海燕 ーシュルーケンー リヒテン・ライヒ空軍記
最終更新:2021/6/27
作品紹介
リヒテン・ライヒと呼ばれた帝国の長い戦争。やがて戦闘機による闘いへと突き進む。 海燕ーシュルーケンーと呼ばれる爆撃機を操る、十四歳の少女ユリウス。どこまでも青い海と空に響くエンジン音。そして、投下される爆弾。 戦火の中、生きる一人の少女の物語。 「わたしは、ただ空を飛ぶのが大好きなだけなんです…」
評価・レビュー
恋の夜行列車
戦争の時代に少女は、生きる。爆撃機を駆って。
14歳の女の子が、戦争の時代に生まれ、あてがわれた環境の中で必死に生き、成長していく物語です。 そこにはチートも、魔法も、ご都合主義もありません。 この作品は物語に必要なシーンに、必要な描写だけが書かれ、知識ネタや、大袈裟な表現はなく、表面的には淡々と見えるかもしれません。 が、読み進めると登場人物の全てに「幸せになって欲しい」という想いが込められている事に気が付きました。 少女が戦闘機に乗る、という突飛にも思えた設定にも、しっかりと「この世界、この時代の技術背景から作られた飛行機」にとって必要な条件として描かれ、とても好感を抱きました。 また、描かれる作中の随所に、深い意味を持つ名言が数多く存在しています。 生きることだけでも大変な戦争の時代、空で戦いは、陸で悩み、少しずつ成長していく少女を、周囲が厳しくも優しく支えていきます。 この中で語られる言葉は、そのまま名言にすら聞こえます。 戦争、戦闘機、爆撃機……この手の戦争を舞台にした物語が好きな方なら胸を打つシーンに出逢えるはずです。 多くの評価、レビュー、★の数が「名作の証拠」ではないと、本作を通じて強く感じると同時に、もっと多くの方に読んで頂きたいと心より願っています。
防衛太郎