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カクヨムミステリー短編完結

きいろい服のおっさん殺人事件

 不可解な最期を遂げた全身黄色コーディネートの中年男性のために、彼の友人であったとある一匹の猿が、事件の真相を暴かんと奔走するお話。  ミステリです。殺人事件の犯人・手段・動機を解明していく謎解き話。タグにある通り「まさかの殺人事件」で、タイトルもまさしくそれらしいのですが、それでも衝撃が拭えません。えっこのキャストで殺人事件? ていうか猿だよ探偵? 大丈夫?(諸々含めて)  紹介文からもなんとなくわかる通り、なんらかの作品をいろいろこう、尊敬の念を持ってなんやかやした感じの作品のようです。実はその元のなんらかの方をさっぱり知らず、読み終えたあとなんとなく検索して初めて知ったくらいですので、登場人物や舞台設定に関してはどう触れていいものやらさっぱりわからないのですが、それでもこの世界にゴリゴリのマーダーケースを持ってくることの異様さは伝わりました。だって猿だよ探偵?(二回目)  本筋の部分、謎解きや犯人探しに関しては普通にガチなのが凄かったです。嘘でしょ真っ当なミステリしてる……猿なのに……。主人公の覚悟というか、存外にハードコアだった大詰めの展開がよかったです。なんとも言いようのない不思議な圧を感じる怪作でした。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/25
  • 投稿日:2021/11/4
カクヨムミステリー連載:6話完結

変幻探偵カメレオナード 〜対決! 怪人二万面相〜

 謎の怪盗『怪人二万面相』の巻き起こす事件に、探偵として立ち向かう天才少年のお話。  ミステリでありSFです。児童文学というか児童向け推理小説のような、なんだったら少年漫画のような趣すら感じる、明快かつ王道の冒険活劇でした。  作品全体の雰囲気というか単一パッケージとしての在り方というか、狙ったところにきっちり収める徹底した仕事ぶりのようなものを感じます。主軸のミステリ部分は難しすぎないながらもしっかり推理パートを設け、SF要素に関しても分かりやすくワクワク感の高い未来ギアがどんどこ登場し、なにより話の真ん中で活躍するのはみな少年少女、大人たちはしっかり脇役然としているかちゃんと敵としての役割を果たすという、このガチっぷりというか仕事の行き届きぶり。昨今、どうにも一手捻った使われ方をされがちな「ヒーロー」的な存在を、でもここまでまっすぐしっかり書き通したお話というのは、それだけで本当に気持ちがいいです。  またミステリとSFというだけでもそうなのですけれど、結構いろんな要素を作中に取り込んでいるわりには、内容がすっきりしているのもすごいです。これだけいろいろあったら勝手にぶつかり合って渋滞しそうなものですが、ピシッと綺麗な一本道になっている。といって決して平坦なわけでなく、例えば推理パートでの立場の逆転のような一捻りもあったりして(ここ好きです)、非常に贅沢というか読後の満足感がすごいです。  一話完結の読み切り少年漫画のようなまとまりの良さ。でもそのまま連載作品にもできそうな、しっかり作られた安定感のある設定たち。細やかな仕事ぶりを感じる、爽やかでワクワク感のある作品でした。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/25
  • 投稿日:2021/11/4
カクヨムSF連載:2話完結

