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作者:星河ハル

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作:星河ハル

冷酷な人と呼ばれた私はもう此処には居ないという話

特に何か功績を残した人生では無かった。 仕事は別に苦では無かったし、特に何かをしたい訳でも無かった。家族もこんな私を心配する事は無く、社会に出てから連絡を取っていない。 周りからは「冷酷な人」だと呼ばれていた。その自覚が無かった訳じゃない。 だからこそ、誰かを、心から信頼する事も無かった。誰かを、心から愛する事も無かった。 ……そんな毎日を送っていたから天罰が下ったのだと思う。 仕事が早く終わったので家に帰ろうと外に出てみれば急に明るくなる視界。あ、と思えばまるでジェットコースターにでも乗ったかの様に視界は揺れ、何かに激突した。 どうやら車に轢かれてしまったらしい。 周りの叫び声や、何かの焦げる匂いがしたけれど遠くなっていく。死の感覚がすぐそこまでやって来たと実感した時に私が思った事はただ一つ。 誰かを愛し、愛されてみたかった。 まるで恋愛小説の主人公とヒロインの様に。 優しくお互いを求め、微笑み、手を取り合う素晴らしく美しい関係になってみたかった。 ドラマやアニメで結婚式を挙げ、嬉しそうに微笑みながら涙を流す花嫁が羨ましかった。 もし、もしも出来る事なら……誰かに愛される様になりたい。 ゆっくりと落ちていく意識の中、そんな事を願いながらも目を閉じた。

更新:2023/11/21

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