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煉獄にて、ひかりあれと

どん底から始まる物語ではあるが、真実の愛を手に入れる物語でもある。

1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと) とても素敵な表紙が印象的な作品。光と影を感じる。何処かに囚われた女性の物語なのだろうか? というイメージを持った。 あらすじから想像したこと。 まず、後宮に寵姫とはどんな意味なのか調べてみた。 つまり主人公は皇后や妃などが住む宮中奥向きの宮殿に、気に入りの侍女または、愛妾として無理矢理連れて来られたということだ。 自分の意志関係なく、幸せになることも出来た人生を望まない形で奪われたということであろう。この物語の背景がどのようなものかは、読む前の時点では詳しく知ることはできないが、王族の情事の相手をさせられるということは、その身体に飽きるまで道具 (慰みもの)として扱われることになるのは想像に難くない。女性としては、絶望しかないであろう。彼女がしてしまったことは褒められることではないだろうが、同情してしまう。他人に人生を奪われた上に、死罪となる運命も辛いが、生き延びたとして他人に命を掴まれている状況。どちらが幸せなのだろうか? そんなことを考えさせられた。 2 物語は(どのように始まっていくのか?) 主人公と王族オルグとの情事の後から始まっていく。あらすじから想像したものとは大きく違い、彼女は寵姫そのものが嫌なのではなく、彼の所業に対して怒りを感じたのだと思われる。そしてこの男は、元々そういう人間なのだと分かって来る。あらすじの軍人ザルツがどのようにかかわって来るのだろうと思っていたが、本編に入ると直ぐに状況が分かって来る。彼が主人公と共にいなければならない理由も間もなく明かされるだろう。彼らの会話から、犠牲になった人が少なくはないことが分かる。主人公は自分への屈辱を果たしただけではなく、彼女たちの無念を晴らしたという事も踏まえると何とか生き延びて幸せになって欲しいと願わずにはいられない。果たして、彼女の運命はいかに? 3 世界観について 主人公は、元々この国のものではない。ある出来事がきっかけで無理矢理連れていかれたのである。彼女にとっては最悪の出来事が、その国にとっては吉となる。彼女の殺害した人物は謀反を企てていた為である。知らず知らずにそれを阻止した形となった。その為、彼女は刑を受けることはなかったものの、オルグの支持者から命を狙われる可能性が出てくる。この国の複雑な事情により、主人公は罪は逃れても自国に帰ることが出来なくなる。 4 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。 *構成がとても良い。 プロローグでいきなり、物語の重要な部分に触れている。本編に入ると、この国の裏事情なども分かり、その後事の発端へと移っていく。この構成は、物語全体が把握しやすい為、内容が頭に入りやすい。どこを見るべきなのかが分かりやすく、方向性についても分かりやすい為スルスル読めてしまう。 *主人公が何故、こんな状況に陥ってしまったのか納得が出来る。 主人公の性格が言動によって分かりやすく明かされていく。その為、ハラハラするしこんな状況に陥ってしまったのが、その性格によるものでもあるのではないか? と納得してしまう。その始まりは偶然かも知れないが、この主人公だっからこそ、こんな展開なのだろうなと思える。違和感がないのだ。 *物語の舞台について、とても理解しやすい。 全体として、必要な部分のみが描かれている印象。何があって主人公が変わっていくのかもわかりやすく、それでいて物語は穏やかに変化しているように感じる。 *必要な部分がしっかりと丁寧に描かれている。 例えば、主人公の心情や境遇。護衛兼監視役のザルツの背景。彼の人生について知るのも、話の流れによるものでとても自然な流れ、構成なので分かりやすく理解し易い。 *この物語は愛の物語である。 どん底からスタートする物語ではあるが、この物語の中で主人公は真実の愛を手に入れることとなる。一体どんな展開になるのか分からないながらも、読み進めていくごとに主人公の気持ちの変化。そして相手の抱えるものが明かされる。主人公の気持ちの変化に納得が出来るため、応援したくなる。 5 お奨めしたい部分 この物語は恋愛要素も含まれるが、ヒューマンドラマ部分がしっかりと描かれている。それぞれの抱えているものは重いものではあるが、それゆえに感情移入しやすい。自分が彼らの立場だったなら、何を思うだろうか? 主人公たちは抗えない運命ながらも、生かされ生きている。自分の命さえも自由に出来ず、逃れることもできない。しかし、そんな彼らに光が差す時は来る。自分の意志で選んだ選択によって。 愛とは何なのか? 愛に苦しむ人々を描いたヒューマンドラマだと感じた。 6 物語のその先を想像して 二人は逃げ切り真の夫婦となるかも知れないが、この国の未来は定まってはいない。 想像し辛いが、新王の元に新たな国が一から作られていくのではないだろうか? ある意味、ここからがスタートなのかもしれない。 あなたも是非お手に取られてみてくださいね。お奨めです。