アンドロイドはただ人間の夢を見るか

 人間と同様の感情や記憶を処理するだけの知能を備えたアンドロイドの、お仕事中の考え事もしくは雇い主との対話のお話。  濃かったです。こういうのはピタッとハマると本当に効くというか、作者の手のひらでころんろころん転がされたような感じが最高でした。いや誤読も多分に含まれてるかもわかりませんが、でも自分が楽しんだので気にしません。こういうお話はガッツリ胃もたれ起こすくらいが一番好みです。  ジクジクこちらの内側を溶かしてくるかのような、毒みたいな絶妙な邪悪さが本当に意地悪で大好き。主人公の強引な断定っぷりや言い訳くさいところにいちいち共感してしまって、いやこれは因果が逆というか〝共感してしまったからこそそれがそのように見える〟というもの、つまりは完全に自分の映し鏡として読んでいるわけで、とどのつまりは踏み絵です。だいたい同族嫌悪みたいなもの、自分の嫌なところを勝手に他人に重ねる行為。彼女に対して覚えた引っかかる点が、そのまま減衰ゼロで百%自分のところに返ってきて、つまりノーガードの殴り合いをしているつもりがただ鏡に向かってパンチを繰り出していた、この踊らされてる感(勝手に踊ってる感)の気持ちよさといったら。  そんな自分本位な読書をやめられない自分と、主人公の袂が分かたれた第一話終盤。客観的な状況としても事件性の高い展開。よかった自分ならさすがにここまではしないもんね、と、そう思えたらどんなに楽だったか。むしろ逆で、結局何ひとつ行動に移せない口先ばかりの自分を浮き彫りにされたみたいな、そんな寂しさと悔しさがとてもたまらん感じの作品でした。濃かった!

5.0
  • 作品更新日:2020/7/25
  • 投稿日:2021/11/4
カクヨムミステリー連載:3話完結

大正永劫怪奇譚

 大正期の日本を舞台に、資本家の男性が不可解な事件に巻き込まれていくお話。  大正浪漫、いや『浪漫』という華やかな感じではないので実質ただの大正というか、とにかくおどろおどろしい話でした。ホラー、あるいは怪談のような伝奇のような。タイトル、キャッチ、紹介文の時点ですでに雰囲気バリバリ、本文に入ってさらに倍という、この徹底っぷりが印象的でした。  いつまでたってもお嫁さんのお腹の中から出てこない赤ん坊と、ひとりひとり存在ごと消滅していく友人たち。その謎を解明するというか、この邪悪でおぞましい何者かの根源に迫るため、猟奇的な曰くのある離れ小島へと向かう、というお話の筋。  ひたすら不気味な出来事ばかりが起こる中で、とどめとばかりに雪崩れ込んだ第三話の展開が特に好きです。あの孤島の、次々目の前に広がる悪夢のような光景。その描写が非常に鮮烈で印象深く、たとえ夢でも行きたくないなと心底思いました。  夢と現実の混じり合う世界で、おぞましくも圧倒的な怪異に翻弄されるようなこの感覚。古い時代に特有の不気味さというか、独特の雰囲気にとっぷり浸らせてくれる作品でした。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/25
  • 投稿日:2021/11/4
カクヨムその他連載:4話完結

蝕む月

 ホームレスとしての生活を送る主人公が、他人の免許証を手に入れたことをきっかけに、逆転のためのひと勝負に打って出るお話。  しっとりとした手触りの、シリアスな現代ドラマです。あらすじからして上手いというか、綺麗に要約されているのにしっかり読みたくなるポイントが盛り込まれていて、その上でこのキャッチコピーというのがまた最高でした。ちゃんとあらすじとは違う仕事を担っている感じ。いきなり本文以外の枝葉について語ってますけど、でもこの辺は作品の顔にあたる部分というか、のっけから期待が高まった状態で読ませてくれるお話って本当に好きっていうか人間は顔が八割だと思います。  この先、思いっきりネタバレになりますがご容赦ください。物語の核心、きっと一番美味しいところに触れてしまっているのですが、でもそこが一番好きなので。  結末というか物語の帰着点というか、つまりは母の顔と月に象徴される部分なんですけど、その答えが本当に好きです。このお話は主人公が別人になりすまし、それは自分の利益のための行動とはいえ悪意をもって他者を騙そうというつもりではなく、むしろ誠実に接することで少しずつ認められていく物語なのですが。最終的に正体が明らかになってなお受け入れてもらえる、その理由がもう本当に最高でした。  彼の積み重ねた努力や誠実さは、もちろんまったく無意味ということはなくそれがあればこそというのはわかるんですけど、でも直接の要因では決してない、という点。ただ彼が善良でもうひとりがそうでなかったからと、そんな単純な話には終わらずもっと深くてどうしようもない、まるで切っても切れぬ縁のような何かに最初から支配されていた関係性。加えて、その上で下された母の決断。本当に自分の利益ための共犯関係。その嘘のなさと覚悟の深さに、ただただ痺れるばかりでした。  最後の一文。はっきり捨てられたばかりか、実は最初からずっと曖昧だった「私」の存在。もしかして彼は幸せを得るよりもまず、ただそれを失いたかったのではないかと、なんだかそんなことを思わせる強い幕引きでした。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/25
  • 投稿日:2021/11/4
カクヨムSF連載:2話完結

