卒塔婆島での怪異、粂田のアフロがボンバーヘッドになる
最終更新:2017/6/1
作品紹介
夜の不帰浜(ふきのはま)漁港で、粂田 俊郎(くめだ としろう)は歓迎会の宴に参加していた。 元やくざの舎弟頭補佐だった粂田は、芝崎組長の女房である千景(ちかげ)に手を出したため破門者となり、逃げるようにこの漁村に落ち延びてきたのだ。不帰浜で暮らす親類、謝花(しゃばな)老人をたより、余生をここで漁師でもやりながらと考えていた。 だがこの酒席は、網元につぐ力をもつ岡添(おかぞえ)と、その片腕である梅野(うめの)による、新参者を受け入れるか否かの面接をかねた、不帰浜における暗黙のルールを叩きこむための場でもあったのだ。 はじめは岡添らも粂田の出自について警戒心を抱いていたが、しだいに心を開いていく。 急ピッチで酒を食らっていく四人。話題は漁師のあいだで伝わる風習からはじまり、怪談話へと移り、目まぐるしくかわっていく。 粂田は不帰浜の由来を聞き出したことから、泣瀬(なかせ)にあるという卒塔婆島(そとばじま)のタブーへと切りこんでいく。 卒塔婆島――それは、地元漁師が気味悪がって近寄らない島だった。かつて島で一夜を明かした岡添の伯父が、明くる日に迎えに行くと、発狂した過去があったという。 謝花老人は卒塔婆島について語るのはよせ、と諫めた。どうやら不帰浜では、島については触れてはならない不文律があるようだ。 粂田はとたんに興味を示し、言うのだった。「どうだ。ひとつ、おれも度胸試しに、そこでひと晩明かしてやろうじゃねえか」
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