5.0
0
crazy's7

逆風の移動都市

緩やかに命をかけた都市競争

レースというと、個人かリレー競技が多いけれど、こちらは都市一つが丸ごと移動してレースしている。 当然、レースに携わる――出場していると言ってもいいと思う――人物も一人ではなく、何人もの人が、それぞれ別の役割を担っている。 そこには内政もある。レースと言えば、政治とは無関係に個人の情熱や意志が物を言う舞台なのに、この作品では内政が大きなウェイトを占めていて独特な緊迫感がある。 チームをまとめる、というレベルではない。自分の主張をいかに通すかという政治だ。 この緊迫感を煽っているのが、都市が動き続けないと隕石で狙われて滅びてしまうという世界設定だ。 レースには直接関係ない設定ではあるけれど、どうして都市なんてものを常に移動させなければならないかの説得があり、このレースと同じ行為が都市全体の人々の生死を左右する、という緩やかな命懸けの状況がずっと背後にあり、不気味で薄気味悪い恐怖を付け加えている。作品にいいスパイスになっている。 しかし、競争相手は味方ではなく、他の競技参加都市だ。そこにレースならではの、勝つか負けるか、線引きのはっきりした結末がある。 最初から最後まで、これはレースをテーマにしたスポーツ小説だと思う。 それなのに他のスポーツ小説にはない、コミュニケーションの難しさが前面に出ていて、オリジナリティに溢れている。 とてもいい作品を読ませていただきました。

4.0
0
奈月遥:未言屋店主

「好き」が紡ぐ糸(仮)

