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作:羽山一明

境界線上の魔王

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未評価

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最終更新:2024/4/10

作品紹介

 ヒトとヒトならざるモノが息づく大陸、アルティア。  ある日、この大陸を東西に横切る大河が、天を貫く魔法の壁に姿を変えた。  近づくものの魔力を命ごと飲み込んで佇むその壁は、のちに『境界線』と呼称され、長きにわたって異種間の交流を断絶した。  境界線を恐れたヒトは、許可のない渡航を厳罰化し、この魔力に抵抗しうる才のある者に『聖騎士』の称号を与えた。  ……時は流れ、現代。  行方知らずとなっていた先代聖騎士の捜索のため、聖騎士クリスティアが三度目の渡航を終えた、その日の黄昏時。  凱旋式の喧噪のさなか、彼女はひとりの剣士と対峙することとなる。 ※ダークファンタジーですが、一部を除き人物が直接的に死ぬ描写はありません。 ※表紙絵は雪丸ぬん様制作。無断使用および転載はおやめください。 ※小説家になろう様にて、同様の内容で掲載させていただいております。

男主人公勇者魔王ダークファンタジーアクション/バトル

評価・レビュー

懸命に生きる「生命」の息吹

 これは魅力の多い小説です。  こうしてレビューを書くにあたって、どの部分を取り出すべきだろう。少し、考える必要がありました。  他では感じられない、この小説だからこその楽しみとは何だろう? 結局、思い付きとしては最初だった、とある一部分を切り出してみる事にしました。  つまり、キャラクター達が確かな『生命』として息づいている、という部分です。  不思議に思われるかもしれません。文字でしか存在していない彼ら彼女らを生命と呼ぶとは、どういう事だろうと。  ですがもし、実際にこの小説を開いて読んで下さった方が居たとしたら、きっと深く頷いてくれるのではないでしょうか。  私はこの物語を追ううち、そこで生きるキャラクター達の吐息が聞こえるようになった気がしています。仲間と共に安心して吐いた一息、あるいは命懸けの瀬戸際で荒々しく繰り返される呼吸、またもしくは寒空に白く上がる深い息。それは決して「こうあれ」と与えられた役割を果たすだけの人形には真似出来ない生命のあかしなのです。  この物語には、作者の都合で型通りに作られたキャラクターは一人として存在しません。誰もがみな、自らの意思と自らの願いでもってそこに居ます。彼ら彼女らは産み落とされたからでは絶対に無く、自ら生きたいと思うからこそ生きているのです。  そのひたむきに頑張る姿、必死に努力する姿、負けじと苦難に立ち向かう姿。いつだって笑顔という訳ではありません。苦しさに喘ぐことも、悲劇に涙することもあります。  しかし、彼らは生きる。思いっきりに生きている。その生命を全力で謳歌している。惰性でも受身でも漫然とでもなく、懸命に命を噛み締めているのです。  私はその姿を美しいと思うようになって、気づく頃にはすっかりこの小説の虜にされてしまっていました。  彼ら彼女らの生きる道を見てみたいと思ったのです。その行く末を見つめ、その行き着く先に触れてみたい。私はそう強く願うようになりました。  この物語はまだ途中です。私の望む終着点が何処にあるのか、見当すらつきません。  ですが、この小説が私の期待を裏切る日は来ないでしょう。懸命に生きるキャラクター達が突然人形に成り下がってしまうとは思い難いからです。  彼ら彼女らは必ずや、その生命を走り切ってくれます。その姿を、私はただ見ていたい。そう思います。  いかがでしょうか。作品を紹介するレビューとしては、少々稚拙になってしまったかもしれません。  私が伝えたい事は、この物語の中で必死に日々を生き抜いているキャラクター達の事です。  もし少しでも興味が湧いたならば、読み進めてみて欲しいと思います。  彼ら彼女らの生きる姿を、共に見つめてはみませんか。

5.0

伊空路地@再臨

◆魔王◆の力、ヒトの息。

光の壁――境界線。 条理を違え、 世を分け隔て、 力を吸い、渡るを拒む。 彼方の側には魔が棲まう。 手前の土地にはヒトの息。 厄災を畏れ細々と。 欲を剥き出し眈々と。 聖騎士のみは境界線、越えて探って還れども。 真相はまだ底さえ知れず、 もたらす知見も頼りなく、 ヒトは今なお不明に足掻く。 例外、されどここにあり。 魔の側に棲む、されどヒトの子。 心を識り、心を交わし、和をこそ望むその姿。 困窮に手を。 波乱に解を。 混迷に策を。 その手に力、埒の外。 ゆえに時には◆魔王◆と呼ばる。 殺めに固く禁を課し、 他者のためにぞ力を振るう。 されど過ぎたるその力、良しと認めぬ者たちもあり。 知と理と力、技と術。 併せ持てども、ヒトはヒト。 その身。その傷。その力。 過ぎたるものを、背負う代価は。 ◆境界線上の魔王◆ 寄り添う心。手を貸す友。ヒトゆえ進む、その先は。

5.0

中村尚裕