塵迅パルス

サイバーパンクSF。荒廃した近未来社会、運び屋の少年と、不思議な少年との出会いの物語。 どストレートな少年の成長物語でした。舞台設定が好きです。お話の主題に対して、それをそのまま体現したかのような世界観。まるで鳥籠のような鬱屈した世界の片隅、まだ見ぬ空を目指して駆ける少年。まさにロマンというかこれぞジュブナイルというか、もうこれだけでご飯三杯いけちゃうやつです。 主人公のダストくんの性格、特に他者との関係性から浮かび上がる人柄が魅力的でした。なんというか、兄貴の前だと妙にかわいい。運び屋やってる割には全然すれてない、という、彼の性格がありありと伝わってくる。それでいて、パルスくんとの関係ではちょっとお兄さんっぽい。好きです。 結末はもう、最高でした。このふたりの道行に幸あれ。

5.0
  • 作品更新日:2019/12/30
  • 投稿日:2021/10/5
カクヨムホラー連載:5話完結

指切りの契

 連続殺人事件の発生する町で、現場付近に座り込んでいた少女をなぜか拾ってきてしまった『僕』のお話。  重苦しい不気味さの光るホラー作品です。連続殺人、それも被害者の指を切断して残すという猟奇的な事件の発生する中、ふとした偶然から匿うことになった謎の少女。出会いは昨夜、事件現場付近で、しかもその服には血痕までついている。もはや事件に関連しているであろうことは間違いない彼女は、しかしどうしてか主人公を誘惑するかのような仕草を見せる——と、だいたいそんな冒頭から始まる、血なまぐささと蠱惑的な雰囲気の同居するお話でした。  事件の真相(という言い方がふさわしいかどうか微妙ですが)がなかなか難しいというか、何が事実でどこが錯誤かの境目に結構混沌とした部分があって、そこに潜む魔のようなものの濃密さが印象的です。恐るべきは人の中に巣食う魔か、それとも人ならざるもののそれか、いずれにせよそう簡単には割り切れない、どろりと後引くようなこの後味の悪さ。事件の詳細を伝える朝のワイドショー、その軽薄な空々しさとのギャップも含めて、湿度の高い不気味さを含んだ作品でした。  エロスとバイオレンス、ホラーとの親和性の高い二要素の、その絡み具合というか混ぜ込み方が好きです。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/25
  • 投稿日:2021/11/4
カクヨムファンタジー連載:4話完結

