【物語は】
クリスマスシーズンに産気づいた主人公が、イケボに救われタクシーで無事病院へ、と思いきやついた先の病院で彼は勝手にパパさんと勘違いされ、そのままお産に付き合うという飛んでもない事態に。コメディのような始まりだが、あらすじを見ると、主人公はあまり笑えない状況のようだ。タイトルの意味は直ぐに分かることとなる。ここから二人がどのように出逢い、恋に発展するのかしないのか、分かっていく。あらすじを読む限りでは三角関係のようであるが。
【登場人物の魅力】
”ただ不幸だけ”ではない主人公というのが魅力だと思われる。男に騙されシングルマザーになると聞くと、どん底からのシンデレラストーリーなどが多いイメージがある。しかしこの物語の主人公は幸いお金には困って居なかったようで、男に頼る様な生活を強いられてはいない。自分で選択をし、両親の遺産とは言え自分の力で生活している。つまり、流されるような物語ではないことが期待できる。冒頭で通りかかった人物は、お人よしそうだ。二人はどのように惹かれ合うことになるのだろうか。あらすじからは厳しい人のイメージもするので、とても気になる部分だ。
それに比べ、元彼のほうはどうしようもない人という感じはするが、三角関係になるということは、改心したという事かも知れない。彼については、色々と妄想も膨らむ。
【物語の魅力】
イラストレーターの受注の大変さが伝わってくる物語だ。よく小説の表紙を描きますなどで、揉めているところを見かけたりするが、意外とイメージを明確に伝えられない人が多いのが現実。この物語でも、注文先の彼が主人公に明確に”こうして欲しい”というのを伝えてはいない。これは物語上の流れなのかもしれないが、言葉で伝えることの難しさにおいてはリアリティを感じる。それに対し、主人公が憤慨するのも無理がないと思った。この物語の魅力は、主人公が生き生きとしているところだと思われる。喜怒哀楽隠すことなく、自然に振舞うところが、一所懸命”生きている”と感じさせるところでもあるように思う。
【物語の見どころ】
やはり、主人公の生活の部分だろうか。仕事はそんなに甘くはないが、日常が充実しているように思える。好きな仕事に真剣に向き合い、時にはうまく行かないことや理不尽な目に遭いながらも、前向きに一所懸命頑張る姿は、見ていて応援したくなる。我が子に対しても愛情を感じる。子供がいる女性は、子育てを優先するべきという考え方もあるとは思うが、仕事と子育てを両立させることのできるこの主人公は、恋愛がそこにプラスされてとしても我が子を蔑ろにするようなことはないのではないかと想像する。
現実にこんなことがあったら、そんな簡単にはいかないかも知れないが幸い彼女は、周りの人間にも恵まれており、仕事関係でこの面倒を見られない時に安心して預けることの出来る相手もいる。とても環境が整っているので、イヤな危なっかしさがないのも良いところ。この頑張り屋の主人公が、これからどんな恋をしていくのか、とても楽しみな物語である。
あなたも是非お手に取られてみませんか?
お奨めです。
登録:2021/8/1 10:58
更新:2021/8/1 10:58