婚約者に見殺しにされた愚かな傀儡令嬢、時を逆行する
最終更新:2023/8/15
作品紹介
父親が自分を呼ぶ声が聞こえたその刹那、熱いものが全身を巡ったような、そんな感覚に陥った令嬢レティシアは、短く唸って冷たい石造りの床へと平伏した。 視界は徐々に赤く染まり、せっかく身を挺して庇った侯爵も、次の瞬間にはリュシアンによって屠られるのを見た。 「リュシ……アン……さ、ま」 せめて愛するリュシアンへと手を伸ばそうとするが、無情にも嘲笑を浮かべた女騎士イリナによって叩き落とされる。 「安心して死になさい。愚かな傀儡令嬢レティシア。これから殿下の事は私がお支えするから心配いらなくてよ」 お願い、最後に一目だけ、リュシアンの表情が見たいとレティシアは願った。 けれどそれは自分を見下ろすイリナによって阻まれる。しかし自分がこうなってもリュシアンが駆け寄ってくる気配すらない事から、本当に嫌われていたのだと実感し、痛みと悲しみで次々に涙を零した。 ◆◆◆ 両親から「愚かであれ、傀儡として役立て」と育てられた侯爵令嬢レティシアは、大人に都合が良いように扱われるにつれ、徐々に最愛の婚約者皇太子リュシアンの愛を失っていく。 のちに民の信頼を失いつつある帝国の改革のため立ち上がった皇太子は、女騎士イリナと共に謀反を起こした。 その時レティシアはリュシアンの目の前でイリナによって刺殺される。 悲しみに包まれたレティシアは何らかの力によって時を越え、まだリュシアンと仲が良かった幼い頃に逆行し、やり直しの機会を与えられた。 二度目の人生では愚かな傀儡とならぬよう、同じ過ちを犯すまいと努力する事を決意するレティシア。 過去でリュシアンの態度が変わってしまったきっかけとなった皇后の死を回避できた事で、レティシアは自身の動きによってこの世界の事柄や人物像が変化すると知った。 そして実はリュシアンも、レティシアの死を回避しようとこの世界へ回帰していた。不思議な力を持つ薬師によってその事を告げられたレティシアは、今度こそリュシアンとのすれ違いを正そうと話し合いに赴く。 レティシアは今度こそリュシアンとの幸せな日々を送る事が出来るのか、それとも…? ※逆行、回帰、婚約破棄、悪役令嬢、やり直し、愛人、暴力的な描写、死産、シリアス、の要素があります。 『アルファポリス』様にも掲載中です。
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