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作:灰崎千尋

風歌姫─ハルピュイア─

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未評価

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最終更新:2021/5/7

作品紹介

恵みの風の吹く「風歌の谷」。その風を吹かせているのは、腕の代わりに翼を持ち、風を歌うハルピュイアだった。彼女は或る日、気まぐれに一人の若者の命を助けたのだが…… アンデルセン「人魚姫」の舞台が海でなく空だったら、という発想からスタートしたお話です。

ファンタジー悲恋人外童話ハーピー第一回厨二病小説大賞

評価・レビュー

ハルピュイアはまだ恋を歌えない

〈その風に乗って、時おり歌のようなものが聞こえることがある。谷に住むどの鳥にも似ていない、美しい羽根が町に落ちていることもあった。人々はいつしかこう信じるようになる──「この谷は天使様に守られている」と。〉  かつて「風歌の谷」という名の渓谷があり、そこに住む仕立て屋の若者が山をのぼっていた。聡明で美しいお嬢様に恋をしたからだ。薔薇の姫君と呼ばれる彼女のため、高所にしか咲かない峰雪草の花を摘みに。崖の淵で身体の支えを失って転落した若者は、死を覚悟したが、それを救ってくれたのは、風歌姫(ハルピュイア)だった。  情景豊かに紡がれていく物語が辿っていく道行は、幻想的な美しさを持ちながらも、険しく残酷さをはらんでいます。わけ隔てない善良さと素朴な性格を持ち合わせた若者、難題を突き付けながらも冷えた心がとかされていくお嬢様、そして恋の歌を知らない風歌姫(ハルピュイア)。どこかで彼らの幸せを願いながらも、そうはならないのだろう、という諦めにも似た気持ちを抱きながらも、先を知りたい、という気持ちを抑えきれずに読み進めていき、読後、ちいさく息を吐く。余韻は苦い。だけど、心にしみるのは、私たちがすでに知っているからでしょう。  この苦味は大切な誰かとやり取りを重ねて、そして失って、はじめて知るものなのかもしれません。  知ってしまったのでしょう。ハルピュイアは。  だけど知らなかったら、その苦味さえ知らないままだったら。  そんなふうに思ってしまうわけです。

5.0

サトウ・レン