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カクヨム歴史・時代連載:73話完結

その神奈備に、弔いを

閉鎖的かつ古い因習が残る山奥の村、金峰村に攫われ、土着神に捧げられる神楽を舞うこととなった主人公、篝。村で出会った協力者たちと共に、村が抱える秘密へと迫っていくが、彼自身や協力者たちにもまた秘密があり――? 読みやすい文を追っていくうち、登場人物たちの事情や世界観が少しずつ明らかになってきたかと思いきや、かなり気になる新たな謎が残されていく。読み進めるほど次話を求めてしまい、はまり込んでしまう作品。徐々に明らかになっていく謎、唐突に明るみに出る謎とその答えは驚きと、じんわりと溢れる切なさを与えてくれます。 ダークでミステリアスなだけではない、美しく切ない伝奇物語。人を好いた罪を背負ったのは誰か、混ざり合う謎の行方はどこに向かうのか。あなたの目で確かめてみてください。

5.0
  • 作品更新日:2020/12/30
  • 投稿日:2021/8/14
カクヨムファンタジー連載:59話

Catastrophe《カタストロフィ》

ある日、化け物としての側面が目覚めてしまい、過ちを犯してしまう主人公の王女、ファルトゥナ。死を望む彼女はしかし、行方不明の姉、ビアンカを探す目的を得て旅に出る。その道中で多くの人々と出会い、仲間を得て、ファルトゥナは成長していきます。 けれど、ファルトゥナは何度も、自分の中に潜む化け物に苦しめられ、捻くれていることもあり、辛辣な言葉を吐いてしまう時もあります。そんな彼女を支える仲間が頼もしく、そして、強く前へと進んでいくファルトゥナの姿が、抱きしめたくなるほど愛おしい。 幸あれと願わずにいられないファルトゥナの成長模様もさることながら、様々な風土を持つ世界観も素敵です。そんな世界を行くファルトゥナたちの旅を、ぜひ追いかけてみてください!

5.0
  • 作品更新日:2021/6/17
  • 投稿日:2021/8/14
カクヨム歴史・時代完結非公開

【完結】朔の風

日本神話、古代日本を舞台に、混ざり合う人間模様と美しい情景を見事に書き出したファンタジー。第一部は故郷を追われた姫君と、彼女を守る姿なき護衛を。第二部は孤独を恐れ、居場所を求める青年を主役に据えて、物語が進んでいきます。 第一部では、故郷を失いながらも屹然と立つ姫君・夕星と、彼女の護衛である姿なき寡黙な青年・葉隠が、新天地で国同士の争いに巻き込まれていきます。この二人の関係性とすれ違いが、とにかく切ない。兄の許婚だった夕星に惹かれながらも想いを秘する葉隠と、許婚を忘れないでいつつも葉隠に惹かれていく夕星。戦乱の中でも凛々しく、健気に咲く花のような二人の結末は、しかし夕星の儚く悲しい散り様にて幕を閉じてしまいます。 第二部では、夕星を喪った葉隠こと鷹彦と、拠り所だった家族を喪い、孤独を恐れる不器用な青年・騒速が主役。尊敬する鷹彦について行きながら、自分の居場所を求め、徐々に孤独を溶かしていく騒速の若々しさにニヤける反面、癒えようのない孤独を独り抱える鷹彦の淋しさに、胸を締め付けられます。暗い思惑も蠢く中、孤独を抱える者同士はどんな結末にたどり着くのか、必見です。 夕星、葉隠/鷹彦、騒速と三者の名前を挙げてきましたが、彼女たち以外の登場人物もとにかく魅力的です。男性にも女性にも、惚れてしまうようなカッコよさを持つキャラ(もちろん、たおやかだったり可愛らしかったりするキャラや、油断ならないキャラもいます)が多く、一人一人紹介すると長くなるので、控えなければならないのが残念なくらいです。 古代日本の風や匂いを感じる、美しい情景描写もさることながら、濃淡も色合いも様々に渦巻く心理描写も見所の、上質な大河ファンタジー。読んでいる最中は没頭状態、読了後は放心状態になりかねませんので、そこだけ気をつけてお読みください!

