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ジャンル:Sf

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大崎町ハッピーライフ

静かな田舎で憧れのスローライフ

 長閑な田舎の町で念願のひとり暮らしを始めた人が、でも突如発生した不思議な自然現象に悩まされるお話。  綺麗にまとまったSFショートショートです。本当にきっちり過不足なくまとまっているというか、サゲの部分まで読んだ瞬間すとんと腑に落ちる、納得感のようなものがとても心地よい作品でした。逆説、このワンアイデアがぴたっとハマる感覚がショートショートの魅力そのものなので、どうしても内容に触れられないのが困りどころです(ネタバレになるので)。  というわけで、たぶん本筋からは大幅に逸れた感想になってしまうのですけど、『自然がいっぱいの静かな田舎』の書き表し方が興味深いです。冒頭、主人公の目から見た田舎のいいところがたくさん語られているのですけれど、でも二話目冒頭、それとは真逆の方へと向かっていく町そのもの。なるほどさもありなんというか、当の自治体や商工会からしてみれば、自然がいくらあったところでただ不便なだけで何にもならないというこの現実。それぞれの思惑が噛み合わないというかぶつかり合うというか、このうまくいかない感じがほんのりやるせないお話でした。

5.0
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和田島イサキ

わたしはわたしではなくだれかでもない

愛のために曝け出せる何かを誰よりも持っている人

 交際相手の男性に対して、本当の自分を包み隠さずすべて打ち明ける女性のお話。  怖い話です。ジャンルとしてはSFとのことですが、個人的にはホラーであったりサイコスリラーでもありました。具体的にはヤンがデレている感じがあります。愛ゆえの暴走。とはいえ人には言えない秘密を抱えたまま付き合う、つまり最愛の彼を騙したままでいる彼女の気持ちもまあわからなくないというか、いえすいませんやっぱりわかりません。ほらあの、手段がね? もっと穏便にさあ、ね?  約4,000文字という分量のコンパクトさもあり、たぶんこの先はどうあがいてもネタバレになります。ご容赦ください。  強烈なインパクトのあるお話でした。特に最後、『彼女』の物理的な外見の印象が消えません。ゾッとするような恐ろしさがありながら、でも終盤付近の彼女の振る舞いや言葉に謎の色香のようなものを感じたりして、なんだかとてもドキドキしている自分に気がつきました。やだ、どうして……知りたくなかったこんな気持ち……。  つまるところこの物語はアイデンティティのお話、彼女自身が最後に問いかけた「わたしってなんなんだろう」のひとことに集約されると思うのですけれど、でもこれ、中盤までに想像していた「なんなんだろう」と微妙に違うという、その予想外の裏切りが最高でした。  あれだけの数の『借り物』の姿を持っている以上、どうしても『本物の自分自身を見失った空虚な存在』をその正体として予想してしまうのですが、さにあらず。確かに外見的にはだいぶスッカスカになっちゃいましたが、でも個性自体はありすぎるくらいで、だって他にこんな人いません。つまり人のフリをしているうちに本当の自分がわからなくなったとかではなく、彼女は終始一貫して「本当の自分」を持ち続けていて(最初からそれを見せると言ってましたし)、だから欲しいのはあくまで「なんなんだろう」の答え。これは何。この世にふたつとない何かであることはわかる、でも一体それってなんなの、という、自分からも他者からも「わたし」を定義することができない、異端の個性ゆえの苦悩が胸に突き刺さるかのようでした。  彼の見つけた彼女の個、姿は変われど「いつもと変わることがない」「熱のこもった潤んだ瞳」が好きです。情緒と色香のたっぷり詰まった、心の底からゾクゾクさせてくれる作品でした。

5.0
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和田島イサキ

今にも流されてしまいそうな橋の上で

タグの欄に威風堂々鎮座する「言葉遊び」の力強さ

 なんらかの『皮』を被り人間に擬態する人ならざる何者かと、その友人との対話劇。  すごいものを見ました。タグの「言葉遊び」というのはまさにその通りなのですが、でも「言葉遊び」という語の持つ軽いイメージとは全然かけ離れているというか、遊んでません。ガチです。  といっても、序盤から終盤手前までにかけてはまだまだそんなでもないというか、しっかり物語しながらの(した上での)それであって、実はまだ本気の半分も出してません。例えば主人公は生来音のない世界に生きており、ゆえにその語彙には擬音語と擬声語が存在せず、代わりに擬態語のみがあるという、その設定がそのまま本文に影響する(一人称体で書かれているため)という制約。加えてそもそもこの擬態語というのが、このお話のテーマである『擬態』から来ている、というところ。こうして説明してしまうとなんだか凄みが霞んで見えてしまいますが、でもこれが流れるストーリーの中で自然にこなされているという、その独特の迫力はどうにも伝えようがないのでぜひとも本文で味わってもらいたいです。  が、先述の通りこのあたりは所詮前座のようなもの、本当の「言葉遊び」の恐ろしさはやはり最終盤です。  堰を切ったか、あるいは容量の限界を超えて一気に溢れ出したかのような、その瞬間の強烈な爽快感。作品そのもののプライオリティが逆転し、言葉遊びが物語を上から支配してしまうようになる、その転回とその先の振り切り具合。文字通りの飛躍が、決してあり得るはずのない主客の転倒が、でも理屈でなく脳の芯の方で納得できてしまう、その恐ろしいまでの酩酊感。すごいです。なにがなんだかわからないというか、こんな読書体験は初めてでした。