高校生の二人が共通点を通して仲良くなっていく。等身大の青春物語。

1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと) この物語はw主人公の物語であり、片方の主人公については高校1年生、web小説作家であると素性が明かされているが、もう一人の主人公については名前と同じく女性であることのみ。しかし二人の少女であり、青春物語とあるので、同年代なのではないだろうか? ジャンルは現代/青春ドラマ。学校などが舞台なのか。もしかしたらネット上が舞台なのかもしれない。 二人の好きとは一体何を指すのか、非常に気になるあらすじである。 2 物語は 周りにウェブで小説を書いていることを隠している主人公の日常から始まっていく。 彼女にはあるサイトで気に入って読んでいる作品があった。 そしてその作品の作者と交流もしているようだ。年が近いこともあるのか、とても気が合うようだ。 あらすじでの好きとは”小説を書くこと”なのだろうか?ここからどんな風に展開されていくのか気になる出だしである。 3 世界観について 現代であり、日常が舞台となっている。 学校も出て来ることから、何か重要な意味があるのではないかと想像。 主人公に訪れたちょっとした非日常から、ある出会いを果たす。 ちょっとドキドキする展開のある物語である。 4 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。 *情報を明かさないことによる意外性。あらすじだけでは分らなかった部分に意外性があり、読んでみなければわからない部分があるというのが、とても良い。 *もう一人の主人公との出会いは、ほんの小さな非日常。それがあったからこそ、二人は急接近したわけだがストーリーの流れがとてもナチュラル。単なる偶然ともいえる。 *主人公の性格が、言動よりわかって来る。 説明されるのではなく、人とのやり取りの中で自然と伝わってくるのがとても良い。 *その年代らしさがある。 性格によって変わるとは思うが、正義感というのは年と共に平穏で居たいという気持ちの方が勝り、段々と隠れていくように思う。学生のうちは、正しいことは正しい。間違っていることを間違っていると言えるものだと思う。それは、社会に出ると空気を読んで黙る方が得だったり、自分を守れたりという経験を積むせいもあるのではないだろうか? 5 お奨めしたい部分 両サイドで描かれており、互いがどんな風に相手を想っているのかわかって来る。つばきからすると、何故一般生徒の自分を生徒会長である聖奈が知っているのか謎。しかしその理由は聖奈サイドによって明かされていく。ちゃんと納得できる理由があったのである。二人はある出来事をきっかけに急激に仲良くなっていく。そして連絡先を交換するまでの仲になるのだが互いに秘密にしていることもあるのだ。互いに何を考えているのか分かる部分が見どころだと思う。 6 物語のその先を想像して P11まで拝読。どのように二人が自分の秘密を明かすのかは想像できない。しかし物語は自然体に重点を置いていると思われるので、ちょっとした事件が起きるのではないかと想像する。例えば小説のメモを見てしまうなど。きっかけはホンの些細なことで二人の仲が更に深まるのではないかと予想する。 あなたも是非、お手に取られてみてくださいね。お奨めです。

5.0
2
crazy's7

想い出の詩

『身に覚えのない罪を糾弾するんだ』――それは本当ですか?