5.0
  • 作品更新日:2021/12/3
  • 投稿日:2021/8/14
カクヨムファンタジー連載:4話完結非公開

機械仕掛けの滅びの美学

ずっと歯車の音が聞こえてくるからこそ、逆に静けさを感じる世界と、蒸気機関の登場によって傾いていく国の翳りで、どこか閑寂とした雰囲気が醸し出されている作品です。 主人公である琥珀姫ことヤンターは、そんな斜陽の国の王女。外出を許されない籠の鳥でありながら、将来を冷静に見据える彼女の凛々しくも儚い姿が美しく、だからこそ、後半の痛ましさや切なさに胸を打たれます。オルゴールの奏でる音色がだんだんゆっくりになっていき、最後には曲の途中で止まってしまった時のような物寂しさ、物悲しさを深く感じる作品でした。 また、タイトルにもあるように「滅びの美学」という言葉がふさわしい作品なのですが、ちらりと見える魅力的な機械の動きの描写にも注目してほしいです。

5.0
  • 作品更新日:2021/1/16
  • 投稿日:2021/8/14
カクヨムファンタジー非公開

追憶の

美しい情景描写や展開の面白さはもちろんのこと、心理描写がとにかく丁寧な作品。主人公のアリスを筆頭に、キャラクターたちの心情が繊細かつ鮮明に、優しく、そして妥協なく描かれています。 もやもやとして詳しく言い表せない心情、喜怒哀楽の言葉だけでは言い表せない、あるいは言い切れない心情。この作品はそんな曖昧な部分まで見事に書き出し、キャラクターたちに血が通っていることや、彼ら彼女らが抱いている気持ちを強く感じさせてきます。それもあって物語への没入感はかなり高め。出てくるキャラクターの数は多いですが、書き分けがしっかりなされていて判別も付きやすく、一人一人の心に共感できる部分もあります。 しかしながら、物語が進むにつれ、キャラクターたちは残酷かつ悲惨な運命に翻弄されてしまいます。目を背けたくなる現実に切りつけられ、傷を負っていく彼らの姿に、思わず「もうやめてくれ」と震えてしまうかもしれません。けれど、筆舌に尽くしがたいことも、生々しい心の傷や流血も、容赦なく書き出されているからこそ、キャラクターたちを大事に思え、幸せになってほしいと心から願えます。 そんなキャラクターたちの言葉や見ている景色は、読んで感じてみてください。どこまでも誠実に書き出された叫びに、必ず心を揺るがされます。

5.0
  • 作品更新日:2021/12/1
  • 投稿日:2021/8/14
カクヨム恋愛連載:27話完結

奈落に咲え、

豊臣の治世が敷かれるようになった時代を舞台に、親愛、恋愛、敬愛といった様々な、けれど屈折した思いが渦巻く様子が描かれている作品。 物語の主役である天花は天真爛漫な少女ですが、双子の兄である燦に起きた悲劇を機に、奈落と名乗る冷然とした女性に変わります。天上の花と地獄の花、どちらとしても咲いた彼女は、そして彼女の周囲は何を思うのか……。 人々の思いの中で、陽にも陰にも咲き誇る少女から目が離せなくなる作品です。

5.0
  • 作品更新日:2021/1/11
  • 投稿日:2021/8/14
カクヨムファンタジー非公開

Nola ―ノラ―

負の感情を増長させ、他者に危害をもたらしてしまう魔法を使えるようになった「魔法師」と呼ばれる十代の少年少女が、殺し合いや犯罪に巻き込まれていくダークファンタジー。迫力と疾走感に満ちた戦闘シーンや、サスペンス要素が含まれた展開など、見所も良さも多くある作品ですが、特筆すべき点は主人公とヒロインの関係性だと思います。 重い秘密を一人で抱え、危うい思考を持つヒロインの姫愛と、そんな彼女を守る主人公のノラ……なのですが、二人の関係には暗く複雑な背景が潜んでいます。そんな彼らが見せてくれる信頼関係や、互いを思い合う気持ちには、一言では言い表せない良さがありました。 作中で展開される不穏で危険な事件の行方、ノラと姫愛の過去やこれからと、続きも非常に気になる作品です。 また、こちらには前日譚となるお話もあります。少ない話数の中で、作者さんの筆致や展開の仕方、登場人物のカッコよさに魅了されてしまう作品なので、そちらから読むのもおすすめ。もちろん、先に本編を読んで最新話に追いついてからでも楽しめると思います。 両作とも、ぜひご一読ください!

