は賢いのでおおっぴらにはしないにしろ、死ぬまでエリート意識を持ち続けそうな人間性である。ただ、この性格も、後々の展開を読んでいけば、仕方のない癖のようなもののように思えてくる。  ちなみに、大学時代にはルノアールなどの喫茶店が出てくるが、私はこの小説を読んで初めてルノアールに足を運んだ。  そういった無気力ながらも淡々と過ぎていく大学時代から、話は小学生時代に移る。  小学生時代、彼は担任である首藤にイジメられる。理由は色々あるだろうが、要因の一つは他人とズレており、可愛くなかったからだと思われる。池原少年は周りよりも大人びており、首藤や取り巻きのクラスメイトたちを自分よりも精神年齢が幼いと思いこむことで自我が壊れないよう保っていたのではないかと思われる。  さらに、池原少年はただイジメられるばかりではなく、首藤の奸計を出し抜いて見せるという賢さも持っていた。  しかしどれだけ耐えても、池原少年に降りかかる理不尽はまだ幼い彼のキャパシティを超えていってしまう。そして限界を超えた時、彼の中で何かが壊れてしまう。  ――余談で、さらにネタバレになるので詳細は控えるが、この話が書籍化するとしたら、表紙は『葉巻を吸う池原母の絵』を一案に上げたいほど、そのシーンは名場面だと思う。  そうして、池原が小学生時代の思い出を光蟲に向けて述懐することでこの話は幕を閉じる。  池原が凄絶ないじめを受けてきて、また孤独の中にあっても生きてこれたのは、各環境で出現する孤独な彼に寄り添う同性の友達と、要所で起きる異性からの救いの手が彼を保ってきたのだと思う。  作者は光蟲を書きたかったと言っていたが、それは半分嘘だと思う。何故なら作者はナルシストであるし、光蟲よりかは池原の人生を見ている方が面白かったからだ。  私はこの話を四周した(2019年8月12日0時時点)。半笑いの情熱は、作者の生き方を描いた原点といってもいい小説だと私は思う。

5.0
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鷹仁(たかひとし)@カクヨム

スペルドキャッスルの雪宴《ゆきうたげ》

“物語”が紡ぐ、ジオラマの中の不思議な世界へようこそ

本の中に綴られる文字は時を重ねて人々に読みつがれてゆくうちに不思議な力を持つようになる。 作中で語られるこの言葉は、この物語の設定と相まって読者を惹きつける説得力を持っている。 主人公の弟、京志郎が作ったジオラマの世界を、自信のない魔法使いシーディと、百合香は冒険する。その中で出てくる魔法や、ナイチンゲールの物語などといった現実世界とのつながりなど、謎がたくさん散りばめられた本作は、物語が進むごとに耽美で箱庭的な世界観と相まって、どんどん深化していく。 中でも特筆すべきはキャラの魅力だろう。主人公の百合香は、恋多き乙女で、ジオラマの雪だるまや弟の京志郎にすら心臓を高鳴らせてしまうほどの女の子である。 物語の全体的に、少女漫画や童話的な成分を含む一方、実家に隣接した図書館に作られた精緻なジオラマ部屋や流星刀などの男心をくすぐる要素が入っているのも本当ににくいなと思う。 総評して、仕掛け絵本にしたら面白い物語だろうなと思いました。 現実世界から干渉できる世界、っていうのも設定としてはめちゃくちゃ面白いです。そして、ジオラマの登場人物が、現実から干渉できない世界を作ろうとして、ジオラマ世界を拡張しようとしたことも。 製作者の手から離れて、作られた物語の世界が拡張していく。これは、作者にとっては嬉しいことのように思います。

5.0
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鷹仁(たかひとし)@カクヨム

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ガリ勉地味萌え令嬢は、俺様王子などお呼びでない

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