サトウ・レンさんの作品は「読み手の考える空白を与える」という素晴らしい表現の小説が印象的です。「これが正解だ」という書き方をされません。読む人により感じたものが「あなたにとっての正解」と思わせてくださいます。『悪』を表現されているようなあらすじから、非常に心惹かれます。 孤独に暮らす男の許に、「返して」と言う少女が現れる。そこから、男は懐かしい人に似た少女から、古い記憶を思い出す。 彼には昔、友人と呼ぶには奇妙な感情を思わせる、ある男と青春を共にしていた。友人以上の、その関係を口にするのは難しい距離感だった。 「彼」にも「俺」にも名は表記されていない。「俺」の視線で話が進みます。 作中に出る「アルチュール・ランボー」が、「彼」のモデルと言うか鏡に感じました。そして「俺」は、「アルチュール・ランボー」が影響を受けた革命思想の持ち主である、「ジョルジュ・イザンバール」がモデルである鏡だと思われます。(共にフランス人で、ランボーは詩人です)この2人の話を書くと長くなるので、興味があればご自身でお調べ下さると嬉しいです。 ※これは、私の思った事でありサトウ・レンさんの意図する設定とは違うかもしれません。 「彼」が「天才」である事に嫉妬にも似た思いと屈折した感情で、友人関係を続ける「俺」。サッカー推薦で入学し、成績もよく、多くの人の輪にいる「彼」。そんな「彼」と「俺」が出会ったのは学校の図書室。 詩に興味がある訳でもない「俺」が、「若き天才」と呼ばれたランボーの詩を読んでいたのは気取った姿を取りたかっただけです。小説が好きで、特別詩が好きだった訳ではなかった。 「俺」は、「彼」に嫉妬も羨望もない態度で接する。その態度が珍しくて、「彼」が「俺」に興味を抱いたのでしょう。 過大な期待を向けられて「天才」と呼ばれる自分にしか興味ない友人しかいない「彼」にとって、「俺」は「天才」として自分を見ない安らげる存在だったのでしょう。「彼」は「俺」の本当の心の中を知らないのですから。 『繊細で、脆く、とても傷付きやすかった』と、「俺」は「彼」を思い出します。詩に興味を持つ「彼」に反して、詩よりも好きだった小説に戻った「俺」 成績も良かったのに、大学には行かずにフリーターを経て営業の仕事に就いた「彼」、大学に通い「絶対に売れる作家になる」という謎の自信を抱え秘かに小説を書く「俺」。互いに地元に残っていたので、高校を卒業しても交流は途絶えなかった。 「誰かの言葉を味わうほうが僕は好きだから。特に、書きたい、と思ったことはないかな」という彼の言葉に、小説を書く事を黙っていた。それは多分、「俺」が彼に対するコンプレックスからなのでしょう。小説を書いてる自分を、「彼」は馬鹿にするかもしれない、と思ってしまったからでしょう。 しかし大学卒業後就職した先はブラック企業で、「三年は我慢しなさい」という母の言葉を守れず辞めてアルバイトをしながら、「俺」は再び小説を書き始める。 自分にはない彼が持っている「才能」に嫉妬した「俺」は「彼」を避けようとするが、「彼」は交流を続ける。 結婚したことを報告して、妻を「俺」に紹介する。子供が出来た事を報告して、子供を交えて奇妙な四人での交流を続ける。 そんな中、「彼」は「俺」に誰にも黙って秘かに詩を書いていたことを告白する。そして、もう十分満足したから詩を書く事を止める、と。「彼」の書き留めた詩が綴られたノートを託される――「僕に詩と出会わせてくれたのは、きみだから。決別として詩を贈るなら、きみ以外には考えられなかった」という言葉と共に。 読んでいる方に、作家を目指している人は多いだろう。そして何かの賞に落ちるたび、誰かが作家になった時、「いつかは自分も必ず選ばれる」と心の奥で思っているだろう。「俺」の気持ちが、自分の心のどこかに刺さるだろう。「どうしてあの人に勝てないんだ」と思っているかもしれない。 サトウ・レンさんが本作を「俺」の一人称で書かれたのは正解だ、と、私は思いました。「俺」を自分に投影させて読み手に強い共感を抱かせる事に、成功していると思われるからです。そして、「彼」の本心が分からないからこそ、この物語は読み手に思案させて惹きつけるのです。 冒頭の少女は、「彼」の成長した「娘」だった。「彼」は「俺」が、『今まで抱えていた憎しみの感情のすべてを彼にぶつけて、もう二度と会う気がないことを告げた。』夜に死んでしまったからだ。 「彼の娘」は言う。『大切なひとを失ったから、俺は死を選ぶ』と父が言っていたのは、「俺」に拒絶されたからだと。だから、「お父さんを返してよ」と「俺」に迫ったのだ。 父である「彼」と「俺」が、友人以上の関係――恋愛関係にあったのではないかと。 私は、簡単にこの二人の関係が「BL」や「恋愛」だと言いたくありません。友人以上の何かであったことは、確実です。ですが、愛や恋なんて陳腐な言葉で終わらせるのは間違っていると、もっとその奥の何かではないかと思いたいのです。 繰り返し使われるフレーズがあります。その中の言葉です 『誰かが急に僕の目の前に現れて、身に覚えのない罪を糾弾するんだ。それを嘘だと思っているのは僕だけで、それこそが真実なんじゃないか』 それがまさに、「俺」が対峙している状況です。 「彼の娘」は昔自分を抱き上げてくれた「俺」を目の当たりにすると、『自分のことをしっかりと見てくれる安心感がある』と朧に思い出す。そうして父親似の自分が現れて、「娘」の顔を見た「俺」の様子を見て察したのでしょう。忘れようとしていた、父である「彼」を。 『自らにまで嘘をつき続けた哀れな男』の、自覚していなかった嫉妬と羨みの中に隠された、「彼」に抱いていた「想い」を「俺」が思いだした事に。 まるで、モーツアルトとサリエリです。 私はこの作品の中で、好きな文があります。 『今日は暑い。暑い夜におかしくなって、あいつは死んだんだ、なんてよく分からない理屈を付けて。』 そうです、カミュの『異邦人』を彷彿させる一文です。 繊細だと知っている「彼」に、罵倒して自分の心の醜いものをぶつけ死なせてしまった「俺」の憐れないい訳です。 作中の短い「彼」の言葉から、「彼」の想いを察するのは難しいです。 ですが、自分を変えた「詩」から「俺」の存在。「彼」が詩を書かなくなったのは、傍にこれからも「俺」が居てくれると思ったのかもしれない。それは、叶わなかったのですが。 9,686文字の作品の中に、「俺」や「彼」の心があちらこちらに隠れています。 私が気付かなかった「想い」を、是非見付けて下さい。 タイトルにある、『想い出の詩』 それは、「彼」が書いて世間から称賛された詩なのか。 出逢ったきっかけのランボーの詩集なのか。 タイトルすらも、読む人により受け取りが変わってくるでしょう。 とても素敵で、読み手に楽しみを与えてくれた作品でした。是非、この素晴らしい作品が皆様の目に留まりますように。