5.0
  • 作品更新日:2021/11/11
  • 投稿日:2021/8/14
カクヨムその他連載:73話完結

アノレキシアの百合

百合は花や葉の大きさに反して、茎がとても細い植物。この作品の主役である日芽子と月彦も、百合の茎のように折れてしまいそうな体を持っています。 タイトルにもあるアノレキシア(拒食症)や、性同一性障害を患い、体内外どちらも脆い月子こと月彦。「彼」と共に過ごしていくことで、自分のなりたかった姿に気付き、痩せ細り小さくなっていく日芽子。危うい者同士が雛のように寄り添い、冷たい手で温め合う様子、二人が好む旧い音楽や書籍で満たされた平穏な世界、「少年少女」や「老婦人」といった「性別」から遠い存在への憧れ――ほの暗くも美しく、時には可愛らしさすら感じてしまう光景が、繊細な感覚と美麗な文章で書き出されていきます。 触れれば容易く壊れそうな、硝子で作られた百合のように危うく、痛々しく、けれど健気で愛おしい。そんな二人がたどり着く結末には、感慨深いものがあります。 純粋無垢、無色透明な二人を描いた文学、ぜひご堪能ください。

5.0
  • 作品更新日:2021/8/7
  • 投稿日:2021/8/14
カクヨムホラー連載:331話完結

それが造られた華だとしても

呪い人と呼ばれる生徒の周りでは不幸が起こる。そんな不気味な話が伝わる2年E組に、転校生の橘芽亜凛がやってくるところから、物語は始まります。 謎めいていて大人びた雰囲気を持つ芽亜凛は、文武両道の優等生。ところが、他者への態度はそっけなく、仲良くしているのはクラス委員長である百井凛のみ。彼女たちが仲を深めていく傍ら、二人と何らかの形で接した人が行方不明になる、亡くなるという、不穏な事件が起こり始める。 凛の幼馴染であり、全体を通しての重要人物である望月渉は、一連の出来事に転校生が関与しているのではと考え、疑い始めるが、芽亜凛の反応は謎めいていて振り回されるばかり。増えていく犠牲者の数を食い止め、加速する事件を解決すべく、芽亜凛とのことで衝突しながらも渉と凛は奔走するが――その裏では、悲劇に終止符を打つための戦い、駆け引きが繰り広げられていた。 事件の原因は何なのか? 呪い人とは何なのか? 作中の大きな謎は主にこの二つですが、それ以外にも多くの謎が散りばめられており、とにかく先が気になります。急速かつ衝撃の展開に翻弄され、登場人物たちの傍にいるかのような臨場感、緊張感を味わいながら読めるサスペンスです。

5.0
  • 作品更新日:2024/4/30
  • 投稿日:2021/8/14
カクヨムファンタジー連載:102話完結

デストロイエンジェル

いたって普通の男子高校生、竹谷タカト。ある日、ヒドゥンと呼ばれる怪物から急襲された彼は、純白の少女に助けられる。少女の名はクレインといい、ヒドゥンを狩るために別世界からやって来た、執行兵と呼ばれる存在だった。 ラブコメっぽさもありながら、クレインや他の執行兵のバトルシーンや、執行兵とヒドゥンを巡る謎に引き込まれ、序盤からぐいぐい読み進めてしまいました。テンポがよく、読みやすく、一筋縄ではいかない展開(特に中盤から終盤)もあって、高い満足感を得られる作品です。 キャラ造形も一人一人こだわられていて、執行兵の少女たちの可愛らしさ、美しさに魅了されてしまいます。弱点があるところも、彼女たちの魅力の一つです。そんな彼女たちと交流を深め、囮役ながらヒドゥンとの戦いに協力するタカトの姿勢も誠実で、魅力的でした。また、執行兵の少女たちは、毒キノコをモチーフにしているということで、気になった方には作者さんの近況ノート閲覧をオススメします。 一気読みしたい方も、少しずつ読み進めたい方も、ぜひご一読を!

5.0
  • 作品更新日:2021/5/10
  • 投稿日:2021/8/14