5.0
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和田島イサキ

神田ベリーは何か怪しい

静と動のコントラストによる衝撃波で体が真っ二つにされた

 同級生の女子、神田ベリーのことが気になる男子生徒のお話。  ジャンルはSFとありますが、ごりっごりのハードSF的なものではなく、どちらかというとある種の不条理コメディのような柔らかな口当たりの掌編です。むしろ学校生活とか思春期とかの要素の方が強いような印象。  前編後編の二部構成になっているのですが、いざ読んでみればなるほど納得。内容が全然違うというか、なんかもうものすごい落差で吹き飛ばされたような感覚です。前半の掛け合い劇、男子生徒二名のコントにも似たゆるいやりとりから、後半は一転して怒涛の急展開へ。そのまま一気に駆け抜ける強烈なドライブ感に、なんだか酩酊したような気分にさせられました。  最後まで読んで呆然として、あまりの風速に「結局何だったんだ今の大嵐は」みたいな感覚に陥るのですけど、しかしとどのつまりというかこの物語は結局のところ、主人公が最序盤に放ったひとことに要約されるのだと思います。「その可能性はある」。読後に振り返った時のこのひとことの、最初はあまり気づかなかった(でも実はしっかり効いていた=学校生活のイメージが強いのは絶対これのせい)この厚み。あの子が気になる、という小さな感情が、実は物語世界の土台そのものを規定しまえるほどに強いという事実。  絵的なイメージの明瞭さというか、文章から想起される光景がくっきりしているところが好きです。気になる女の子に、その秘密。そして世界の命運を左右するレベルの冒険。ちょろっと出るだけの友人なんかも含めて(竹田くん好きです)、絵面がまさに『思春期の男の子の夢そのもの』なところがもう最高に気持ちのいい作品でした。

5.0
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和田島イサキ

偽装人形の眠り

個というものと人の形のお話

 高度に発達した産業技術により、実質的に人をまるごとそっくり複製することが可能になった世界のお話。  SFです。一万字という短い分量の中できっちり世界を描いて、なおかつキャラクターも立っていてアクションもあって、そのうえ謎めいた事件の発生から解決までというミステリ的なストーリ展開をこなして、挙げ句の果てには主題までゴリゴリ掘り下げてしまうという非常に贅沢なお話。なんだこれは……わたしはいま何を見せられたんだ……?  まともにおすすめポイントを書いているとキリがないので趣味の話だけしますと、このお話は冒頭で予告されている通りドッペルゲンガーのお話です。正確にはドッペルゲンガーと渾名される、あるいはそうなぞらえられるような存在たちのお話。〝彼ら〟そのものが本作唯一の主人公で、つまり二話目がどストライクでした。ジークよりも、マルグリットよりも、いやそこを主人公として読むと自動的に、二話目に書かれているそれにふんわり取り込まれるみたいな、この個の境界のおぼつかなくなる感覚が最高です。  なんだってこんなことができるのか。主題の線の引き方、作中の社会と読み手が実際に生きている世界の、その接続の力加減が絶妙なのだと感じます。生態情報や行動情報の取り扱い、これらに対する懸念や脅威自体はそのまま現代にも通じるもので、それをてこにというかバールの先っぽみたいにしてこっちの認識をグリグリこじって決壊させてくる、そのパワーが実に爽快でした。  人の形を離れたところでアイデンティティを管理するお話であり、アイデンティティを運用するのにどうしても人の形を追い求めていく世界の物語。胸に染みて、しっかりお腹に溜まる作品でした。