5.0
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七海美桜@小説書いてます

有名に、なりたいですか?

『悪』という概念は、他人が分かるものではないのかもしれない

とても面白い。 読んで最初に感じた感想です。物語は、『ぼく』が『二番』さんと呼ばれる『きみ』に語りかける、もしくは過去を思い出しながら手紙を書いているようなスタイルで構成されています。 ノベルアップ+で、『悪』をテーマにした個人企画に参加された作品です。『悪』をテーマにしているという事で『善悪』を問う作品が多い中、とても切り口がイレギュラーな作品でした。 『ぼく』は淡々とした感情のない言葉で、『きみ』との出逢いから今までを思い返すように話します。『ぼく』の淡々とした口調が、最後――自分の過去になってしまった恋心を匂わせた時に一瞬だけ崩れるのが、また素晴らしい。 そうして、『きみ』が檻から出るのを待つ『ぼく』の話は終わります。 読んで、『悪』は何かを考えましょう。 人を殺めた『二番』さんが悪、だと思われる方が多いのではないでしょうか? 『二番』さんは、どうして罪を犯してしまったのでしょう。『二番』さんが羨んだ存在は誰もが羨む光るステージからもう降りて、またステージにいた時は『二番』さんは『彼女』に精神的に頼られていたのに。 有名に、なりたいですか? タイトルにもなっているフレーズに、『二番』さんは頷きます。 ですが、よく読んで下さい。 『そんな言葉に頷くきみと、首を横に振る彼女がいた……。』 僕が形容している『彼女』とは、『リナ』さんです。『きみ』とは、『二番』さんです。 そして、ふたつの檻、とあります。二番さんは現在(血縁者以外が面会できるので)精神鑑別所に投獄されているのだと分かります。 では、もう一つの檻とは? もうひとつの檻には、きっと――『精神が崩壊した』『二番』さんの本当の人格が閉じ込められている、のでしょう。 そして、頷いた『きみ』と首を横に振る『彼女』とは。 ここには、『ぼく』と『二番さん(きみ)』しかいないのです。 一見すると『リナ』と『二番さん』が同一人物ではないかと、勘違いしてしまいます。ですが、二人は別の人物として存在している箇所がいくつもあります。間違いなく『二番』さんは『彼女』を殺害してしまったのです。 『ぼく』が問うたのは、記憶に居る『リナ』と刑務所に居る『二番さん』に、なのでしょう。 『彼女(リナ)』さんは、ステージを下りて幸せを感じていた。ステージにいた時より輝いた笑顔をしている姿を見た『ぼく』は、ステージを下りた『彼女』とこの時に会えば好きになっていたと述べています。それほど、『普通の生活』を過ごす彼女の顔は、輝いていたのです。だから、『彼女』は有名になりたくなかった――記憶に残る『彼女(リナ)』は首を横に振ったのです。 二番さんは、『みんなの』一番になりたかったのでしょうか?『誰かの』一番になりたかったのでしょうか? 嫉妬というのは、人間に元々備わっている『悪』だと言われます(性悪説)。理性でどうにかしようとしても、制御できる人はほとんどいないでしょう。 『ぼく』の視点ですので、二番さんの心の中は分かりません。『ぼく』も推測は出来るとありますが、問うた言葉の真意を深く考えるのは辞めました。 そうです、答えは彼女の中にしかないのですから、『ぼく』がどんなに考えても『二番さんの考え』は分からないのです。 『悪』は、二番さんなのでしょうか。 『二番』さんが憧れた『彼女(リナ)』なのでしょうか。 有名になりたいと思ってしまった『二番さんの感情』なのでしょうか。 二番さんの執念めいた思いに気付かなかった、『リナ』なのでしょうか。 それとも、何もせず成り行きを見終えた『ぼく』なのでしょうか。 読む人の数だけ、色んな感想があると思います。『二番』さんが檻から出る事を待つ『ぼく』ですが、『心の檻』から『二番』さんが出る事が出来るのでしょうか? 非常に切ない余韻が残る、素敵な作品です。