ネイキッドヒーロー

 すっぽんぽんの英雄がその知恵と勇気で村を救うお話。  主人公が素敵です。常人にはない特殊な能力を持っているのはもとより、単純な身体能力や頭脳においても非常に優秀、なのにそれを鼻にかけることもまた奢ることもなく、とにかくただひたすら格好いい、格好いい男の、そのはずなのに……どうして……。  いや実際別に何も悪くはないんですけど、でもどうしても笑ってしまうというか。全体を通じてものすごくシリアスなお話で、そのうえ主人公はただただ英雄としての仕事しかしてないのに、でも二話目がというか、二話目のそこだけが。いや本当、どうしてこの主人公はこんなにも頑ななのか、長老の苦悩や気遣いがはっきり手に取るようにわかってしまう、その感覚だけでもうおかしいのが本当にツボでした。  と、この説明だとなんだかコメディ作品のようですが、でも実際はかなり大真面目な現代ファンタジーです。特殊な能力を駆使して絶体絶命の危機を救う男の物語。詳細についてはここでは述べませんが、きっちり組まれた設定というか、伏線の貼り方と回収の仕方が丁寧で好きです。いや本当に問題解決のギミックがものすごくしっかりしていて、だからこそ読み終えた今はなおのこと、二話目のそれが強く思い出されてしまうのですけれど。  なんというか、一粒で二度おいしい感じ。どうせ全裸になるならこんな全裸がいいなと、そう思わせてくれる素敵な全裸でした。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/25
  • 投稿日:2021/11/4
カクヨムファンタジー短編完結

吸血族討伐軍第一隊予備学科-浅海潔と義弟と紅茶-

 ナイトウォーカーと呼ばれる吸血鬼のような種族の跋扈する世界、対ナイトウォーカー専門の軍人を養成するための兵学校に通う、名家の優秀な兄弟のお話。  わくわくする設定がてんこ盛りの現代ファンタジーです。吸血鬼にそれを討伐する人間の部隊、およびその隊員を養成するための特別な学校に、優秀な隊員を輩出してきた歴史ある名家。ちなみに主人公はその名家の二兄弟のうちの兄で、全校生徒の信望も厚い優秀な生徒会長という、この出し惜しみのなさが嬉しい作品でした。はっきりしたエンタメ性、それもどう楽しませたいのかの方向付けが明確な作品は、それだけで素晴らしいものだと思います。  お話の筋はやはりナイトウォーカー(吸血族)の討伐、学生に擬態し学内に潜入したそれを、密命を受けた主人公とその弟が調査・発見して駆除するまでの物語です。なのですが、でも実質的な本筋というか本命というか、このお話の肝は主人公とその弟、彼らの微妙な関係性とそれゆえに生じる複雑な感情にこそ存在します。  表向きの顔と本心に落差のある主人公。彼がその弟に対して向ける憎悪あるいは嫌悪のような感情は、一見屈折しているようでいてその実どこまでも単純というか、とにかくなかなかに凄まじいものがあります。ネタバレになってしまうため詳しく書けないのが残念ですが、最後なんかはもう非常にたまらんものがありました。自尊心に強い敵愾心、そしてそのまま殺意になるほどの劣等感。それらが男同士の関係性の中にみっちり詰まった、そういうのが好きな人をまっすぐ刺し殺しに来る作品でした(殺されました)。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/25
  • 投稿日:2021/11/4
カクヨムSF連載:3話完結

大崎町ハッピーライフ

 長閑な田舎の町で念願のひとり暮らしを始めた人が、でも突如発生した不思議な自然現象に悩まされるお話。  綺麗にまとまったSFショートショートです。本当にきっちり過不足なくまとまっているというか、サゲの部分まで読んだ瞬間すとんと腑に落ちる、納得感のようなものがとても心地よい作品でした。逆説、このワンアイデアがぴたっとハマる感覚がショートショートの魅力そのものなので、どうしても内容に触れられないのが困りどころです(ネタバレになるので)。  というわけで、たぶん本筋からは大幅に逸れた感想になってしまうのですけど、『自然がいっぱいの静かな田舎』の書き表し方が興味深いです。冒頭、主人公の目から見た田舎のいいところがたくさん語られているのですけれど、でも二話目冒頭、それとは真逆の方へと向かっていく町そのもの。なるほどさもありなんというか、当の自治体や商工会からしてみれば、自然がいくらあったところでただ不便なだけで何にもならないというこの現実。それぞれの思惑が噛み合わないというかぶつかり合うというか、このうまくいかない感じがほんのりやるせないお話でした。

5.0
  • 作品更新日:2020/7/25
  • 投稿日:2021/11/4