5.0
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和田島イサキ

終焉によせて

地球の終わりの小さなドラマと、それを眺める無機質な瞳

 崩壊寸前の荒廃した地球で、ひとりの男が未知との遭遇を果たすお話。  SFです。実を言うと上記の要約は少し語弊のある表現で、正確には「未知がひとりの男との遭遇を果たす」お話です。視点保持者は男の方でなくこの未知さんの方で、つまり「人ならざる何者かの目を通して見た世界」というのがこのお話の最大の持ち味、魅力の根源だと思います。  というのもこの未知さんの個性というか、存在そのものがすでにして面白い。どうやら人間とはまるで生態の異なる知的生命体で、それを端的に表現できる単語(名称)がありません。ただし特性や特徴はしっかり作中に書き表されており、したがってそれがどういう生き物であるか、ざっくり外側からのイメージを想起すること自体は難しくないのですが。  この作品、完全にその未知さんの一人称視点によって書かれている、というのが肝で、つまり価値観も哲学も宗教も、それどころか生物としての様態からして異なる生物の、その頭の中を覗く形になるわけです。  この感覚、掴めるようで掴めない未知さんのものの考え方を、あれこれ想像しながら追いかけていく読書体験。この味わいが実に絶妙で、不思議なわくわく感がありました。その上で、さらに描かれる『ひとりの男』の情動や心情を、この未知さんのフィルターを通して見ることの心地よさ。なんとも説明の難しい、独特の手触りに悶えます。  巧妙な道具立てと、それにぴったりはまった使い方の光る、物悲しくも優しい終末SFでした。

5.0
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和田島イサキ

ネコ

キャッチコピーにもなっている例のセリフのものすごいパワー

 とあるカップルが、拾ってきたネコを飼い始めるお話。  全編にわたって火力の高い、笑いどころ満載のコメディ作品です。強烈な冒頭のインパクトから、濁流に巻き込むみたいにグイグイ引っ張っていく展開の妙。いや会話や雰囲気自体は大変ほのぼのしているのですが、でも起こっていることがあまりに異常すぎるというか、とにかくものすごいパワーでまったく流れに逆らえません。  一見すると不条理、というか、最初はある種の不条理系コメディだと思っていたものが、でおその不条理さをそのままにしっかり理屈づけられ、そのうえぐいぐいスケールを大きくしていく。この流れ、実直かつ間違いのない物語性の展開が、とても鮮やかで半ば感動すら覚えるほどでした。  内容に関しては、ここではあまり詳しくは述べません。コメディですし、ここで多くを語るのは野暮な気がしますし、読めばわかるというかそれがいちばんいいので。とりあえず、ネコのお話です。どう見てもネコじゃないような、でも読み終えるとこれぞまさしくネコだったような、そんな気持ちにさせてくれる不思議で爽快な作品でした。

5.0
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和田島イサキ

人の振り見てメランコる明日の身

なんかいろいろあった感じの未来世界の、平和なひとコマ、のような

 いろいろ技術の発達した未来の世界、ボクっこ電脳アイドルとその連れ合いが、スイーツビュッフェで甘いものをもりもり食べるお話。  SFです。いわゆるサイバーパンク、またタグによれば『ポストアポカリプス』とのことで、でも一見そうは思えない物語の導入というか、話の展開のさせ方が魅力的です。  ボクっこでフリフリのロリータ趣味で自撮り大好きという個性の塊みたいな電脳偶像さんと、その連れ合いというか実質保護者役みたいな立場の主人公。個性的なふたりの対話劇といった趣ですが、でもその会話の中から徐々に見えてくる世界観。結構ディストピアしてるっぽい現実と、でもいまいちそんな風には見えない能天気なふたりの、愉快な日常のひとコマみたいなところから繋がる終盤の大オチ。組み上げたキャラクターと世界設定を、綺麗な流れに乗せて見せてくれる作品でした。  意味深長なタイトル、というか、読み終えた後に再び見返すとちょっと味わいのあるタイトルが好きです。それとは対照的に、わりとストレートな感想そのままである章題の方も。

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和田島イサキ

第4惑星の生存

宇宙ヤバイ

 宇宙を彷徨う不思議な天体、なんか透明なすごい何かがなんかすごいことになるお話。  説明できません。壮大なスケールのSF、といえばきっとそうなのですけれど、それ以上のものというかもっと大きくて単純な何かのような、とにかくなんだかものすごいものを見ました。すごい。ヤバイ。宇宙ヤバイ。  宇宙に関する逸話を見聞きするとき、そのあまりの規模の桁違いさ加減に頭がぽかーんとしてしまうことがあるじゃないですか。それです。「そういう作品」ではなく、〝それ〟をそのまま文字で持ってきている、この作品はそういうお話です。文章は読みやすく、書かれている内容も理解できないほど難解なところはないのに、でも脳裏に再生される物語があっさり認識の上限をぶっちぎってしまう。書かれていること自体は理解できているのに、でも理解不能の存在と相対させられてしまう。この感覚。宇宙に想いを馳せたときの足元がソワソワする感じ、〝それ〟をそのまま文字列の中の物語性で構築してしまう。  大変なものを見ました。「読んだ」というよりは「体感した」という感じで、もう皮膚感覚のレベルで面白いです。終盤の展開にはもうどうにも言いようのないカタルシスがありました。こればっかりは正直まったく説明できる気がしないので、是非とも実際に読んでみてください。

5.0
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和田島イサキ

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