5.0
0
七海美桜@小説書いてます

ふるさとタクシー

誰にとっての『悪』なのか、『善』なのか。一度考えてみたくなる作品

ノベルアップ+の『悪』をテーマにした、自主企画に参加された作品です。 この作品は、日本だけでなく世界をも震撼させた某事件の施設があり、現在は市町村合併でなくなってしまった村に、当時珍しい名前の施設が作られた団体をベースに書かれた作品です。 主人公は不幸な人生だと思っていますが、『自分の不幸』は自分の中で『世界で一番自分が一番不幸』と考える事が多いです。タクシーの運転手(正体はそうではないかもしれませんが、便宜上ここではそう表現させて頂きます)はそれは違うと主人公に分からせます。主人公の思い出の地にタクシーを走らせて、彼の人生を思い出さそうとするのです。 特別な事がなくても、家族に囲まれ最愛の妻がいて、生きてきた人生が不幸な訳ではないと。自分の暖かな記憶を忘れてしまったのが、主人公にとって『不幸』だったのです。 この作品は、『悪』が何か明確には書かれていません。 普通に読むと、死のうと考えていた主人公にタクシーの運転手がもう一度生きる意思を見出した、どちらかというと『希望』の物語です。 タクシーの運転手は、何者なのでしょう。主人公の『心のふるさと』を見えさせる、催眠術や心理操作を使ったのでしょうか。それとも、本当に主人公の『心のふるさと』に連れて行ってくれたのでしょうか。 もしそうなら、これは魔法です。主人公がタクシーの運転手の言葉を信じても仕方ありません。 そして、この作品が表したい『悪』は何なのでしょうか。 もし例の某団体を模した団体の『光と命の国』に勧誘したのなら、この団体の未来は『悪』です。つまり、タクシーの運転手は主人公を悪に落とすだろう『悪の使い』になります。 ヒトコワ(ホラー)のジャンルになりますね。 古い事件の為、例の某団体が起こしたこと、施設、思考を知らない人には分かりにくいものかもしれない事です。ですが、私は個人的に好きな作風です。 苦しい時に助けてくれたものは、自分にとっては『善』です。たとえ全世界が『悪』だと非難しても、自分にとっては『善』なのです。 価値観の違いは、冷静になって見つめ直さなくてはいけない。 自分の幸せを大事にするのか、周りの人の幸せにするのが大事なのか。 人間は、弱い生き物です。弱っている時に囁かれれば、それに縋ってしまいます。 悲しくもあり、その後が気になるとても興味深い作品でした。 ぜひ、お読みになって『悪』とは何か考えてみてください。

5.0
0
七海美桜@小説書いてます

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